東福寺三門 (とうふくじさんもん) 国宝



 東福寺を東福寺駅から歩いてお参りしてしまうと、実は裏口から参入することになり、境内の諸堂の配置が今ひとつピンボケ状態で頭に入ってしまいます。ここは隣の鳥羽街道駅を下車して、南側の三門から正統的に入りたいもの。これは東福寺駅が山内の北側にあるせいで、禅寺は大抵南側を正門として伽藍を配置することが多いことから、アクセス腸捻転状態を引き起こしているわけです。で、その正式な順路で参拝すると最初に御目見えするのが境内の一番南にある三門。なんと言ってもその雄大な造りに目を見張る巨大な門で、国宝に指定されています。

 

 東福寺は鎌倉期の1243年(寛元元年)に開山された臨済宗の寺院で、関白だった九条道家が祖父の菩提寺として都最大の寺を構想したのがその始まり。奈良の東大寺と興福寺から東福寺と名付けられたこの寺は、その二つの大寺院に負けず劣らずの規模の大きさを誇り、寺域は5万坪と市内屈指の広大さ。当初は禅・天台・真言の兼修道場だった為、仏殿・法堂・方丈・禅堂等の禅宗の七堂伽藍に、五重塔・灌頂堂等の真言宗や阿弥陀堂等の天台宗の建物が混在した特異な配置構成を見せていましたが、14世紀前半に何度も火災に遭いその伽藍はあえなく全焼。その間に室町幕府の制度下に基づいて京都五山の四位に掲げられるようになり、室町期の復興以降は今に見る禅宗寺院としての体裁が整えられていきました。三門は14世紀後半の至徳年間に再建が始まり、1405年(応永12年)に完成した三門としては最古のものです。大きさは五間三戸の二階二重門で、屋根が入母家造りの本瓦葺。下層各間は十七尺に対して柱径が三尺もある、木割が野太い豪壮な土台がまず特徴の一つ。

 

 そしてもう一つの大きな特徴が、禅宗寺院なのに禅宗様ではなく大仏様が採用されている点。柱上の組物に三手先挿肘木を用い、中備にも平三斗を三段に重ねるなど、大規模建築の構造を支えるのに有利な大仏様が多用されており、この雄大な門の手法としては納得なのですが、実はこの再建された時期は既に大仏様は過去の遺物と化しており、この手法が採用されたのは当初のものを踏襲して復元したからではないかと考察されています。東大寺と興福寺から命名された通りに創建時には東大寺の大工を招いて建造されており、その際に東大寺の大仏殿や南大門と同様の手法で建造されたのでしょう。
 ただやはり禅寺なので禅宗様も一部採用されており、二階の縁周りは禅宗様高欄が、二階の正面五間と側面一間には桟唐戸が嵌められるあたりにその特徴が見られます。

 

 

 上層へ上がる為に両脇から山廊と呼ばれる切妻屋根の急階段の付属施設が有ります。創建当初には存在しなかった建物のようで、雪舟の絵によると嘗ては両脇に重層の鐘楼や経蔵が建ち並んでおり、より勇壮な姿が拝めたようです。
 実はこの建物で一番の見所は二階の内部。やはり野太い大虹梁を二重に渡し、大瓶束をおっ立てて大空間を支える逞しい構造美で見るものを圧倒させます。壁や柱のいたる所に天女や竜・花紋などが極彩色に描かれており、その厳粛で荘厳な空間の中で、須弥壇上に宝冠釈迦如来・月蓋長者・善財童子・十六羅漢像と夥しい数の仏像群が居並ぶ壮観な眺め。つまり巨大仏堂をそのまま宙に浮かした空中仏堂で、例えば法隆寺や唐招提寺の金堂が宙に浮いた感じ。残念ながら通常非公開ですが、春秋によく特別公開されています。

 

 



 「東福寺」
   〒605-0981 京都府京都市東山区本町15-778
   電話番号 075-561-0087
   拝観時間 AM9:00〜PM:4:00 11月AM8:30〜PM4:30