カトリック府中墓地 (カトリックふちゅうぼち)



 府中北部の田園地帯には、様々な公共施設が次々と作られていきました。都立神経病院・府中刑務所・東京農工大・航空自衛隊府中基地・多磨霊園など、いずれも広大で平坦な敷地を必要とするものばかり。神戸在住少年Aも収監された関東医療少年院も農工大の近くにあります。比較的安価な値段で土地が購入出来て、都心に出るにも割りと便利な所だからか、墓地の多いのもその特徴の一つでしょう。浅間山公園の近くにも多摩犬猫霊園墓地があり、農工大の広い牧場のそばにはカトリック府中墓地があります。



 1927年(昭和2年)にメーラン神父が開設、カトリック東京大司教区の共用墓地になっています。南北に細長い敷地内に、それぞれの教区毎に墓地が作られています。墓地中央には、復活した主イエス・キリストを抱えるマリア像と共に、「わたしは復活であり、生命である」と刻まれた大きな墓碑名があり、その周囲には多数の司祭の名が並んでいます。

 霊園中央西寄りに、作家遠藤周作の墓所があります。敬虔なカトリック信者であった氏は、やはり熱心な信者であった母と兄と共に、この地で眠りに就いています。
 代表作として「白い人」「黄色い人」「海と毒薬」「沈黙」「深い河」などが掲げられますが、一貫して宗教が人間に付与する物が何であるのか?人間の根源には神と言うものが存在するのか否か?など、非常に重くて深いテーマを扱ってきました。しかしハードな内容に対して文章は平明で読みやすく、ユーモラスな面も見せるなど、親しみやすい作家の一人です。それは氏自身が、信仰と挫折を経て、人間の弱ささえもありのままに慈しみを感じる、繊細で無垢な感性を持ちえていたからでしょうか?
 1996年(平成8年)9月29日、肺炎による呼吸不全により死去。享年73歳。棺には遺志により「沈黙」と「深い河」の二冊が入れられました。

 この遠藤周作の墓所の近くに円谷英二の墓所もあります。東宝特撮監督として、「ハワイマレー沖海戦」「ゴジラ」、そして「ウルトラマン」シリーズの生みの親として、世界中の子供達に夢を送り続けた英二は、1970年(昭和45年)に68歳の生涯を終えて、この府中に埋葬されました。墓碑は独特なフォルムを描いた物で、周囲にはウルトラシリーズの怪獣達のフィギュアが置かれています。

 

 園内には劇作家の田中澄江の墓所もあります。成瀬巳喜男監督の脚本家としても盛名を馳せましたが、今は女性登山家の草分け的存在として、「花の百名山」などの山に関する随筆で親しまれています。夫の劇作家千禾夫と共にこの地で眠りに就いています。



 お墓同士の間隔が程よく距離が置かれていて、さらに綺麗に芝地が整えられていて、その上にお花が散りばめられているおかげで、本当に天上の世界のようです。皆静かに永遠の眠りに就いているようです。

 



  「カトリック府中墓地」
   〒183-0053 東京都府中市天神町4-13-1
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