奈良女子高等師範学校 (ならじょしこうとうしはんがっこう) 重要文化財



 国立の女子大学は意外と少なく、東京のお茶の水女子大学と奈良の奈良女子大学の二つのみ。いずれも明治期に女子の教員養成として設立された女子師範学校で、戦後の学制改革によりそれぞれ新制大学へリスタートされており、今でも卒業後は教員の道へ進む学生が多い大学です。
 このうち西日本エリア担当の奈良女子大学は、奈良市内中心部の興福寺や東大寺に近い立地に広大なキャンパスを持っており、時には鹿も遊びに訪れちゃうという浮世離れした素晴らしい環境で、特に東を正門としてその奥に本館を見る姿は、学校というよりは戦前の上流階級の御屋敷のよう。

 

 創立は1908年(明治41年)で、奈良女子高等師範学校として始まりました。当初は本館以外にも4つの校舎が並んでいましたが、現在残るは本館のみ。
 その本館は1909年(明治42年)10月に建設された洋風建築で、外観は屋根が寄棟造で桟瓦葺の木造2階建て。建築面積は495uあります。
 一階と二階の壁面が異なる意匠となっていて、一階は緑色の板張りで統一されていますが、二階はその緑色の木部と白漆喰壁とで構成される欧州ロッジ風のハーフティンバーとなっており、その二階部が非常に引き立つ構成です。そしてこの二階部から上に豊かな装飾性が見られます。

 

 まず屋根中央部に頂塔をのせ、小さな採光窓を6ヶ所を開けて屋根に変化を与え、二階部には曲線形の木材を張り付けて、幾何学的な模様を描いています。そのデザインはシンプルでありながら優美なもので、八重桜をモデルとする校章に因んだものか花びらを思わせる紋様もあり、このあたりは女性の為の施設ならではということなのでしょう。
 壁には何故か半鐘が吊るしてあります。授業開始のベル代わりでしょうかね?

  

 

 内部は一階が十字に走る廊下に沿って教室が並び、二階は広い講堂の一室のみ。ここでも天井や階段の手摺等に花をモチーフとしたデザインの飾りが穿たれており、華やいだ印象を与えています。
 講堂は屋根裏のトラス構造で長大なスパンを支えているそうで柱が一本も無く、その中央部天井には格天井にドーマー窓を開けてシャンデリアを吊り下げた、最も凝った意匠の見られる空間。この窓は換気用とかで熱気で自然に抜けるそうです。
 この講堂で入試や入学式が行われているようで、本館全体を春秋に記念館として一般公開されています。国の重要文化財指定。

 

  

 正門と側にある守衛所も本館同様に凝った意匠のメルヘンチックなもので、特に守衛所は屋根の棟飾りや窓周りが本館と似た意匠です。共に今でも現役で、これらも国の重要文化財指定。
 正門を入った南側には戦前の封建的アナクロ教育の施設である奉安殿があります。天皇・皇后の写真や教育勅語を納めた建物で、戦前にはどこの学校にもあったようですがさすがに戦後は解体されるのが殆どのところ、ここのはショウジョウバエの飼育箱となったおかげで残ったとか。

  



 「奈良女子大学記念館」
   〒630-8506 奈良県奈良市北魚屋東町
   電話番号 0742-20-3220
   開館時間 GW・11月上旬に一般公開 AM9:00〜PM4:00