奥穂高岳 (おくほたかだけ)



 3000m級の山岳が密集する穂高連峰の中において、その中心にあり標高が最も高いのが奥穂高岳で、海抜3190mの数字は北アルプスの最高峰でもあり、本邦では富士山・北岳に次ぐ三位の高さを誇る名峰です。麓から見上げるその山域は、巨大な岩の大伽藍ともいうべき圧倒的なスケールで仰ぎ見る者を感嘆させ、その巨塊とも呼ぶべきような重量感溢れる姿は、周囲を睥睨し威圧感さえ感じられる程の存在感が漂います。



 奥穂高岳は三本の稜線が交差する山頂なので、その稜線沿いに進むルートが採られていますが、何れも険しい岩場が連続する難易度の高いコースとなっており、特に西穂高岳への稜線は一般ルートとしては国内最難関。上高地から直接取り付く岳沢のルートも急傾斜の岩場が続き、途中に山小屋がなくエスケープルートも無いので、下りに使うのはまだしも登りに使うのはお薦めできません。
 最も一般的なルートは多少大周りでも涸沢に廻り込んで北側から攻めるコースで、上高地から5時間程で涸沢に着きますし、途中に山小屋も数件あるので天候が急変した際でも安心です。
 上高地から広い車道の横尾街道を進み、まず明神を過ぎて元牧場だった徳沢を通過し、横尾で左に折れて吊橋を渡って登山道に入ります。徳沢はハルニレの大木が芝地に立つ気持ちの良いキャンプ場で、山小屋の徳沢園では地酒数種類やおでん等もあり、ここで一晩過ごすのも悪くありません。

 

 横尾から涸沢までは3時間ほど。樹林帯の中をひたすら高度を稼ぎます。ダケカンバやナナカマドの灌木帯に変われば涸沢はもうすぐそこで、広大な擂鉢状の石屑のカールに、二つの山小屋と色とりどりのテントが張られているのが見られます。振り返ると背後に常念岳の特徴ある笠状の山嶺も望めます。

 

 

 涸沢は穂高連峰の中心に位置するテラスの様な平坦な場所で、北に北穂高岳を南西に奥穂高岳を、さらに南には前穂高岳と、周囲を3000mの高峰に囲まれており(涸沢は2300m)、パノラマビューで穂高連峰の景観が楽しめる絶好の登山基地です。特に前穂高岳の幾何学的なラインを描く稜線が印象的。盛夏でも残雪が多く、地元の高校生が部活でスキー合宿もしています。
 この涸沢には2つの山小屋があり、「涸沢ヒュッテ」は展望テラスで生ビールを飲みながらその雄大な景色が楽しめます。おでんと日本酒の熱燗セットも好評です。冷やしトマトや桃もあります。「涸沢小屋」では、盛夏期になると名物かき氷が始まり、行列が出来るほどの盛況です。海老ピラフもあります。

 

 

 涸沢は奥穂高岳と北穂高岳との登山道の分岐点となっていて、奥穂高岳には涸沢カール中央のザイテングラートと呼ばれる岩稜帯を登ります。北穂高岳へは、北穂南稜を登ります。
 ザイテングラートは途中鎖場もある険しい岩場の道ですが、よく整備されて大変歩きやすく、みるみるうちに高度を稼ぐことができます。2時間程で鞍部の穂高岳山荘に着きます。

 

 

 穂高岳山荘は標高2983mの高地にありながら、素晴らしい眺望・広いロビー・清潔な水洗トイレと施設も完備された、評判の高い綺麗な山小屋です。ここから稜線歩きになります。
 穂高岳山荘前からはいきなりの悪場になります。梯子・鎖・ボルトに助けられながら通過すると、あとは稜線漫歩で展望を楽しみながら進みます。

 

 やがて西側前方にジャンダルムと呼ばれる怪異な岩峰が現れます。フランス語で「護衛兵」という意味で、初期の奥穂高岳登山は反対側の岳沢から行われてました。
 振り返ると涸沢岳と北穂高岳の間から、槍ヶ岳が顔を覗かせています。

 

 ジャンダルムを過ぎればやがて西穂高岳からの稜線ルートが合流し山頂に到着します。奥穂高岳山頂は東西に細長く、小さな祠と大きなケルンが積まれてます。足元に上高地を見下ろし、その向こうに焼岳や乗鞍岳が見渡せる素晴らしい展望が広がります。





 「涸沢ヒュッテ」
  開設期間 4月下〜11月上
  〒390-1516 長野県松本市安曇上高地4469-1
  現地番号 090-9002-2534
  連絡先 東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館内 朋文堂スキー山岳協会
  電話番号 03-3211-1023

 「涸沢小屋」
  開設期間 4月下〜11月上
  〒390-1516 長野県松本市安曇上高地4469-1
  現地番号 090-2204-1300

 「穂高岳山荘」
  開設期間 4月下〜11月上
  現地番号 090-7896-0045
  連絡先 岐阜県飛騨市神岡町東町504
  電話番号 0578-2-2150