甲斐駒ヶ岳 (かいこまがたけ)



 南アルプスの秀峰甲斐駒ヶ岳(2967m)は里に近い高峰でもありました。甲州街道沿いに聳える円錐状の白い頂きは、宗教的な畏敬の念を持って土地の人々に愛され、花崗岩で敷き詰められた山肌からは、地中で浄化された清冽な霊水が涌き出で、その恩恵を麓の杜氏達が地酒を作りウイスキーを精製し、お百姓さんたちはおいしいお米を作り続けてきました。国蝶のオオムラサキも飛び交い、雑木林ではシイタケの栽培もさかんなこの静かな里では、山の豊かな恵みを受けて美しい里山の暮らしが続けられています。

 

 甲斐駒ヶ岳は元々宗教登山の意味合いが強かったので、甲州側からの黒戸尾根から登るのが主流だったのですが、日本アルプス屈指のハードコースの為に最近は敬遠され、裏側の北沢峠から登るのが大半になってしまいました。その為黒戸尾根は宗教的モニュメントが多数あるのですが、北沢峠側は皆無です。
 北沢峠からは尾根伝いに進むコースと仙水峠経由に迂回していくコースがあります。尾根を行くコースはアップダウンがあるので、迂回コースの方がとっつき易いかもしれません。仙水峠までは緩やかな登りで、小さな山小屋「仙水小屋」を過ぎると岩礫帯に変わりそのまま仙水峠に至ります。

 

 仙水峠で早川尾根からの道と合流します。仙水峠は甲斐駒ヶ岳の絶好の展望台。脇に従えた摩利支天がひときわ圧し掛かってくるようです。ここから道は樹林帯の急登。なかなかハードな登りが続きます。

  

 急坂を登りきると駒津峰、展望の開けた所です。ここで北沢峠からの尾根道と合流。ここから岩場交じりのやせた尾根道を登降して行きます。

 

 六方石の先で道は二手に分かれ、岩場の尾根道を直登するコースと、山腹を巻きながら登るコースに分かれます。巻き道のコースは最初大きく右手に舵をとり、ほぼ水平に進みます。やがて摩利支天との分岐点で道を分けて、砂礫帯をジグザグと登ります。このあたりは霧が出ると非常に迷い易いです。また砂礫帯は滑り易く滑落の危険性もあります。

 

 砂礫帯を登りきると黒戸尾根からの道と合流します。ここから石碑が立ち並びいきなり宗教的な要素が強くなります。山頂へは一投足。祠が山頂のど真中に設えられていて、信仰の山であることが再認識されます。