船越の舞台 (ふなこしのぶたい) 重要有形民俗文化財



 日本民家園は移築された全国の古民家だけではなく、道祖神や船頭小屋等の生活や文化に由来する様々な民俗資料も移築されており、また機織りや竹細工の実演も行われていて、日本各地に残る伝統的な農村の暮らしぶりが再現された民俗学のテーマパークです。特に文化面で欠かせないのが歌舞伎や浄瑠璃等の芝居で、実際に古民家内で人形浄瑠璃も上演されますし、歌舞伎も毎秋に園内最奥にある船越の舞台で上演されています。

 

 船越の舞台は三重県の志摩半島先端部にある大王町の船越神社内にあったもので、幕末期の1857年(安政四年)に建造されています。漁村の芝居小屋というわけですね。芝居小屋ということからか少しばかり構造が複雑となり、舞台部の屋根が正面は入母屋造りですが背面は切妻造りと変わって、さらに舞台部の左側には切妻屋根の楽屋部が取り付く構成で、いずれも桟瓦葺となります。舞台前面には花道も取り付きます。大きさは舞台部は桁行11.8m奥行10.8mで、楽屋部は桁行5.3m奥行7.3mとなり、舞台部の正面両脇に1.8m四方の出語り部が付属します。
 外観での大きな特徴は正面大棟の端部に、魚のひれと籠と菊水の文様による鬼瓦が乗り、その中央に「若」の文字が入ること。この「若」の字は漁師の若衆が携わっていたことの証で、文様も海をイメージさせるものになっています。また両脇の出語り部は向かって左側が興行主の入る花座で、右手が太夫や囃子が入る太夫座となり、花座にはむくり唐破風屋根が、太夫座には唐破風屋根が付きます。非日常的なハレの場なので、装飾性を高めた意匠ということなのでしょう。

 

 

 舞台部は前半分が舞台で後半分は楽屋と変わり、舞台上部は高く吹き抜けて花吹雪など散らせるブドウ棚やワタリが渡されていますが、楽屋は二階建てで二階部に充てられていました。歌舞伎は観客の度肝を抜かせる舞台効果が重要ですから様々と装置が必要で、まず舞台中央には十八尺(5.45m)の廻り舞台が造られ、また花道には下からせり上がる”スッポン”もあります。廻り舞台の横には奈落へ降りる急勾配の階段口も開けられているので、これも舞台効果の一つとして使われていたのでしょうね。

 

 

 

 その奈落は石垣が積まれた暗い空間で、中心部に廻り舞台の回転ゴマの装置があります。これを人力でゴロゴロと回していたのですね。国重要有形民俗文化財指定。

 



 「川崎市立日本民家園」
  〒214-0032 神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-1
  電話番号 044-922-2181
  開園時間 3月〜10月 AM9:30〜PM5:00
        11月〜2月 AM9:30〜PM4:30
  休園日 月曜日 12月29日〜1月3日