旧田口家住宅 (きゅうたぐちけじゅうたく) 重要文化財
飛騨高山の郊外に作られた「飛騨の里」は、飛騨の長閑な農村を再現した民家村です。ただ民家を移築して陳列するだけの観光施設ではなく、里山に暮らす人々の生活ぶりを忠実に復元していて、古民家の他に水田や水車小屋、火の見櫓に鐘堂と地蔵堂、神社などが点在され、懐かしい里山のスローライフが体感できる場所となっています。面白いのは村の一角に工芸集落があり、飛騨地方特産の染織・染色・木刻・漆塗の伝統工芸の工房として使用され、職人の技術の保存や公開、それに体験も出来るというユニークな試みも催されています。
「飛騨の里」には全部で飛騨地方の17件の古民家が移築されています。目を引くのは白川郷などで知られる合掌造りの建物ですが、この地方では大半の民家が榑葺き屋根と呼ばれる切妻状の民家が多く造られました。榑葺きとは、「榑(クレ)」と呼ばれる薄い小さな板を幾枚も敷いてその上に石を置いた屋根で、製材技術が拙い時代に板を裂くことによって風雨を凌いだ手法で、毎年秋になると葺きかえた模様です。この「飛騨の里」には七軒の榑葺き屋根の民家が移築されています。その中でも特に規模が大きな建物として、「旧田口家住宅」が移築されています。
今は鉄板が葺かれていますが、嘗ては榑葺きの屋根でした。田口家は飛騨と美濃の国境地帯の庄屋を務めていたそうで、桁行14間梁行7間半の二階建ての長大でどっしりした外観。飛騨地方でも南にあたるために比較的積雪が少なく、そのせいか雨戸の外に濡れ縁が造られており、雪の重みには弱い構造になっています。1809年(文化6年)の建造で、国の重要文化財指定。
内部は広い土間に板の間が2間と座敷部が6間取りの構成で、二階は養蚕用にあてられました。土間には囲炉裏の切られた板の間のダイドコと、ウスニワと呼ばれる作業場、それに農耕馬を係留するマヤが造られ、生活空間の場として機能していました。
土間に面して板敷きのミセとオエの2間が作られ、それぞれ中央に囲炉裏が切ってあります。ダイドコと含めて計3つの囲炉裏があり、名主の家だったこともあり集まりが多く行われていた模様で、社交空間の場として機能していました。鴨居に差物を多用して柱を省略してあるので、広々とした空間が作り出されています。
板の間の奥にはマエノデイとオクノデイの書院造の座敷、納戸に仏間、それに6畳の広い畳廊下とハイグレードな住宅空間が作られ、名主の家としての風格が示されています。
「飛騨の里」
〒506-0055 岐阜県高山市上岡本町1-590
電話番号 0577-34-4711
FAX番号 0577-33-4714
開館時間 AM8:30〜PM5:00
休館日 12月30日〜1月2日