市民がかわれば社会が、政治がかわる
政治に目覚めた市民たち そして、その中からもっと政治や選挙に関わろうと、都知事選挙に取り組んだり、市議会を傍聴する人たちが出てきました。定例会の本会議や委員会傍聴のほか、調布市議会の改革について検討中の代表者会議にも足を運び、市民の意見を議会のあり方に反映させようとアンケートを出し続けている人もいます。たくさんの人たちが議会に、そして政治に関心をもち、社会を変えていく大きな力になっていくことが期待されます。 やがてその活動は、再生可能エネルギーとコージェネ(熱源から電力と熱を生産し供給するシステム)を促進する市民運動に発展していきます。妨害する既存電力会社との契約を更新しようとする市議会の決定に対して、市民グループは一軒一軒訪問して市民を説得し、賛同者を増やしていきました。最後には市民投票で勝利し、1997年には再生可能エネルギーによる電力供給会社EWSを設立して、市への電力供給を開始しました。 その後、送電網を買い取るためにドイツ全国に募金を呼びかけるキャンペーンが注目を浴び、現在では、環境にやさしい電気を求める10万を超える世帯、大きな企業も顧客になっています。1998年からのドイツでの電力市場の完全自由化の実現もその活動を後押ししました。同社の支援で市民参加によるソーラーパネルやバイオマスなどによる小規模分散型の発電が進み、ピーク時の対応も柔軟にできています。 この取り組みを伝えるドキュメンタリー映画は、活動する人たちがともに苦労を分かち合いながら、一緒に楽しげに食事をするシーンが印象的です。そこには思いを同じにする市民がつながりあって継続的に活動し、社会を変えていくことへの希望が見えます。 しかし、少子高齢化やグローバル経済が進んでいくなか、だれが政権をとっても満足なサービスを提供しつづけるのは難しいのが現実です。閉塞的な現実を打ち壊す救世主を待ち、政治をお任せにして、「不満なら交代」をいつまで繰り返しても期待は幻想に終わります。 市民が有権者から主権者となり、「任せて文句を言う社会」から「引き受けて考える社会」へ転換していくことが、今こそ求められます。 その実現のために目指す未来のビジョンを共有し、それに向かって市民から政治に働きかけ、また議会も市民の声を聞き、知恵を取り入れる仕組みを整えていく、そんな時代を生活者ネットワークは市民と一緒に作っていきます。
若者の再出発を支えるネットワーク 義務教育を終える少年少女の多くが高校進学をめざします。けれど、そのすべてが思いをかなえて次のステップに進むわけではありません。 経済的理由から都立高校だけを受験して失敗し、定時制高校に進むケースも少なくありません。働きながら学ぶ意志を持ち定時制高校に進んだわけではないため、そこも続かず中退した場合は、中卒という肩書だけで社会に出ていくことになります。あるいは、希望通りの高校に入学しても、なんらかの事情で中退する若者もたくさんいます。 そういう若者が、再出発したいと考えた時、相談する窓口、あるいは再出発をサポートする組織を作ろう、そういう目的で発足したのが、「若者の再出発を支えるネットワーク(準備会)」です。 今はまだ、「若者の再出発を支えるには、どのようなことが必要なのか」「現在、どのような制度があるのか」「他の自治体ですでに活動している団体はあるのか」そのようなことを学習している段階です。一方で、中学を卒業後、3年間働いた後、『高校卒業資格認定試験』を受験している若者に無料で勉強を教える支援活動も始めています。 現在、支えるネットに参加しているのは、教員やPTA活動をする保護者を含む様々な調布市民です。この活動は、まだその端緒についたばかりです。多くの方の参加をお待ちしています。学習会だけに参加する、情報を提供する、関心のある方を紹介する、学習サポートのボランティアをしたいという方も大歓迎です。 1年間の準備を経て、今年5月には具体的な活動、まずは、進路変更を考えている若者や保護者向けの相談会をスタートさせる予定です。それに先立ち、現在ボランティアをしてくれている大学生や大学院生にわずかでも謝礼を出すため、資金を集める企画もあります。というのも、そのボランティアをしている学生自身が、アルバイトで学費を稼いでいるケースもあるからです。そこで、この企画を若者サポーターズパーティーと名づけました。
高齢になっても障がいがあっても地域で安心して暮らす 高齢化が進む中、高齢者が必要なあらゆるサービスを身近な地域で受けられることが安心につながります。また、障がいをもつ人が働ける社会を実現するため、調布市の施策について質問しました。
きめ細かいニーズ調査を
調布市でもきめ細かな調査を行い、結果を分析し、生活圏域ごとに重点的に計画に反映させるべきと提案しました。 調布・生活者ネットワークの福祉部会は、市内外の移動サービス事業所へアンケート調査を行い、昨年2月に「移動サービス事業所案内」としてまとめました。市内の地域包括支援センターなどへ配布したところ、「こういうのが欲しかった!」と好評でした。
しかし、私達の調査は行政調査ではないという理由で、回答がない事業所もありました。杉並区には「外出手段にお困りの方へのお出かけガイド」があります。調布市でも移動サービス事業所の一覧をつくり、高齢者や家族、ケアマネージャーへの周知を図ることを求め、一覧表を作成するとの答弁を得ました。 昨年「行政の福祉化」として、庁内での障がい者雇用をすすめている大阪府を視察しました。その取り組みを参考に、市施設などを障がい者雇用の実習・訓練の場として中間的な就労機会の拡大を求めました。答弁では、今後も新たな職場開拓を行い、受け入れの拡充を図っていくということでした。 さらに、公共調達条例を策定し、障がい者雇用も選定基準にするよう提案しました。
今回の質問で、調布市においては、障がい者の法定雇用率2・1%を実現するなど、他市に先んじて障がい者への雇用・就労支援がきめ細かく行われていることが明らかになりました。今後も障がいのあるなしに関わらず、ともに働き、暮らすユニバーサルな社会が調布市で実現されるよう見守っていきます。
「調布市自治の理念と市政運営に関する基本条例」について、生活者ネットワークは、策定の過程で多くの市民が関わることを議会質問などで何度も求めてきました。市民が分権や自治のありようを考え、また立場や価値観の違いを超えて意見交換をし、合意を作っていく積み重ねこそ、調布市の自治を進める上で重要だと考えたからでした。 実際に行われた策定作業は、最初の基本理念を話し合う市民懇談会に数人の公募市民が参加したものの、それ以降、市民には提示された素案や論点整理などに意見を述べるという場しかありませんでした。市民の自治力を育て、高める機会としてこの条例策定を活かせず、主権者である市民の意見が充分に反映されていないことが、反対理由のひとつです。 また、条例案では、参加と協働によって市民、議会、行政がそれぞれの役割を果たしてまちづくりを進めるとしています。しかし、市民はまちづくりに参加する権利を有するとしながらも、それを担保する市民参加条例や、住民投票条例は規定されていません。市民が主権者として、自治を担う対等な立場から市政に参画し、市民の意見を市政運営に反映させていくためには、市民参加条例や住民投票条例の制定は不可欠と考え、条例案には反対しました。
議会の活性化と、市民にわかりやすく開かれた議会にすることを目指して、昨年9月に議会改革代表者会議が発足し、26回(1月23日現在)に及ぶ検討を重ねてきました。 各会派で出し合った改革案をもとに話し合い、すでに、本会議場の車いすでの傍聴席の設置、一般質問の一問一答方式の導入、陳情文書のホームページ掲載などが実現しています。現在は議会基本条例案について議論をしているところですが、生活者ネットワークとしては拙速に条例制定するのではなく、市民の声を聞き、それを反映させた条例にするべきだと考えます。 そしてこの条例によって、議員の資質を向上させ、多様な市民の声をもとに議員間で充分に討議し、政策提言できる議会になっていかなければなりません。議会改革を受け5月には初めての議会報告会も予定されています。
合言葉はシイ、タブ、カシ
命を守る森づくりに感動! 講師の宮脇昭さん(横浜国立大学名誉教授)は植物生態学者として、世界各地で4千万本以上の植樹をしてきました。土地古来の樹種を調べ、苗を育て混植する。2、3年の手入れの後は自然の成り行きに任せておけば、天然の森に育っていくというのです。 「本物は厳しい環境に耐えて生き抜く」と何度も話されました。その土地・風土に合った樹種こそが本物で、深く根を張り、災害にも負けない森ができると。シイ、タブ、カシなどはその代表例で、東日本大震災後の調査でも、大きく根を張ったタブの木が倒れずに被害を軽減させた様子が紹介されました。
2012年7月ドゥマンジュが訪れた
そうしたことから、宮脇さんは「命を守る森の防潮堤」を提唱しています。震災で発生したガレキから有害物を除去し、それを土台に盛り土をして、そこに適した古来種を混植する。ガレキの処理、また震災の記憶を刻むものとして、何より津波から尊い命を守るために、ぜひ多くの自治体で取り組んでほしいと思います。 最後に「雪の中を来られた方も本物です。命を守る森づくりを共にすすめましょう」と熱いエールを送られる宮脇さんに、何とか応えたいとの思いが湧いたのでした。(Y・S) |