札幌控訴院 (さっぽろこうそいん) 登録有形文化財



 札幌市の中心部を横断する大通公園は、北の冬の風物詩として知られる雪まつり、初夏になるとYOSAKOIソーラン祭りのメイン会場として盛況極める都市公園ですが、元々は札幌市の発足当時から設置された防火帯で、北側の官庁街と南側の住宅・商業街との間に設けられた緩衝地帯です。つまりこの大通公園を境に街並がガラッと変わるわけで、北側の北海道庁や時計台に北大の施設等が整然と建ち並ぶ近代的なオフィス街に対して、南側は薄野の林立するソープランド・ラブホ等の風俗関係やJRAのウインズに二条市場等が雑然と建ち並ぶエネルギッシュな歓楽街となり、その差は歴然と明らか。おそらく防火の意味合いは公的ブロックである北側を、大衆ブロックの南側から守る為でしょう。そんな計画理由は知って知らずか今では市民の憩いの場として機能している大通公園ですが、両端はそれぞれモニュメンタルな施設で区切られており、東側は市のランドマーク的存在のさっぽろテレビ塔で、西側は旧札幌控訴院だった札幌市資料館が後衛を守っています。堂々たる外観のせいか、遠くから見ると大通公園は前庭のように見えてしまいます。

 

 札幌控訴院は戦前の高等裁判所にあたる控訴院の一つで、当時全国に8箇所設置されましたが現在残るのはここと名古屋のみです。1922年(大正11年)4月に着工したものの同年9月の関東大震災で予算が削られ工期もかかり、竣工したのは1926年(大正15年)9月のこと。建築面積が820uあり、屋根が鉄板葺の二階建て洋風建築なのですが、一見石積みに見える外観は、実は煉瓦と石を交互に組み合わせて積み上げる「組積造(そせきぞう)」と呼ばれる特殊構造で、切り出せれた石は札幌郊外の石山緑地で産する札幌軟石が採用されています。さらに二階床と階段と支柱柱は鉄筋コンクリートで組まれており、構造体としては複雑で近代的な手法で造られています。屋根中央に高塔を建てる予定が予算削減のあおりで塔の屋根だけ載っています。

 

 外観の意匠では特に正面中央の玄関周りに特徴があり、目隠しをしたギリシア神話の法の女神・花の組紐に囲まれた対の鏡・剣と秤等の装飾性の強いレリーフが穿たれています。何れも由来があるようで、目隠し女神は「私見を挟まない」、鏡は「真実」、そして剣は「正義」を秤は「公平」を現すものとか。
 このように正面は権威と格式を示す為にか装飾の強い重厚な外観ですが、背面はごくシンプルな意匠の造りとなり、木立の深い公園となっているせいか欧州の修道院のような趣。

 

 

 内部はU字型の平面に法廷や応接室が並ぶ構成で、特に玄関ホールの意匠に特徴があり、トスカーナ式のオーダーを立てて吹き抜けの螺旋階段を設け、漆喰の円形ドームにステンドグラスを並べた優美な造り。外観の正面中央部同様に装飾性の強い空間です。各部屋は資料室となっていますが、1階奥の北西にある刑事法廷はそのまま保存されており、戦前の大日本帝国憲法下における控訴院時代の法廷風景が復元されています。

 

  



 「札幌資料館」
   〒060-0042 北海道札幌市中央区大通西13丁目
   電話番号 011-251-0731
   FAX番号 011-271-5921
   開館時間 AM9:00〜PM7:00
   休館日 月曜日 12月29日〜1月3日