EM2(Eternal Melody2)   (2005.3.23)

em2
 1.Unnamed Song
 2.Seize the light
 3.Without you
 4.Longing
 5.World Expo "I'll be your love"
 6.Kimi Dake Dakara
 7.Red Christmas
 8.Imawo Dakishimete
 9.Forever Love
 10.Amethyst
 11."Anniversary" Piano Concert in C minor


 前作「Eternal Melody」から12年を経て、2005年3月にやっとリリースされた待望のYOSHIKIのオリジナル・ソロアルバム。名曲揃いで息をつく暇もない、忙しいアルバムである。「Without you」、「I'll be your love」、「Anniversary」など、大作も多く収録されており、値段の割りに内容の濃いアルバムとなっている。YOSHIKIファンのみならず、聴いた人全てを満足させられる作品と言えるだろう。

 ちなみに、YOSHIKIによればこの作品は、もともとはリリースが目的だったわけではなく、やってるうちにクラシック曲がたまってしまったので、だったら出そうかな、という感じでリリースされたものらしい。『Eternal Melody 2』というタイトルも、「考えるのが面倒だった」からついたもの。


 1. Unnamed Song

 2001年のアメリカ同時多発テロを受けて作られたViolet UKの作品。Daughterの美しいアカペラで始まり、ピアノとストリングス、ボーカルというYOSHIKIバラード王道の構成で展開される。
 流れるような美しい佳曲。ボーカルの少しかすれた、消え入るような超高音がたまらないほど魅力的。

[聴き所]
時間コメント
2:54〜3:04高音のハモリがとてもかっこいい。YOSHIKIが創るハモリはいつも美しいが、今回さらにパワーアップしたような印象。
3:28〜3:41ヴォーカルの恐ろしく美しい超高音に、悶絶。そして昇天。



 2. Seize the light

 新生globe第1弾シングルとして発売されたもののオーケストラ版。2002年のSymphonic concertのライブ音源で、指揮はYOSHIKIが行っている。

 全体的に可もなく不可もなく、といった印象。ただし、冒頭のヴァイオリンとフルートによるソロの箇所は非常に繊細で美しく、素晴らしい。
 素人がいちゃもんつけるのも申し訳ない気もしますが、4:35〜5:03のアレンジはいかがなものかと思いました。「ズン、チャッチャチャ」という単純なリズム、途中で現れる木管の上昇音型の情けなさなど、個人的にはどうかなあという感じです(あくまで個人的な嗜好に合わないというだけです。この部分が良いといわれる方もおられると思います)。



 3. Without you

 hideに捧げる曲として書かれた、X JAPANの未発表曲。完成された歌詞は存在するものの、ボーカルはToshiじゃないとダメというYOSHIKIの強い意思のもと、ボーカルのレコーディングはされていない。

 「数え切れない思い出が 時間を埋め尽くす」
 「Do you remember 初めて出会った日の事 同じ夢を見た時を」


 といった歌詞が心に響いてくる。そして最後にとどめの一文、

 「So I won't say... good bye」

 あかん、悲しすぎる…けど、YOSHIKIの強い意志が感じられるようでもある。歌詞カード最後の5行の英語詩は、涙なしには読めない、ホントに。心を揺さぶられます。

 楽曲の方はピアノとストリングスのみから構成されていて、非常にドラマティックで壮大な、17分40秒に及ぶ大曲となっている。大変長い曲だが、メロディーがどうしようもないほど美しいうえに、楽想がいろいろと変化に富んでいるので、飽きることのない名曲だ。
 ピアノのアレンジには相当手が込んでいるように感じた。今までのYOSHIKIピアノでは聴くことのできなかったようなプレイが多く楽しめる。

[聴き所]
0:00〜0:58イントロだと思われるが、とてもシンプルで素朴な旋律が心に突き刺さってくる。優しさに満ち溢れた楽想。
1:18聴こえるか聴こえないかくらいの小さな音で、ポンと優しく奏でられる和音に鳥肌が立った。
1:26〜1:52チェロのユニゾンによってメロディーが奏される。ピアノの伴奏が切ない。
2:20〜2:48初のサビの登場。伸びやかな、心が癒される名旋律だ。
6:08〜7:10嵐のように湧き返す怒涛のアルペジオ(分散和音)。ピアニスティックな響きが存分に楽しめる、聴き所である。
8:00〜8:47YOSHIKIの楽曲では珍しい音型のピアノプレイ。楽譜が見てみたいです、どうも拍子がつかみにくいので…。スパイスの効いたフレーズで、ハッとさせられます。
9:12〜10:23先ほどに引き続き、またもやアルペジオの波状攻撃。しかもここは完全なピアノ独奏。
途中で、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「熱情」の第1楽章で登場するカデンツァによく似たフレーズが登場する。
12:26〜12:53よく耳を澄ましてみれば、YOSHIKIのすすり泣く声が聞こえる(?)。
13:21〜13:50ピアノの分厚い和音とともにサビが盛大に演奏される。感動的だ。
15:18〜17:40クールダウンするかのように、ストリングスのみによってエピローグのような旋律が展開される。心にしみ入ってくるようだ。
最後の最後で、ピアノが離れた音を両手で一つずつ(左:ラ、右:ソ♯)鳴らして締めくくる。



 4. Longing

 「Longing〜跡切れたメロディー〜」のオーケストラヴァージョンが収録されているものとばっかり思って期待していたのだが、95年に発売されたマキシシングル「切望の夜」ヴァージョンがそのまま入っているだけだったので少し残念だった…(何らかの手が加えられている可能性はありますが)。
 とはいえ、「切望の夜」は個人的にとてもお気に入りの楽曲なので、それはそれで満足しています。

 全体的に抑え目で、何やら鎮魂歌的な雰囲気すら漂っている楽曲だが、聴き所は2:30〜3:00の不気味な部分。YOSHIKIの他の楽曲ではあまりお目にかかれない雰囲気。
 ちなみに、この曲は「Red Chrisrmas」と同じく、弦楽器とハープのみから構成されている。



 5. World Expo "I'll be your love"

 愛・地球博公式イメージソング「I'll be your love」のピアノ協奏曲ヴァージョン。そもそも元の曲がとても美しく素晴らしい楽曲なのだが、ピアノ協奏曲にするとさらに豪華で聴き応えのある大曲になってしまった。ピアノ独奏はアルペジオの多用が目立ち、若干深みに欠けるものの、オーケストラアレンジは非常に壮大で、オーケストラの魅力が存分に引き出されている。サビの部分が特に壮大で美しいです。


[聴き所]
2:16〜2:38サビがピアノとオーケストラの総奏によって盛大に奏でられるが、このサビの直前で、ピアノが上昇音型で盛り上げていくところがゾクゾクする。
4:29〜4:38ホルンによるサビのソロ。丸く、やさしく包み込むような音色が非常に魅力です。
6:19〜6:39オーケストラのみによって、サビが静かに奏でられる。優雅な雰囲気だ。
7:42〜8:32オーケストラ全体とピアノによるサビの最後の盛大な演奏。ピアノの分厚い和音とアルペジオを伴って、オーケストラが勇壮にサビのメロディーを奏でます。けっこう鳥肌モノです。




 6. Kimi Dake Dakara

 NHK開局50周年のときにYOSHIKIが作曲し、韓国の人気歌手チョ・ソンモと元SPEEDのhiroのボーカル、YOSHIKIのピアノによって披露されたバラード。
 今回のアレンジではピアノの代わりにハープシコードを起用しているうえ、トリルやターンなどを意図的に多用しており、バロック風の楽曲を目指したものと思われる。そのためか、高級感の漂う雰囲気となっている。

[聴き所]
1:29〜1:41フルートのメロディーがこの上なく美しい。



 7. Red Christmas

 Violet UKの楽曲のクラシックヴァージョン。といっても、この曲は完全に弦楽合奏ヴァージョンとなっており、弦楽器以外で登場するのはハープのみ。

 管理人の特にお気に入りの一曲。美しいの一言に尽きる素晴らしい楽曲だ。「Red Christmas」というタイトルを見たときは「赤い(血の)クリスマス」とかを連想してしまって、悲劇的な曲を想像していたのだが、そんな欠片も感じさせない優しい曲だった。
 基本的に、穏やかで平和な空気に満ち溢れた楽想が展開されるが、途中で挿入されるベートーヴェンのピアノソナタ「月光」を引用した悲しげなフレーズがこの曲をぐっと引き締めているように感じた。
 ちなみにこの曲はホ長調に始まり、変ニ長調で終わります。どちらの調性も嬰ハ短調の関係調ですが、引用されているベートーヴェンの月光ソナタは何を隠そう嬰ハ短調を代表する名曲(ただし、Red Chritmasでは他の調性で引用されている)。この曲はベートーヴェンのソナタを核にして書かれたのかも??。


[聴き所]
2:18〜2:40ト長調に転調。いっそう優美な雰囲気に包まれる。
3:05〜5:05短調に転じ、ベートーヴェンのピアノソナタ「月光」の第1楽章を引用、あるいはモチーフとして使っている。厳かな雰囲気がとても魅力。




 8. Imawo Dakishimete

 『徹底的に愛は…』というテレビドラマの主題歌だった「今を抱きしめて」のオーケストラ版で、1993年11月3日発売のYOSHIKIソロ「Amethyst」のカップリングとして収められていたもの。
 全体を通して何度か登場してくるハープが、この曲をよりあたたかく牧歌的な雰囲気にしている。この曲は、オリジナル(NOA)を聴いたときには何となくメロディーが弱いなあと思っていたのですが、オーケストラヴァージョンはけっこう良いです。フルートでメロディーが演奏される箇所が特に美しい。



 9. Forever Love

 Xを代表する名曲「Forever Love」のオーケストラヴァージョン。自民党のCMで用いられていたものと同じアレンジ。

 『EM2』に収められている楽曲の中で、最も「オーケストラ的な響き」が堪能できる作品になっていると言える。おそらくこの楽曲は、CDの解説書にクレジットされている、YOSHIKI以外の人によるオーケストレーションだと思う。YOSHIKIによるアレンジと思われる楽曲は、基本的に管楽器群は冷遇されていて弦楽器ばかりが目立つようなアレンジになっているので…(YOSHIKIは以前、「管楽器はあまり好きではない」と発言していたことがある)。

 あと、X JAPANのオリジナルに驚くほど忠実にアレンジされているのが印象的だった。冒頭のピアノの部分まで、ハープとグロッケン(鉄琴)によって再現されている。


[聴き所]
0:00〜0:10X JAPANのオリジナルではピアノで演奏されていた部分が、ハープとグロッケンによって演奏される。この部分まで再現するとは思わなかったので驚きでした。
0:51〜1:18
5:09〜5:37
チェロのユニゾンによるメロディー。フルートとクラリネットによる「ズンチャッチャッチャッ…」という伴奏が、牧歌的で平和な雰囲気を醸し出していてとても良い。
また、途中で登場するオーボエによるオブリガート(裏メロ)が恐ろしく美しく、涙モノである。
1:18〜1:50今度はメロディーをバイオリンが奏する。大変に優美です。
2:16〜2:45他何度か登場する有名なサビです。ただでさえオーケストラの総奏で非常に迫力があるのに、加えてチューブラーベル(鐘)まで登場させているのでとてつもなく豪華な雰囲気となっている。
4:52〜4:54オーボエによる「ラ♭ソファ〜」というメロディーが、さりげないけど心に突き刺さります。
6:39〜7:13ヴァイオリンによるサビのソロ。繊細な響きが堪能できるほか、クラリネットのさりげないサポートが秀逸。




 10. Amethyst

 Amethystのボーカル入りヴァージョン。YOSHIKIによれば、AmethystはもともとViolet UKの曲で、ボーカルも最初から入っていたらしい。
 Amethystという曲は、美しいだけでなくどこか孤独な寂しさを持っており、聴くたびに涙が出そうになってしまう困りものの曲だが、今回初めてボーカル入りのAmethystを聴いて、さらにこの曲の虜になってしまった。この流麗なメロディーを人の声で奏でられるとさらに心に突き刺さりますね。「胸が締め付けられる」ような感覚にすら陥ります。 



 11. "Anniversary" Piano Concert in C minor

 ピアノ協奏曲ハ短調「Annivesary」。1999年11月12日に行われた、「天皇陛下御在位十年を祝う国民祭典」で披露された奉祝曲。YOSHIKI自らが作曲し、ピアノ独奏も担当した。YOSHIKIの音楽活動再開の契機となった曲でもある。 お祝いの曲でありながらなぜか「ハ短調」で書かれているところがおもしろい。まあ、ハ短調の色合いはかなり薄いが。
 全体的に優美かつ豪華で、非常に壮大な楽曲となっており、十分すぎるほどの聴き応えがある。YOSHIKIは「CD化はしない」と言ってたと思うのだけど、ついにCD化されました。嬉しい裏切りですね(笑)。

 単一楽章のピアノ協奏曲。7分程度の曲ですが、主旋律が出てくるまで2分くらいかかる。厳格な雰囲気で弦楽器がメロディーを奏で始め、途中からピアノが参入し、カデンツァ的なパッセージ(YOSHIKIお得意のアルペジオを急速に演奏する)を繰り広げる。かなり情熱的なフレーズが続き、カッコいいです。
 2:20から、甘美な主旋律が登場。まさにYOSHIKIメロディー炸裂!といった印象を受ける名旋律だ。
 この美しいメロディーがその後延々と展開されるが、5:15〜5:43で申し訳程度に木管楽器によるアンサンブル的なフレーズが挿入されている。この曲では木管楽器が大変に冷遇されており、他では全くと言って良いほど出番がない(フルートは別)ので余計に印象的だった。
 4:48〜5:15の緊迫した楽想は、この曲最大の聴き所の一つではないかと思う。
 6:15から、主旋律がオーケストラとピアノの総奏で盛大に奏でられる。チューブラーベルまで起用して、豪華で迫力のあるサウンドとなっており、かなり感動的。この雄大で堂々とした雰囲気は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2、3番の第3楽章のコーダを彷彿とさせる。



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