鴻池新田会所 (こうのいけしんでんかいしょ) 重要文化財



 まあるいオレンジの環状線、真ん中通るは東西線、そんな大阪の中心部を抜けるJR東西線も、京橋駅を過ぎると学研都市線という珍妙な名前の路線に変えて、河内の下町をたらたら走ります。京橋駅から四つ目の駅が「鴻池新田」という駅で、駅の周りはマンションや商業施設や町工場が林立する、よくある大阪の庶民階層の街並なのですが、JRの高架沿いに奈良方面へトボトボ進むと、駅から徒歩5分ほどの所に周壕を廻らした時代劇のセットのような立派なお屋敷が見えてきます。これは「鴻池新田会所」と呼ばれる場所で、嘗てのこの一帯の開墾事業の管理事務所だった施設、国の史跡に指定されています。江戸中期に河内平野を流れる大和川の幕府による付け替えが行われ、湖沼地だったこの地帯が開発されて豪商だった鴻池家により当地が管理運営されることになり、1707年(宝永4年)頃に建造された施設です。戦後も事業所として運営されていて、1950年(昭和25年)までその役目を担っていました。
 入り口は南側一箇所で、周壕を橋で渡り冠木門を潜って敷地内に入ると、立派な長屋門が迎えます。この長屋門は明治1908年(明治41年)の建造。

 

 長屋門の奥に本屋が姿を見せます。この会所全体の中心となった建物で、1704年(宝永4年)の建造。外観は入母屋造りの二重本瓦葺きの屋根で、広さは約660u。武家屋敷のような重厚な建物で、式台も設けられています。国の重要文化財指定。
 長屋門のある南側から見ると普通の入母屋造りに見えるのですが、裏側から見ると千鳥破風を幾つも重ねた複雑な屋根となり、明り採りと気抜け用に天窓も付けられています。この窓が内部への効果的な演出を果たしています。

 

 

 内部は西側半分が広い土間となり、東半分が勘定間と座敷部となります。圧巻は土間の空間で、土間上に柱を立てないで梁組みだけで支える壮大な架構が組まれており、自然な曲がりそのままの豪快な巨木を渡して、その上に小屋組みを縦横に架けた剛健な造り。この巨木は樹齢400年の黒松だとか。採光用の窓から放たれた外光が、この力強い梁組みを美しく引き立たせています。
 土間は80畳ほどの広さで、竈や炊事場も設えてあります。規模の大きな管理事務所だったせいか竈の数が多く、全部で9つもあります。飢饉の炊き出しにも活躍した模様です。



 

 勘定間は土間に面した4間取りで、事務所兼関係者の食堂となった場所。勘定間の東側に5部屋による座敷部がとられ、役人との接待や会合の場として利用されました。いずれもシンプルな意匠の部屋で、座敷飾りはオクザシキに設けられているのみの質実さ。各部屋は襖で仕切られているので、襖を外して大宴会も行われたのでしょう。座敷部の外には池もある美しい庭が広がっています。かつては座敷から生駒山が望めた模様です。

 

 

 座敷の裏手の中庭に白洲があり、ここで界隈の裁判所の役割を果たしていました。鴻池家の財力のなせる業だった模様です。

  

 敷地内にはこの他に、屋敷蔵(国重文)・道具蔵(国重文)・米蔵(国重文)・文書蔵(国重文)・居宅・乾蔵・火の見小屋などがあり、裏には船着場もあります。これだけの江戸中期の大規模な施設が、そのまま残されているのはまことに貴重で、時代劇のロケにも使われている模様です。

 



 「鴻池新田会所」
   〒578-0974 大阪府東大阪市鴻池元町2-30
   電話番号 06-6745-6409
   FAX番号 06-6744-7498
   観覧時間 4月1日〜6月30日 9月1日〜11月30日 AM10:00〜PM4:00
   休館日 月曜日 祝日の翌日(土日を除く)