宇野のチヌ (うののチヌ)



 中坊公平氏が被害者弁護団の団長を務めていた産業廃棄物不法投棄問題で、「ゴミの島」として一躍有名となったのが瀬戸内海に浮かぶ豊島。バブル真っ盛りの1990年までに関西地区の建築廃材等が違法に大量に持ち込まれ、悪臭と深刻な環境汚染を引き起こし大きな社会問題となった島ですが、その廃棄物はすぐお隣の直島にある三菱マテリアルの事業所に持ち込まれて再処理されています。面白いことにこの二つの島は岡山のベネッセがリゾート化を図っている島で、ゴミというダークなイメージを払拭する為にかコンテンポラリアートのミュージアムを点在させて、知的で洗練されたイメージのリゾートアイランドが展開しています。直島で観光スポットとなっているのは中心部から南側で、北半分は工場しかありませんしね。ゴミはゴミですけど。
 この直島・豊島に程近く、航路が出ているのが岡山県玉野市の宇野港。突堤からはそのゴミ絡みの直島や豊島も良く見えます。そしてこの港の駐車場脇に、大きなゴミのオブジェがあります。

 

 巨大な魚のオブジェで、名前は「宇野のチヌ」。ちなみにチヌとは関西でクロダイのことです。長さ5m高さ3.5mの大きさの魚のオブジェですが、鱗や尾・背鰭などが全てこの宇野港や近所の児島湖で拾い集めたゴミで出来ており、カラフルなグラデーションで美しく見せています。表と裏の配色も違います。作成したのは大阪のアートユニットの淀川テクニックで、地元大阪の淀川に漂着しているゴミを使った作品を発表しているユニークなプロジェクト。2010年に設置されています。

 

 またそのゴミが多種多様で、なんでこんな物まで浮いていたの?と思うほど。ラケット・じょうろ・傘・キーボードに食品サンプルまで。瀬戸内海は内海ですからけっこう汚いですからね。遠目で見ると判りませんが近くに寄るとかなり異様で、アルチンボルドの騙し絵や、ブリューゲルの「反逆天使の転落」のような雰囲気もあります。アニメチックなサブカル的モチーフを纏いながら、環境問題にもつながるユニークな作品で、そういう意味でも直島・豊島が目の前にあるこの場所というのは、中々意義深いのでは?

  

 



 「宇野のチヌ」
  〒706-0002 岡山県玉野市築港1-1-3