聖ヨハネ教会堂 (せいヨハネきょうかいどう) 重要文化財



 明治村内に移築されたキリスト教の礼拝堂は全部で四つあり、五島列島から移築された和風建築風の大明寺聖パウロ教会堂、京都から移築されたゴシック様式の聖ザビエル天主堂、シアトルから移築された住宅建築風のシアトル日系福音教会、そしてもう一つはやはり京都から移築されたロマネスク調の聖ヨハネ教会堂が、広大な園内に点在しています。何れも明治期に建造された礼拝堂なのですが建築様式がそれぞれ異なっており、見比べてみるのも一興でしょうね。結婚式場としても貸し出されているので、ひょっとしたら挙式に遭遇するやもしれません。
 このうち園内最南端に位置するのが聖ヨハネ教会堂で、周辺からはポツンと離れた場所にあるおかげか比較的閑散としており、また周囲は森に囲まれて晩秋の頃の紅葉する樹々との織り成す風景は絵画的でお薦め。

 

 正式名称は日本聖公会京都聖約翰教会堂で、京都最大の繁華街である河原町にあった礼拝堂です。建造されたのは1907年(明治四十年)で、設計にあたったのは米国人宣教師ジェームズ・M・ガーディナー。布教活動と合わせて立教大学校長も歴任した教育者兼建築家で、日光真光教会や弘前昇天教会など全国に優れた教会堂を数多く設計しており、同じ京都でも平安女学院の聖アグネス教会も手掛けています。何れもプロテスタントである日本聖公会の礼拝堂なので、布教メインの活動なのでしょうけれどね。その聖公会は英国教会とも呼ばれるように、英国王ヘンリー八世のアン・ブーリン(エリザベス一世女王の母)との離婚・結婚の為に出来た宗派なので、ガーディナーの礼拝堂は概ね英国趣味が濃厚となり、この聖ヨハネ教会堂もまるで処女王エリザベス女王の頃のシェイクスピアの戯曲にでも登場しそうな、中世ヨーロッパのゴシックスタイルとロマネスク様式が融合したような外観を見せています。

 

 特に正面に並び立つ双頭の八角塔や、入口上の四連の飾り格子の入ったステンドグラスの尖頭アーチ窓、その下の柱頭飾りからやはり尖頭アーチを描く煉瓦積みの入口天井部、そしてその奥の二連の三つ葉の紋様で繰り抜かれた欄間など、中世ゴシック風の垂直性を高めた重厚な面構えを見せています。

  

 

 構造は一階が煉瓦造りで二階が木造漆喰壁で構成されていますが、移築の際に一階が鉄筋コンクリート造りの化粧煉瓦張りに変更されています。屋根は鉄板葺でしたが、これも移築の際に銅板葺へと変更されています。内部はちょっと面白い構造となっており、玄関を入ると正面にやはり二連の三つ葉紋様の欄間が入るドアが現れますが中は何もなく、礼拝堂の気配は微塵も感じさせません。移築前は一階が保育室として使われていたようで、今は何もない広間として開放中。サイドの八角塔が礼拝堂のある二階へ上がる階段で、吹き抜けの塔内に上部へ上がる長い垂直の梯子が掛けられています。恐怖!

  

  

 礼拝堂の内部は、天井板が張られず屋根裏まで高く吹き抜けていて、アーチ状に組まれた梁や柱等の構造体が露出しています。平面での構成は内陣と身廊に翼のように交差する袖廊が延ばされ、側廊を備えたラテン十字型平面が採用されており、その袖廊の左右と正面妻部のステンドグラスを始めとして計八か所の窓から採光されているおかげで、堂内はとても明るい空間となっています。

 

 

 特に幾重にも渡された梁組の構成美は素晴らしく、見る角度によっては手を合わせたような合掌の形も浮かび上がってきます。祈りの場ということなのでしょうかね。屋根裏は京都ということもあって、伝統的な日本建築で見られる化粧野地の竹簾が張られています。糞暑い京の夏も考慮に入れてのようですが、マホガニーによる梁組との色合いのコントラストも程好い感じです。

 

  

 正面妻や袖廊のステンドグラスも堂内の見どころの一つ。国重要文化財指定。

 



 「博物館明治村」
  〒484-0000 愛知県犬山市字内山1番地
  電話番号 0568-67-0314
  開館時間 3月〜7月・9月〜10月 AM9:30〜PM5:00
         8月 AM10:00〜PM5:00
         11月 AM9:30〜PM4:00
         12月〜2月 AM10:00〜PM4:00
  休館日 7月26日〜8月30日の毎週火曜日
       12月〜2月の毎週月曜日
       12月31日