洛東遺芳館 (らくとういほうかん)



 鴨川沿いに五条大橋の南に大店を構える「柏屋」は、江戸初期の1645年(正保2年)に創業した老舗の豪商で、白壁の続く広い敷地に重厚な建物が立ち並ぶ、市内きっての京町屋の建造物です。京都中心部は火災が多かった為に意外と江戸期の町屋はあまり残されていないので、その意味でも非常に貴重。明治期に柏原家は東京に移されたので、敷地のほうはそのまま残されて”洛東遺芳館”の名で博物館として季節公開されています。店棟は紅殻の格子窓が続く京町屋ならではの風貌です。
 柏原家は当初は京小間物や扇子の行商からスタートしましたが、その後木綿で一発当てて事業を広げ、漆器や和紙にも進出し江戸にも店を出し、いわゆる江戸店持京商人として隆盛を極めました。その豪商ぶりはこの残された建物群にもよく表されていて、520坪の敷地に店棟・台所棟・座敷棟・居室棟と続いて総部屋数が36という広大なもの。ここでは座敷部に入ることが出来ます。

 

 

 主屋は増築に増築を重ねて複雑な構成になっており、屋根もそれに合わせて入り組んだ形状。内部は主室に違い棚や床の間を配した広間を置き、南側を雪見障子を嵌めてあり、明るい庭を眺めることが出来ます。

 

 

 紅殻塗り天井の数奇屋造りの座敷が幾つも並び、また平面構成が複雑なので迷路状態になっています。主室に隠れるように茶室があり、ここも雪見障子が嵌められています。
 主室側から隠れて見えないように箱階段があります。二階は主人の私室で、客人に見えないように出入りする忍者屋敷のような造りです。

 

 

 南側に露地風の苔庭があり、さらに坪庭も2箇所ほどあるので、部屋の中にいても目に優しい緑に触れる機会が意外と多いです。外に開くよりは中に閉じ込めてプライベートで楽しむのが、伝統的な京ライフなのでしょう。

  



 「洛東遺芳館」
   〒605-0000 京都府京都市東山区問屋町通り五条下ル3丁目西橘町472
   電話番号 075-561-1045
   FAX番号 075-561-3651
   開館時間 4月1日〜5月5日 10月1日〜11月3日
          AM10:00〜PM4:00