縮景園 (しゅくけいえん) 名勝



 飲み屋・お好み焼屋・ソープが混在する歓楽街の薬研堀から北へプラプラ700mばかり歩くと、知事公舎や市長公舎が建ち並ぶ市内きっての高級住宅地である上幟町に辿り着きます。ここはちょうど広島城の真東にあたる場所で、官公庁や放送局も近く県立美術館もある閑静な住宅街。意外とJRの広島駅にも近く、北側を流れる京橋川を挟んですぐ駅前の一角に辿り着けます。
 お城に近い川の畔というのは城主が御屋敷をこさえる傾向があるようで、ここでも京橋川沿いに城主の別邸「縮景園」と呼ばれる大名庭園が残されており、戦前までは城主の子孫の持ち物でしたが、今では下々にも開放されて大名気分が満喫できます。

 

 この縮景園は藩主浅野長晟がお国替えで当地に入国した翌年の1620年(元和6年)に造営が始まった別邸で、作庭は茶人としても知られる家老の上田宗箇。敷地は園の北東を京橋川が斜めに流れる直角三角形のような形状を成しており、面積は約15000坪。国の名勝に指定されています。
 園内の大半を濯纓池(たくえいち)と呼ばれる広い池が占め、その周囲に築山・渓谷・橋・茶室・四阿を点在させて周遊する池泉回遊式の庭園で、江戸初期に数多く造営された大名庭園のパターンを踏襲したもの。池には大小10個の島が浮いており、それぞれ鶴や亀を表す鶴亀島だとか。鶴は東西に二羽いるらしく、翼を広げた姿を模ったようで平石が左右に置かれています。その鶴島にはペア鶴のデコイも有り。

 

 その濯纓池の中央に架けられたのが跨虹橋(こうこうきょう)。中国趣味濃厚な石橋で、眩く白さは花崗岩によるもの。1783年(天明3年)の園内改修工事の際に整えられたものだそうで、小石川後楽園の円月橋に似ています。
 小石川後楽園には中国杭州西湖の堤防が再現されていますが、この縮景園も西湖の風景を模した(又は縮めた)由来があるそうなので、因んで造らせたものなのでしょう。

 

 この跨虹橋以外にも様々なタイプの橋が点在して架けられており、橋めぐりをしてみるのも一興。

 

  

 園内には書院造の「清風館」、数寄屋造の「明月亭」、草庵風茶室の「夕照庵」、それに四阿の「悠々亭」とタイプの異なる四つの茶屋群が点在しており、さながら桂離宮の茶屋群に呼応するような構成です。これらの茶屋群の近くには舟着場が必ずあるので、まさしく桂離宮のように舟でこれらの茶室を周って春夏秋冬優雅な遊びに興じていたのでしょう。

 

 

 

 他にも看花榻(かんかとう)と呼ばれる茸型の展望台や、自然石の手水鉢に楊貴妃型石燈籠等が点在して風景に変化を与えています。これらすべての建造物・樹木は全て原爆で焼失しており、戦後に往時の姿に復元されたものです。

 

 



 「縮景園
   〒730-0014 広島県広島市中区上幟町2-11
   電話番号 082-221-3620
   開園時間 4月〜9月 AM9:00〜PM6:00
         10月〜3月 AM9:00〜PM5:00
   休園日 12月29日〜31日 1月2・3日