杉山家住宅 (すぎやまけじゅうたく) 重要文化財



 大阪府南部に位置する富田林市中央部に、「寺内町」と呼ばれる古い町並みが残されています。寺内町とは戦国時代に浄土真宗の寺院を中心として設立された宗教都市のことで、周囲を掘割や土塁で防御して外部との干渉を避けて、戦乱の世に自由都市として独自に自治を運営していきました。江戸幕府の17世紀以降には、藩幕体制から宗教色は薄められ、さらに交通の要所であった為に幕府の直轄地となり、水運・陸運の利便性から商業都市として発展し、さらに人物の交流も盛んな事から文化的なレベルも高くなり、能楽や文楽が度々上演されワインも醸造されるなど、当時の流行の先端を行く豊かな都市として繁栄しました。
 寺内町にある約500棟の建物うち180棟ほどが江戸期から昭和初期にかけて建造されたもので、その街並の文化的な貴重性と景観から、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。その一角でも特に古く大きな建物として、杉山家住宅が建てられています。杉山家は富田林寺内町の創建に深く係わった旧家で、1685年(貞享2年)に酒造業を始め、その後造り酒屋として成功しました。現存する家屋としては町内で最も古く、1747年(延享4年)頃に現状の姿に整えられものと考えられています。国の重要文化財指定。
 主屋の外観は切妻の瓦屋根を幾重にも重ね、煙出し用の越屋根を乗せており、白壁に虫籠窓を開けて格子を連ねたもの。外塀には、木・竹・鉄などの先端の尖った形状のものを並べた、防御用の忍び返しが設えてあります。

 

 内部は、建物の3分の1が広い土間で、土間の西側に格子の間と台所と角屋が並び、そのまた西に仏間と店奥、さらにその奥に大床の間・座敷・奥座敷が続く構成。土間は構内で最も古く、左手には大きな竈のある釜屋が、右手には店内にあたるシモミセがあり、その釜屋との仕切りには太い梁が架けてあります。この梁は「煙返し梁」と呼ばれ、煙を遮断する為に架けてあるもので、農家建築のスタイルを織り込んだもの。

 

 土間の上がりにあたる格子の間は、名前の如く道路に面して美しい格子窓が開けられています。格子の間・台所・角屋の上に二階部が設けられ、ここへは台所横から螺旋階段を伝って上がります。二階には虫籠窓が開けられ、外部の監視の役割も担いました。

 

 

 建物の一番西側、入り口からは最奥の、大床の間・座敷・奥座敷の3つの座敷部は最後に増築された箇所で、土間部とは異なる書院風の造り。大床の間には床壁一面に松の絵が描かれており、文化・文政の頃に狩野杏山守明の手によるもの。大床の間の北側にある座敷も床横に違い棚を設け、障壁画・襖絵で彩られ茶事用に炉も切られたゴージャスな空間です。

 

 座敷の西側にある奥座敷は、1734年(享保19年)に増築されたもので、書院造の座敷とは異なり数寄屋風の洗練された内装を持ち、南側には茶室も作られています。座敷と奥座敷との間の欄間は1737年(元文2年)に作られたもので、材料は薩摩杉を用い、菊の透かし彫りを入れてあります。この奥座敷南側に落着いた佇まいの庭が広がっています。

 

 座敷部の繋がりが少しづつずらして作られている為、奥の部屋へと誘い込むような巧みな間取りになっています。
庭前には茶室の露地で多く見られる袖壁が作られ、手水鉢も据えられています。この庭の北側に蔵が3つほどあり、造り酒屋だったこともあって大きな酒蔵が造られました。

  



 「旧杉山家住宅」
   〒584-0033 大阪府富田林市富田林町14-31
   電話番号 0721-23-6117
   開館時間 4月〜10月 AM10:00〜PM5:00
          11月〜3月 AM10:00〜PM4:00
   休館日 月曜日 年末年始