鶴岡カトリック教会 (つるおかカトリックきょうかい) 重要文化財



 小京都とも呼ばれる鶴岡は、ちょっと不思議なテイストの漂ういにしえの町。庄内藩主酒井家のお膝元として栄えた城下町なので、武家絡みの物件があちらこちらに点在するのですが、その一方で明治期の洋風建築が同じような場所に隣り合って建っているので、和洋ごった煮のエキゾチックな趣があるユニークな街並が広がっています。鶴岡城址の御堀端に建つネオバロック様式の大宝館、酒井家の御屋敷だった御隠殿の隣に擬洋風建築の旧西田川郡役所と旧鶴岡警察署、それに武家屋敷門の奥に明治期の豪邸だった風間家丙申堂など、小京都というよりは明治の香り漂う”ハイカラ”な顔を持つ町と言えるでしょう。風間家丙申堂の南にある鶴岡カトリック教会も同様のパターンで、重厚な武家屋敷門の奥に、赤いトンガリ屋根の礼拝堂が見えています。

 

 この教会の土地は元々庄内藩家老末松十蔵の屋敷跡だった場所で、屋敷が取り壊された後も門だけ残されて、その後教会の礼拝堂が建設されたというのがこのユニークな組み合わせの理由。門には大きく「天主堂」と表札もあります。天主堂は1903年(明治36年)に完成した木造瓦葺きの建物で、最も印象的なトンガリ状の塔の高さは23.7m、正面の幅は10.08mで主棟の奥行きは23.75mの大きさです。設計は宣教師のフランス人のパピノ神父で、佐渡の両津教会や京都の旧聖ザビエル教会(明治村に移築)など、数多くの日本の教会堂を手がけた名手によるもので、国の重要文化財に指定されています。赤い屋根と白い壁とのコントラストが美しく、一際高い塔は童話の挿絵にでも出て来そうなほど可愛らしく、隣に幼稚園があっていつも子供達が周りで遊んでいるので、本当におとぎ話のような平和な環境が保たれています。

 

 この礼拝堂はロマネスク様式の一つとされるバジリカ型三廊式とよばれる構造で造られていて、東北では最古のもの。このバジリカ型三廊式とは、主室として中央にアーチ状の高い天井を持つ長方形の聖堂に、左右両側にこうもり傘天井(リブ・ヴォールト天井)の低い側廊を備えた構造で、ローマ時代の王宮の謁見用広間に基づいた様式です。天井の複雑なアーチの連続により装飾性が強いのと、音響効果が高いのがその特色。

  

 この内部で瞠目すべき点に窓のステンドグラスが挙げられ、普通のステンドグラスと違い薄い透明な紙に描かれた聖画を両側からガラスで挟んだ「貼り絵」(プリンテッド・フィルム・ステンドグラス)と呼ばれる手法によるもの。高価なステンドグラスに代えて採用された手法で、この教会以外では見られないとか。細かな図案による美しい絵柄が優しい光に溶けて堂内に注ぎ込みます。

  



 「鶴岡カトリック教会」
   〒997-0035 山形県鶴岡市7-19
   電話番号 0235-22-0292
   拝観時間 AM8:00〜PM6:00
   拝観休止日 無休