聖パウロ教会 (せいパウロきょうかい)



 軽井沢は宣教師が開いた別荘地ですし、今でも在留外国人の保養地でもあるのでキリスト教の教会がとても多く、全部で計11の礼拝堂が町内に点在しています。特に戦前にまで遡る古い物件も多く、例えばショーハウス礼拝堂は明治期に建てられたものですし、ヴォーリズ建築によるユニオンチャーチは大正期のものです。旧軽銀座近くにある聖パウロカトリック教会も昭和初期の建造で、こちらはアントニン・レーモンドが手掛けた美しい礼拝堂です。

 

 アントニン・レーモンドはチェコ出身のユダヤ人建築家で、アメリカへ逃れて巨匠F.L.ライトの弟子となった人物。師匠の帝国ホテル設計に同行して来日したものの指向性に相違が生じ、独立してそのまま日本に居住し設計を続けており、日本におけるモダニズム建築の父とも呼ばれています。軽井沢へは1933年(昭和8年)に別荘を設けて夏を過ごしていたようで、その滞在中に知り合った英国人司祭ワード神父の依頼によりこの聖パウロ教会の礼拝堂を設計しています。
 建造は1934年(昭和9年)で木造平屋建て。屋根は銅板葺ですが当初は柿葺でした。山小屋風の三角屋根と後方に塔を聳えたこじんまりとした外観で、正面の深い庇と栗丸太は日本の民家を思わせ、塔は故郷チェコのボヘミアの木造教会に酷似しています。フォークロア的な周囲の自然と融合する姿で、とても素朴で牧歌的な味わいがあります。

 

  

 内部は天井が高く吹き抜けて杉板が張られ、なぐり丸太による日光杉で組まれた鋏状トラスの構造体が露出しています。レーモンドの作品は構造体をそのまま見せる傾向にあり、麻布笄町にあった自邸でもこの鋏状トラスが露出していました。日本の民家の土間空間や禅宗寺院の仏堂が構造体を美しく見せることや、茶室における化粧屋根裏天井の影響があるのかもしれませんね。柱も太い皮付き丸太で床の間のの床柱のようです。予算の関係でローコストでありながら聖堂としての厳粛性を効果的に見せる劇的な空間。
 入り口上部にはパイプオルガンもあり、小さな懺悔室もあります。階段の紋様はノエミ夫人がデザインし、椅子は弟子のジョージ・ナカシマの作品。

 

 

  



 「軽井沢聖パウロカトリック教会」
  〒389-0102 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢179
  電話番号 0267-42-2429
  開館時間 AM7:00〜PM6:00(冬季は日没まで)