内田家住宅 (うちだけじゅうたく) 重要文化財
横浜元町の小洒落た商店街を抜け、雲を突くよな谷戸坂の急坂を登りつめると、左手にあるのが港の見える丘公園。その公園角に交番があるT字路を右に進むのが山手本通りで、クネクネと尾根伝いに西へ向かう山手地区のメインストリート。この道を進むと両側に洋館や教会が数珠繋ぎのように次々と現れ、外人墓地やフェリス女学院の趣のある校舎が立ち並ぶ、異国の香りが漂う美しい街並が続きます。まあ戦前の外国人居留地区だったわけなので、これだけ西洋趣味の強い風景が残るのは当たり前で、その非日本的な景色が週末になると沢山の観光客を集めている要因なのはごもっともなことです。但しその観光客も一番西にあるイタリア山公園まで足を運ぶ人は少なく、このあたりでは比較的穏便に一日を過ごせる場所とはなっています。このイタリア山公園には洋館が2棟移築されていて、一つは宣教師館だった「ブラフ18番館」、もう一つは「外交官の家」との名で呼ばれる内田家住宅があり、無料で公開されています。
ちなみに山手地区の横浜市有の7つの洋館はいずれも無料で公開中。このイタリア山公園は元々イタリア大使の公邸があった場所で、中々見晴らしの良い高台の崖っぷちにあり、MM21地区を正面に見ることが出来ます。山手地区の洋館は関東大震災で大きくダメージを受け、今残るものは何れも大正末期以降の震災以後のものなのですが、この内田家住宅のみは1910年(明治43年)に竣工された唯一の明治期の洋館で、それもそのはず元々は渋谷の南平台にあったものを1997年(平成9年)に移築したもの。元あった場所はバブル以降周りがマンションやビルが林立し、竣工当時の閑静な住宅街は見る影もなく破壊されて建物も損傷が進み悲惨な状況でしたが、このイタリア山公園では周りを美しい庭園で彩られて、かつての優雅な姿を復元することができました。国の重要文化財に指定されています。
「外交官の家」と命名されているとおり、ニューヨーク総領事だった内田定槌氏の邸宅だったもので、泰西暮らしが長かったせいかこのような本格的な洋風建築を建てたとか。この洋館に続いてかつては和館もあったそうで、二階には二人の令嬢部屋があった模様です。これは嫁入りした時に相手の環境に順応させる為だとか。設計は米人のJ.M.ガーディナーで、立教大学で教鞭をとった宣教師でしたが、この当時の宣教師は建築家も兼ねている事が多く、御多分に漏れず各地に教会や洋館を設計しておりこの洋館もその一つ。外観は一部三階建ての木造二階建てで、洋風下見板貼りのアメリカン・ビクトリアル様式によるもの。目を引くのはそのとんがり屋根の八角塔で、最上部は展望室になってる模様です。
内部は一階が外交官だったらしく、パーティなどを開く社交場としての機能を持たせた瀟洒で広い応接間や食堂が並びます。移築前の和館にあたる場所には喫茶室もあります。
それと特徴なのが、各所に様々なデザインにカットされた美しいステンドグラスが散りばめらているところ。面白いのが玄関のガラスに内田家の紋章が入っていることで、この箇所だけ和風テイストです。
応接間の外側はサンルームになり、丁度ここが八角塔の真下にあたります。ここは外側の板壁が抜き差し可能となっていて、夏には風通しを良くして過ごした模様です。
二階はプライベートスペースとなり、一階と違って非常にシンプルな造り。寝室奥は八角塔の中のサンルームとなり、ここは夫人の私室として使われていた模様です。陽光抜群の眺めのいい部屋で、ロッキングチェアに座ってのんびりと読書をしたり編み物でもしていたのでしょうか?
「外交官の家」
〒231-0862 神奈川県横浜市中区山手町16(山手イタリア山庭園内)
電話番号 045-662-8819
開館時間 9月〜6月 AM9:30〜PM5:00
7月〜8月 AM9:30〜PM6:00
休館日 第4水曜日 年末年始