きらり



 熊本県はバブル期真っ盛りの1988年(昭和63年)から、県内の公共建築物に「くまもとアートポリス」なる名称で建築とアートを融合した街づくりプロジェクトを進めており、官公庁・団地・橋・博物館・学校・体育館など様々な施設に、国内外の建築家や美術家が設計したユニークなスタイルの作品群が見られます。まあ目先を変えただけの新手の公共事業にすぎないのですが、篠原一男や伊東豊雄に藤森照信と著名な建築家が参加していることもあってか国際的な評価も高く、プロジェクトの幾つかは数々の賞も受賞しています。ほとんど建築家の実習場と化していますけれどね。
 九州新幹線開通で2004年(平成16年)に開業した新八代駅前の広場に、やはりこのプロジェクトに参加したモニュメントが設置されています。ピラミッドのような外観の不思議な作品で、「きらり」と命名されています。

 

 この作品を設計したのは建築家の乾久美子。構想前にこの地を訪れた際に、田圃のド真ん中に忽然と近代的な駅舎が建てられている風景に違和感を覚え、さらに周辺の開発もあまり見込みがないことから(現状でも変わらず)、逆にあまり目立たない透過性の高い作品を造ろうと考えたそうで、周りが長閑な田舎の風景なので家形のオブジェなら馴染むだろうとのことで設計したとか。
 ガラス繊維を混ぜて強度を保つGRCという素材を用いて厚さ7cmの薄いコンクリート壁を造り、大小様々な正方形の穴を無数に開けて開放感を高めて、透過性の高い繊細な作品に仕上がっています。
 内部には立方体のスツールがあるのでタクシー待ちの休憩スペースとして使われているようですが、屋根がだだ洩りなので雨風は防げません。

  

 この無数の穴は7種類のものが約4300個もあるそうで、それぞれの穴から切り取られる空の風景はプラネタリウムの星空のようでとても美しいものです。

  



 「新八代駅前プロジェクト・きらり」
   〒866-0824 熊本県八代市上日置町4774-2