ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18


 チャイコフスキーの第1番、プロコフィエフの第3番とともに、ロシアのピアノ協奏曲の最高傑作と言われる。 交
響曲第1番の失敗によってノイローゼに陥ったラフマニノフが、ダールという精神科医の催眠療法によって 立ち
直り、その直後にこの作品を生み出して大成功を収めたというエピソードは有名。

 私がこの曲を初めて聴いたのは高校生の時だったが、あまりの美しさに絶句した。と同時に、本当に鳥肌が
立ったのを覚えている。

 ちなみに、「通は第2番よりも第3番を聴く」などという議論があったりする。作曲技法やピアノの技法が第3番
の方が 優れているかららしい。しかし、私はどちらかといえば第3番よりも第2番の方が心を打たれた。心を打つ
音楽に 技法もくそもないだろう。




〜第1楽章 Moderato

 ラフマニノフ18番の鐘の響きを模したフレーズで始まる。そして、その直後からこの楽章の聴き所Part1が登場する。 第1主題である。この第1主題は、私を失神寸前にまで追いやった強烈なメロディーであった。 悲しすぎるのだ。これほど悲しくて沈痛な、かつ流麗で美しいメロディーは 他ではなかなかお目にかかれないと思う。「ドー レ ドー レ ドー…」という、非常に狭い範囲の音域のみのシンプルなメロディー なのに、心の芯に響いてくる。「シンプル イズ ベスト」とはまさにこのことである。

 聴き所Part2は第2主題。第1主題とは打って変わって甘くやさしいメロディーだ。ここはピアノが主体で展開し、ピアニスティック という言葉以外に何も思いつかないような、そんな響きである。

 そして、個人的に最大の聴き所と思っているのが、再現部の第1主題。勇ましい、行進曲のような雰囲気の伴奏 であのメロディーが展開されるが、ピアノの奏でる別のメロディーが非常にカッコいいのだ。私は、このメロディーが頭にこびりついて しまって離れないので困った時期があった(笑)。

 最後は意外に決然と閉じられる。


〜第2楽章 Adagio sostenuto

 まるで天国へと召されるかのような、平和的な気分に満ち溢れた楽章。誰もが虜になってしまう雰囲気だ。
 メロディーの美しさは言うまでもない。私の最もお気に入りの所は、中間部を終えて、冒頭のメロディーが再び始まった後 現れる、オクターブで階段状に降りてくる華麗なフレーズ。本当にあたたかい気持ちになれるメロディーだ。

 ちなみに、私はこの第2楽章に勝手に「花」というニックネームをつけている。 小さなつぼみから始まって暖かな日差しを受けて少しずつ成長し、途中、雨や風の苦難を経験しつつもそれを何とか 乗り越え、最後に見事立派な花を咲かせてその一生をそっと終えるという、花の一生を表しているように感じられるからだ。 まあ、あくまで私の勝手な妄想ですが…。


〜第3楽章 Allegro scherzando

 これまた感動せずにはいられない楽章である。いきなりの超絶技巧で開始され、途中には有名な甘ったるい旋律も 展開されるが、やはり私にとっての最大の聴き所はクライマックスである。これでもか、これでもかと言わんばかりの 息の長い雄大なメロディーが、堂々と語られる。マジでしびれます!

 そして最後は「ジャン ジャ ジャ ジャン」という、いわゆる「ラフマニノフ終始」と呼ばれる音型で決然と締めくくられ、最後の最後 までしびれさせてくれる。

 ちなみにこの第3楽章について、CDの解説などには必ず「映画『逢いびき』に使われた」という記述が見られる。 観たことないのだが、いったいどんな映画なのだろう。少し気になる。



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