中島浄水場 (なかじまじょうすいじょう) 登録有形文化財



 長岡駅から西へ住宅地の中をポチポチと15分程歩くと、庶民的なアパートが立ち並ぶ一画に忽然と巨大な塔が姿を表します。まるで灯台を思わせるこのフォルムは配水塔で、かつてこの一帯にあった浄水場の遺構の一つです。今はその役目を終えて園地化されており、水道公園として開放されています。

 

 明治期に赤痢やコレラが流行したように上下水道の整備は都市の近代化において必須事項でしたから、1887年(明治20年)の横浜を皮切りに全国の主要都市に次々と浄水場が建設されて行き、この長岡でも信濃川沿いの中島地区に浄水場が造られ1927年(昭和2年)に完成しています。
 信濃川左岸の河川敷に広がる平坦な敷地に、南側へ巨大な配水塔とポンプ棟等が設置され、北側は貯水池が造成されました。60年以上にわたって長岡市民の水瓶の役割を果たしていましたが、1993年(平成6年)に廃止となり、貯水池は埋め立てられましたが配水塔やポンプ棟は貴重な近代化遺産として修復保存されることとなって、それぞれ国の登録有形文化財の指定を受けています。ちなみにこの水道公園の近くで有名な長岡の花火大会が毎夏開催されるので、この公園はいい観覧場となっているようです。

 

 ポンプ棟は三棟あり、北側から「ポンプ室棟」と「監視室棟」、そしてその裏手に「予備発電機室棟」が並ぶ構成で、何れも鉄筋コンクリート造りによる平屋建て。このうち「ポンプ室棟」と「監視室棟」は外壁にオーダーを取り回し、玄関ポーチ上にアーチを設けてドイツ壁仕上げを施して、腰には自然石を積んだ重厚な外観を持ちます。ただし細部には当時流行の幾何学的なアールデコ様式の意匠も見られ、昭和初期の水道施設に共通する装飾性の豊かな建物です。

 

 

 

 一方「予備発電機室棟」は装飾性の少ない建物で、屋根も切妻造りの金属板葺と工場のような外観です。これは裏手にあるので衆目には晒されないことから無駄な装飾は一切排除されたのでしょうね。内部も巨大な発電機がのっそりとあるだけ。

 

 長岡市のランドマーク的な存在の配水塔は、外部は鉄筋コンクリート造りで内部には鉄骨造りの架構に鋼製のタンクがすっぽり収まっています。高さは41.5mあり、6階建て。戦前は全国にこのような配水塔が沢山造られましたが、この中島浄水場の配水塔は「こけし型」と呼ばれる特異な形状で、豪雪地帯の為に凍結を逃れる為の措置とか。壁面に複数の穴が開いているのも冬季に暖房を絶やさない為の煙出し用で、寒冷地ならではの色々な工夫が見られます。

 

  



 「長岡市水道公園」
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