酒津 (さかず)



 倉敷市の郊外に酒津という小さな集落があります。JR倉敷駅から北西に約2km程の距離にあり、重伝地区にもなっている大原美術館近辺の美観地区とは真反対に位置する、高梁川がゆったりと流れる静かな住宅街です。特に何かあるわけでもないのですが、高梁川を取水して浄水場としている場所なので、その水を市内に送る為に集落の中を幾筋もの水路が流れており、水辺の美しい風景が広がります。

 

 

 その浄水場の配水池周辺が1951年(昭和26年)に改修工事が行われて園地化されており、遊歩道や親水公園にグラウンドも造成されています。桜が多いので、春はお花見で賑わうようですね。満々と湛えられた水の畔に豊かな森が広がり、橋やボートも浮かぶ姿は絵画的な風景で、印象派のモネの絵にでも出てきそう。お散歩したり読書したりお昼寝したりと、のんびりと過ごす方が多いようですね。

 

 

 この配水池の奥へと進むと水路と変わり、その水路がカーブして再び市内へ向かうポイントに、三宅商店という古民家カフェがあります。美観地区内にあるカフェの支店ですが、こちらは水の畔の風が吹き抜ける気持ちの良いロケーションで、古民家をリフォームした店内でお茶やケーキが味わえます。野菜たっぷりのヘルシーなカレーもお薦め。

 

 

 それから集落の一角に「とら醤油」という醤油醸造メーカーもあります。水が綺麗なことは醸造にも適しているようで、江戸末期創業の業務用が中心の老舗です。工場内を公道が走っているのも面白いですね。
 小売用に色々と商品開発もしているようで、黄ニラしょうゆとか椎茸しょうゆなんてのもあります。美観地区内の倉敷名産館で販売中。

 

 このとら醤油の近くに「無為村荘(むいそんそう)」という大きな御屋敷があります。実はこの酒津はクラレの創業地で、その創業者で大原美術館を造った大原孫三郎の別邸がこの御屋敷。大原美術館のコレクションは友人の画家でもある児島虎次郎が孫三郎の銘を受けて蒐集したものですが、その児島虎次郎画伯のアトリエ兼住居として使われていた場所です。ということで現在でも若い芸術家達のアトリエとして使われているようですね。企業メセナの先駆者みたいな方でしたし。

 

 この無為村荘以外にも御屋敷が多く、戦前に建てられた瀟洒な洋館が点在しています。配水池そばの高梁川東西用水組合の建物もその一つ。クラレの役員の住宅も多いとか。のんびりと静かに暮らすには良い場所のなのでしょう。

 

 水路は集落内を巡ってやがて市内中心部の方へと向かいます。その水は清らかで沢山の魚も生息しています。この水が美観地区内の運河へと流れていくのでしょう。

 



 「三宅商店 酒津店」
  〒710-0801 岡山県倉敷市酒津2829
  電話番号 086-435-0046
  開店時間 12月1日〜3月15日 平日AM8:00〜PM4:00
                      土日祝日AM7:30〜PM5:00
         3月16日〜11月30日 全日AM7:00〜PM5:00
  定休日 月曜日