武田家住宅 (たけだけじゅうたく) 重要文化財



 高岡駅からディーゼルカーで運行中のローカル線JR氷見線に乗ると、伏木駅を過ぎてからは日本海沿岸をちんたらちんたら進みます。この辺りは雨晴海岸と呼ばれる中々の景勝地で、冬の良く晴れた日には、海越しに雪を被った霊峰立山連山も見られるスケールの大きなダイナミックな眺望が車窓から広がる所。能登半島国定公園の一部にもなっています。雨晴駅で列車を下りて、静かで素朴な漁村を抜け、落着いた佇まいの集落を過ぎると、竹や杉の屋敷林に囲われた立派な御屋敷が現れます。甲州武田家の末裔の伝承を持つ武田家住宅です。

 

 武田家は信玄の弟信綱の末裔と伝えられ、代々当地で十村役を務めてきた豪農でした。敷地の南側は山林になり、その山林も含めて面積1万uを超える広大なもの。大きな茅葺屋根が印象的な主屋は、安永年間(1772〜81年)から寛政年間(1789〜1801年)にかけて、伏木の勝興寺の本堂が再建された時の建設余材を用いたとの伝承があり、大きさは間口12間奥行11間半のほぼ正方形、棟高はおよそ6間の寄棟造りです。屋根に大きな特徴があり、正面から見ると茅葺ですが、背面は柿葺の切妻造の越屋根に茅葺を回し、北側を除く3面に桟瓦葺の庇を付けた複雑な形状で、各方向から見ると表情の異なる面白い構成を持っています。
 屋根でもう一つの特徴として、茅葺の南北両端に角板を付けて、それぞれ「雲」と「水」の字が彫り込まれています。これは風水に基づくものだそうです。

 

 

 内部は面積の3分の1が土間のハシニワになり、奥に板敷きのダイドコロ・リョウリノマが座敷から張り出した形で、ダイドコロ横の土間に竈が作られています。天井が高く吹き抜けているのですが、北側にあたるので日が差し込まず昼でも暗い空間になっています。

 

 座敷部は全部で9室と多く、特に中央で大きく分断された少し複雑な配置になっています。東西に二部構成となっており、正面の東側は十村役の役宅としての式台付きの24畳のヒロマと10畳間が二つ、仏間を挟んで裏面の西側に居室部として24畳のチャノマと8畳間のオネマ、床付きの8畳間のオヘヤ、9畳半のカッテザシキなどがあり、フォーマルな空間とプライベートな空間が遮断されています。土間部のダイドコロ・リョウリノマも居室部側に張り出しています。役宅部のヒロマはいわゆる「枠の内」造りで、壁を三段の化粧貫を通し、天井を高く吹き抜けて、十字の太い梁組で竹簀子の天井を受けた豪壮で尚且つ美しい部屋。
 居室部のチャノマもヒロマ同様「枠の内」造りで、三段の化粧貫と豪壮な梁組みで天井を支える雪国ならではの対策法で造られています。巨大な自在鉤が吊られています。

 

 

 役宅部の奥は床付きの本座敷の10畳間とその前に対面の間にあたる10畳間があり、十役見回りの奉行とここで応対しました。
 さらにチャノマの奥の私室の座敷はそれぞれ小さいながらも床が造られており、茶事も行えるように炉も切られています。窓の外には山林へと続く緑豊かな庭も見られ、簡素でありながら端正な佇まいのこの内部空間は、武家から帰農した豪農の品格の高さを感じずにはいられません。

 

 



 「武田家住宅」
   〒933-0134 富山県高岡市太田4258
   電話番号 0766-44-0724
   開館時間 AM9:00〜PM4:30
   休館日 毎週火曜日 年末年始