清水寺(きよみずでら)重要文化財



 清水寺と言うと、ユネスコの世界文化遺産にも登録されている京都のお寺が有名ですが、実は全国到る所に同名の寺院が多数点在しており、それぞれ歴史も古く宗派も異なるようで、多数の貴重な文化財を保有している寺院も少ないないです。特徴のあるパターンとして山中分け入った森の中に伽藍を構えることが多く、名前の由来でもある清水が湧き出ている所も見られます。そもそも泉の畔に小さなお堂が建てられたのが始まりなんでしょうけれどね。
 山陰の安来市にある清水寺もそんなパターンにあてはまる寺院の一つで、中海に程近い海抜50m程の小高い山の中腹に開かれており、やはり清水が湧き出る伝説から命名されたようです。密教寺院らしく険しい山中を切り開いて伽藍が構えられており、参道は鬱蒼と生い茂った杉林の中を麓の山門から続く108段の石段で登ります。途中に茶店や旅館もあるので、一息入れるのも良いでしょう。傍らにはお不動様も睨みを利かせています。

 

  

 清水寺は用明天皇2年の587年に開基された古刹で、本格的に諸堂が建ち並ぶ伽藍が整えられたのは平安初期の806年(大同元年)のこと。朝廷や豪族の加護を受けて48の塔頭を従える山陰道最大の巨刹となりましたが、戦国期の尼子vs毛利の戦いで敗者側の尼子氏が立て籠った為に毛利氏によって全山焼き討ちに遭い、今に見られる諸堂は勝者の毛利氏が詫びて再興されたもの。宗派は天台宗で、5万坪あまりの境内に本堂・三重塔・開山堂・鐘楼などが建ち並んでおり、厄払いのお寺としても知られています。

 

 伽藍の中心にあたるのが本堂である根本中堂。京都の清水寺と同様に崖の上に建てられていますが、こちらは懸造りではなく城壁のような石垣の上に。この仏堂だけは毛利氏の焼き討ちには遭遇しておらず、室町初期の1393年(明徳4年)に建立されています。外観は屋根が入母屋造りの柿葺で、大きさは桁行7間奥行7間による中世の大型密教仏堂です。風格のある堂々たる姿を見せる仏堂ですが細部を見ると装飾性は少なく、組物の出三斗や中備の間斗束など控え目な意匠で組まれており、妻飾りの二重虹梁大幣束が目立つぐらいです。組物に見られる和様を主体として、桟唐戸や貫の木鼻に禅宗様が混在する穏やかな折衷様式となっており、中世の密教仏堂らしい厳かな佇まいを見せるお堂です。国重要文化財指定。

 

 

 内部は正面2間を外陣とし、結界として設けられた格子を挟んで奥5間が内陣となる平面構成で、外陣は大虹梁を渡してその上に平三斗を乗せて天井桁を支えています。床は全て板張りで天井は格天井となり、天井桁の上から化粧垂木が出て深い軒先を支えています。扁額に「大悲閣」とあるのは、本尊の十一面観音菩薩像を祀っているから。

 

 この本堂の奥に、再び城壁のような石垣の上に三重塔が聳えています。山陰地方唯一の三重塔で(ちなみに五重塔は無い)、幕末期の1859年(安政6年)に建立された比較的新しい塔です。総欅造りで高さは21.1m、相輪まで合わせると33.3mあります。こちらは時代が下がって近世の建物ですから装飾性が強くなり、龍や花の図案による彫刻が密集しています。県指定文化財。

  

 この塔は内部に入ることが出来、三層まで上がれます。心柱は一層にはなく、その上から二層・三層を貫いており、各階層はその心柱の部分に須弥檀を設けて回廊が取り巻く構造。大抵は二層以上は内部構造を造りませんから、おそらく庶民の娯楽的な施設として造られたのかもしれませんね。浄財集めの意味もあったのかもしれません。急傾斜の梯子のような階段で上へよじ登り、最上階まで上がると眼下に中海まで見渡せるパノラマが広がります。土日祝のみの公開。

  



 「清水寺」
  〒692-0033 島根県安来市清水町528
  電話番号 0854-22-2151
  拝観時間 AM9:00〜PM5:00
  休館日 年中無休
  三重塔登閣は土日祝のAM10:00〜PM4:00