江川家住宅 (えがわけじゅうたく) 重要文化財



 伊豆半島の付け根に当たる韮山には、代官屋敷として名高い江川家住宅が居を構えています。敷地面積3300坪にも及ぶ広大な邸内には、式台付きの大規模な主屋の他に、書院・仏門・三つの米倉・武器庫・文庫が立ち並び、梅林や竹林に池を据えた中庭と、江戸期に伊豆を統轄していた格式の高さを象徴する威容さを示しています。江川家は元々清和源氏の出で、大和の国で宇野姓と称していましたが、保元の乱に敗れてこの地に移り、近郷の狩野川支流の江川から江川姓と改め、江戸期に徳川幕府より当地の統治を任されて世襲代官を務めました。敷地内の建物全て国の重要文化財に指定されています。

 

 建物の中心となる主屋は、江戸初期の建造で、外観が入母屋造りの銅版葺きで東面に式台を設けており、桁行13間(約24m)、梁間10軒(約18m)、棟高12mのスケールの大きな建物。屋根が高いので周囲からは目立ちながら、重心の低い安定感のある重厚な外観を持つので、威厳さを示す効果もあります。

 

 この主屋の最大の特徴は土間部にあり、建物面積150坪のうち1/3の50坪が土間に当てられています。台所や作業場として使われていた場所で、赤土・砂・石灰に苦汁を加えて固められており、表面に独特のうねりを浮かび上がらせた凹凸状に仕上げられていて、石灰の白を浮き立たせた海の波面を思わせる眺めの美しさを持っています。苦汁が湿気を保つので埃がたたず、また見た目と違って程よい柔らかさも持つので足裏にも心地よい快適な土間です。
 土間の上部は吹き抜けになっており、特に12mもある軒を支える為に、壮大で強靭な架構を組んであります。4本の長大な主柱を組み固め、これに梁行に1間ごとに梁を掛け渡して幾重にも組み合わせた構造で、耐震性にも強いとのことです。下から仰ぎ見た時に、軒の気抜け用の窓から差し込む光がこの複雑な梁組によって乱反射し、まるで西洋建築の礼拝堂のステンドグラスのように、天上からこぼれ落ちる優しい光が射し込む空間となっています。梁は釿(昔の鉋)の跡目がそのまま残された、素朴ながら美しい姿の物。

 

  

 土間は台所でもあったので、竈も設えてあります。主柱の他にもう1本、生き柱として柱が立てられていて、これは元々自生していた欅をそのまま柱として利用したもの。礎石がなく、削り方が主柱と違います。

 

 土間の奥には居室部があるのですが、公開されているのは玄関を含めて土間周りの4部屋ほど。公開されている箇所は12畳の玄関とそれに続く使者の間・控えの間、それに18畳の塾の間。この塾の間は、江川家36代当主太郎左衛門が地域の教育者として使用していた場所で、ここで佐久間象山・大山巖・黒田清隆も勉学に励んだ模様です。主屋の他の部屋や、書院・仏室は現在も江川家の人々が住まわれているそうです。

 

 主屋の隣には幕末に建てられた西蔵が、その隣にそれぞれ明治期と大正期に建てられた南米蔵と北米蔵とがあり、さらにその奥に幕末に建てられた武器庫があります。

 



 「江川家住宅」
   〒410-2143 静岡県伊豆の国市韮山韮山1
   電話番号 055-940-2200
   FAX番号 055-940-2201
   開館時間 3月〜10月 AM9:00〜PM5:00
          11月〜2月 AM9:00〜PM4:00
   休館日 毎週水曜日 年末年始