学習院初等科正堂 (がくしゅういんしょとうかせいどう) 重要文化財



 千葉県北西部の成田市と栄町とにまたがって、「房総風土記の丘」と呼ばれる歴史公園があり、ここに古民家二棟と洋風建築一棟が移築されて保存公開されています。当地は国史跡にも指定されている日本最大級方墳の岩屋古墳がある場所で、周辺だけでも113基の円墳・方墳・前方後円墳が点在しており、雑木林の中に古墳群と移築建築群が混在するちょっとユニークな施設です。
 その移築された洋風建築は学習院初等科の正堂で、いわゆる講堂だった建物。元々は東京四谷の初等科にありましたが、戦前に御近所の成田市へ下賜されて、この風土記の丘が設立された際に再移築されたものです。

 

 建造されたのは19世紀の終わり1899年(明治32年)のこと。設計は宮内省技手だった新家孝正で、設計当時はフリーで活動中でした。昭和になって皇太子(平成天皇)入学に伴い改築することになり、1937年(昭和11年)に下総御料牧場のあった旧印旛郡遠山村(現成田市)へ下賜され、その後は遠山村尋常高等小学校の講堂として利用されていましたが、遠山中学校変更後の1973年(昭和48年)に国重文指定により解体保存され、1976年(昭和51年)に当地へ移築し復元されたものです。
 外観は屋根が寄棟造りの天然スレート葺による木造平屋建てで、正面左右三方にベランダを取り回し、その上部に一段低く落とした庇が付く構造となっており、左右後方には控室があって、背面には演壇があって後方に膨らんでいます。外壁の下見板張りは皇室絡みの建造物としては簡素ですが、ベランダの奥にリズミカルに並ぶ板戸や繊細な柱頭飾りを持つ華奢な列柱など、全体としてとても上品な印象を与えています。

 

  

 内部は広間と左右の控室だけで、廊下としての区分の為に列柱が正面扉側に走ります。内壁は白漆喰に変わり、天井は格子状の板張りで羽目板による床板とノーブルで端正な意匠で統一されており、まさしく皇室向けの物件であることが伺えます。

 

 

 正面奥には一段高くなった演壇があり、その前面左右にコリント式の双子柱が並びます。広間前方を走る列柱はトスカナ式の円柱なので、天皇の行幸を仰ぐ場であることから、差別化を図ったものなのでしょう。特にこの演壇は双子柱以外にも重厚な半円形の木歳の階段も造られ、さらに格式の高い空間が広がります。国重要文化財指定。

 

  



 「千葉県立房総のむら」
  〒270-1506 千葉県印旛郡栄町龍角寺1028
  電話番号 0476-95-3333
  開館時間 AM9:00〜PM4:30
  休館日 月曜日 12月25日〜1月1日