神魂神社 (かもすじんじゃ) 国宝



 縁結びに御利益があることから出雲大社へ参拝に訪れる女性客が多く見られますが、合わせてパワースポット巡りとして須佐神社・日御碕神社・美保神社などの出雲地方の古いお社を参拝する人が近頃増えているようですね。確かに小泉八雲が「神の国」と呼んだように歴史の古い由緒正しき神社が数多く点在しますし、その社殿のある一帯が独特の気配を感じさせているのは事実で、スピリチュアルな雰囲気に触れたい人達の心を惹きつけるのでしょう。
 松江市郊外の大庭地区にある神魂神社もそんな霊的な神秘性を境内に漂わせるお社で、深い森の中へ延ばされた石段の参道が奥に控える社殿へと誘います。ちなみに神魂は”かもす”と呼びます。

 

 この神魂神社のある一帯は古代出雲国の中心地で、近辺には古墳が密集しており、大和王権以降は国庁や国分寺も置かれた場所でした。神魂神社は神聖な場所としての神坐所であったらしく、その名もカミマス→カンマス→カモスとなった模様です。創建は詳らかになっていませんが、出雲大社と繋がりの強い神社で、今でも重要な神事はこの神社で執り行われています
 その森の中に開けた境内の中心にあるのは社殿。手前に切妻屋根の小さな拝殿を置いて奥に同じく切妻屋根の本殿を置く配置で、その間を階で妻入りに繋ぐ大社造りの形式です。出雲地方で数多く見かけるものですが、この本殿は桃山期の1583年(天正11年)の建造と出雲大社よりも古く、大社造りとしては最古のものとして国宝にも指定されています。

 

 本殿の大きさは桁行2間奥行2間で、屋根が切妻造りの栃葺き。屋根上の千木が水平に切られており、これは女神を表しているとかで、男神の出雲大社は縦に切られています。
 棟高に対して床高の比率が大きく、その高さを作り出す為に床下は強固な梁組で支えています。古代の出雲大社も床下が高い高層建築であったようなので、より古式に近い形状ということなのでしょう。また部材は木太く、特に前後の中央にある柱(宇豆柱)は一際太くて壁よりもはみ出しているほど。上端では屋根下の棟木も受けて、そのまま床下も貫いて直接大地に根づいています。内部は非公開ですが、構造体が丹塗りで赤い色が強調された空間のようで、天井に極彩色の八雲の図案が描かれているようです。女性神の由来によるものなのでしょうか?
 出雲大社よりは遥かに規模の小さな社殿ですが、装飾性の薄い豪壮な外観はアニミズム的な原始性を孕んでおり、地域の環境も含めて圧倒的な存在感を見る者に与えています。

 

  

 境内にはこの社殿の他に幾つもの末社が点在していますが、特に本殿すぐ南側にある貴布祢稲荷両神社本殿は二間社流見世棚造りの珍しい形式の社殿で、神魂神社本殿と同時期に造られたとは思えない対照的な繊細な意匠で統一された優美な建物です。国重要文化財指定。

 



 「神魂神社」
  〒690-0033 島根県松江市大庭町563
  電話番号 0852-21-6379
  境内自由