東湖園 (とうこえん)



 岡山駅前から路面電車に乗って桃太郎通りをチンタラ進み、市中心部を抜けて旭川に架かる長い鉄橋を渡って町外れの住宅街に入り、終点の東山電停の一つ手前の門田屋敷電停で降りて横丁の路地を入ってしばらく進むと、築地塀に囲まれ鬱蒼とした緑に覆われた東湖園という庭園に出くわします。この界隈は近くに山々が連なる麓にあたる場所で、市中では一番東側にあたり、路面電車の乗客は川を渡る前には殆ど降りてしまうほど。そんなちょっとばかし寂しい環境が、市内にあって広い敷地の日本庭園が残る理由にもなったのかもしれません。県内最古の庭園でもあったりします。

 

 周囲は民家やマンションが建てこむ住宅地ですが、この東湖園は江戸初期の岡山藩主だった池田忠雄の下屋敷の跡地だった場所で、面積約3700u(1100坪)の広い敷地に池や築山に茶屋を配した池泉回遊式の庭園が広がります。近所とはあまりにもミスマッチ。
 江戸初期の寛政年間に造園されたそうで、第二次世界大戦時の空襲にも免れており、比較的当初の姿を残しているとか。

 

 殿様の遊息所でしたから色々と凝った趣向があるようで、園内の北側の池の畔に「得月台」と呼ばれる茶屋が池に張り出す様に造られています。池側は全面フルオープン状態となっており(現在はガラス窓入り)、もちろん庭の景色を楽しむ為なのですが、名の由来通り池に浮かび上がる月を愛でる為でもあるようで、桂離宮の古書院と同様の趣向。炉も切られているので、ここで一服点てていたのかもしれません。
 また東側には東山の姿を望む借景でもあったようなので、この茶屋は東面も見晴らしが良いことから、その眺めを楽しんでいたのかもしれません。今は何も見えず。

 

 

 この得月台の隣にはさらに池の上に出た状態で、小さな茶室が浮いています。三畳の広さに二畳台目と壁床前に向板を入れた構成で、炉は向切になります。躙口と貴人口と両方ありますが、池側に大きく窓が開いており、その下には舟繋石と釣舟石があるので、池側から舟に乗ってそのまま室内へ上がることも可能。
 ここでも池の眺めを第一としており、窓から広い池を見やるとまるで舟の中にいるような心持。こちらで煎茶の接待も有ります。

 

  

 その舟遊びもこの庭園での大きな目的だったらしく、長石を伸ばした桟橋もあります。武家好みというよりは公家好みの庭園といったところでしょうか。

 

 池の周囲には様々なタイプの橋や灯籠が置かれ、築山には鎌倉期の花崗岩製による七重塔もあり、その周りを飛石や延段による園路が巡ります。昼下がりに小一時間ばかりいましたが他に訪れる人も無く、静かな時間が過ごせます。

  

 



 「東湖園」
   〒703-8275 岡山県岡山市中区門田屋敷2-2-5
   電話番号 086-272-0165
   開園時間 AM9:00〜PM5:00
   休園日 水・木曜日 12月31日〜1月2日