海野宿 (うんのじゅく)



 中仙道は信濃追分で分岐し、佐久平を西南に進み、やがて和田峠を越えて諏訪に至るのですが、一方分岐して派生して出来た北国街道は小諸を通り、塩田平の上田に入ります。その上田の手前にあたる宿場町が海野宿です。この海野宿は、江戸期の旅籠屋と明治期の養蚕農家の建物が混合されたユニークな街並みを保っていて、重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。
 東西に細長く伸びた街並みは、卯建(うだつ)と格子窓が美しい建物と、中央に配した掘割と柳並木とがほどよいコントラストを与えていて、なかなか乙な雰囲気です。卯建は防火用に作られた軒先の小さな壁ですが、鯱鋒があったりと色々な意匠が施されていて、当時の隆盛を窺い知ることが出来ます。

 

 宿場町のやや東寄りに「海野宿歴史民俗資料館」があり、内部では豪族だった海野氏の資料や囲炉裏などが公開されていますが、面白いのは裏手にある養蚕時代の資料で、現代人が忘れがちな絹糸が出来るまでが再認識することが出来ます。
 機織機や桑切り機、蚕種などが所狭しと展示されていて、その建物自体も含めて養蚕農家の匂いが感じ取れます。

 

 

 

 養蚕農家はお蚕様を気分よく暮らしていただくために、屋内で常に火をたいて保温に努めていました。その為、屋根には気抜けと呼ばれる煙出しの窓が付く小屋根が作られました。

 

 一番東の外れに、この地の氏神様を祭る白鳥神社があり、地元住民達の産土神として愛着されています。なかなか立派な造りで、樹齢700年といわれる大欅をはじめとする巨木が、宿場町の歴史の長さを伝えています。
 観光地にありがちな小五月蝿い土産物屋はなく、蕎麦屋が2軒ほど。今でも生活空間として大事に使われている街並は、大型の観光バスもこの中には入門無用。軒先に季節の鉢植えを並べたり、鐘楼下にコスモスが咲き乱れるなど、彩りが豊かな自然な場所を、大切に守っているようです。

 

 

 静かな宿場町をそのまま抜けると、やがて塩田平の田園地帯になり、15分ほど歩くとしなの鉄道の大屋駅に辿り着きます。駅と海野宿まではあまり車も通らないところなので、散歩がてらに歩くのも良いかもしれません。大屋駅は静かな佇まいで良い駅です。





 「海野宿歴史民俗資料館」
  
〒389-0518 長野県東御市本海野1098
  電話番号 0268-64-1000
  開館時間 AM9:00〜PM4:00
  休館日 毎週水曜日