名古屋控訴院 (なごやこうそいん) 重要文化財



 1889年(明治22年)に発布された大日本帝国憲法の下において、近代的司法制度の確立から全国に8ヶ所の控訴院(現在の高裁)が設立され、そのうち札幌と名古屋の控訴院の庁舎が現在も残り、共に市政資料館として公開されています。名古屋控訴院は名古屋城の御壕に近い官庁街の一角に位置し、愛知県庁や名古屋市役所も歩いて数分の距離。この庁舎も実際に1979年(昭和54年)まで名古屋高裁・地裁として使用されており、すぐ北側には今でも現役の名古屋拘置所があります。ついでにこの庁舎の正面に愛知県女性総合センター(ウィルあいち)があり、強面のフェミニストのオバサマ方が周辺で跳梁跋扈していたりします。

 

 この庁舎の正式名は名古屋控訴院地方裁判区裁判所庁舎とやたらと長ったらしい名前。1922年(大正11年)に竣工された煉瓦造りの建物で、国の重要文化財に指定されています。設計は司法省営繕課が当たり、監督に司法建築のスペシャリストだった金刺森太郎が担当。ちなみに設計には山下啓次郎が関わっていて、この方も奈良・千葉・鹿児島等の刑務所建築の大家。ジャズピアニスト山下洋輔氏の祖父としても有名です。建物の大きさは面積2314u、中央の塔屋先端までの高さが28m、煉瓦及び鉄筋コンクリート造りの3階建てで、屋根は塔屋以外は天然スレート葺き。中央玄関部にドーム状の塔を乗せ、その玄関部を大きく前に張り出して車寄せとし、左右対称に寄棟屋根の閣屋を配した外観で、ネオバロック様式による意匠です。特に白い花崗岩・人造石と赤煉瓦が明快なコントラストを作り出す壁面は、ネオバロックらしい華やかな美しさがあります。装飾も豊かな点で特徴があり、正面玄関列柱の頭部はイオニア式で、柱間はエンタシスで少し膨らんでいます。

  

 

 玄関を入るとすぐ階段になり2階へ。1階は留置所となっており、実務は2階より上で執り行われていました。2階と3階は似たような間取りの内庭のある回廊式で、中央部を高く吹き抜けた広い階段室とした構成。この階段室は空間全体が漆喰仕上げが見事な荘重な意匠で、天井・壁は白の漆喰塗、柱は黒漆喰塗と黄漆喰塗の磨き仕上げ、さらに正面壁の柱や飾りが漆喰に大理石模様を描いたマーブル塗りと、熟練の左官による高度で多彩な技術の成果を見ることが出来ます。それと階段踊り場正面と天井に壮麗なステンドグラスが嵌られており、特に正面の物は天秤をモチーフとした裁判所ならではのデザインです。手摺は天然の大理石を使用。

 

 

 3階には法廷や会議室が並びます。控訴院法廷・陪審法廷・小法廷などが往時に復元されて、戦前の裁判状況などが判り易く展示されています。

  



 「名古屋市市政資料館」
   〒461-0011 愛知県名古屋市東区白壁1-3
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   FAX番号 052-953-4398
   開館時間 AM9:00〜PM5:00
   休館日 月曜日 第3木曜日 12月29日〜1月3日