アルテピアッツァ美唄 (アルテピアッツァびばい)



 少子化の影響や産業形態の変化による過疎化によって、全国の小中学校の閉校が目立つようになるのはバブル崩壊後の90年代以降のこと。公立の学校は概ねその地域の中心地に設置されることが多く、広い敷地を持つことから閉校になるとポッカリと中心部が空洞化してしまうことからか、他の施設に転身することによりコミュニティスペースとして活性化させる取り組みが各地で行われており、例えばホテル・レストラン・カフェ・ギャラリー等に改造して活用されています。吉本興業東京本部になった四谷第五小学校のような珍しいパターンもありますが、比較的ギャラリーに使われることが多いらしく、有名なところでは京都芸術センターになった明倫小学校や、京都国際マンガミュージアムになった龍池小学校あたりが成功しているケース。北海道の美唄市郊外にある「アルテピアッツァ美唄」も閉校になった市立栄小学校を転用したギャラリーで、地元のNPO法人が管理運営して公開しています。

 

 美唄は典型的な炭鉱町で、石炭採掘全盛期には大いに繁栄しましたが、高度経済成長期以後の石油へのエネルギー転換により一気に没落し、過疎化に拍車がかかって寂れに寂れまくった哀しい町。富良野へ抜ける街外れの山間にあった三菱美唄炭鉱も1972年(昭和47年)4月に閉山となり、近所にあった坑夫達の住宅街も廃れてしまって、子供達の通った栄小学校も1981年(昭和56年)に閉校してしまいました。10年後の1991年になってNPO法人が立ち上がり、この閉校した栄小学校を文化的なイベントスペースとして再利用することになり、校舎や体育館・校庭でそれぞれギャラリー・コンサート・劇場・講演会等が開催されて、地域再生のシンボル的な存在として活躍しています。古い木造の校舎の1階は現在も幼稚園として活躍中。

 

 

 この施設の運用に当初から大きく係わっているのが、美唄出身の世界的な彫刻家安田侃氏。侃氏は現在もイタリア在住なのですが、この「アルテピアッツァ美唄」もイタリア語で「芸術広場」を意味するそうで、イタリアでは市民同士が憩う場として必ず町の中心に広場を設けることから、この旧栄小学校も同様に人と人を繋ぐコミニュケーションの場として使われることを望んで命名されたようです。校舎内の教室や廊下・階段の踊場等に侃氏の抽象的でユニークな形状の作品が配置されていて、ノスタルジックな建物に意外とマッチ。作品は白大理石とブロンズから出来ているのですが、何故か卵型とアーチ型が多く、どこか母胎回帰的な生命感が感じられます。ちなみに作品は接触可能。教室の一室では体験工房として毎月「こころを彫る授業」を開催しており、侃氏の指導の下に参加者が石造彫刻を行っていますが、一種のリラクゼーションのような時間でもあるようです。

 

 

 体育館の内部にも大きな卵形のオブジェが展示されています。ここでは講演会やコンサートも開催されているようです。

 

 校庭には芝生が敷かれており、おまけに周囲は山で起伏の無いなだらかな土地からか、まるでゴルフ場のフェアウェイのようです。あちらこちらに侃氏の作品が置かれていますが、特に白大理石によるプールや流水が校舎前にあり、夏場になるとここで親子連れが水遊びに興じていたりします。こんなところも肩を張らずにゆったりと親しんで欲しいという侃氏の考えなのかもしれません。

 

  

 この校庭から一段上がった丘の上にカフェがあります。周囲は森に囲まれたロッジ風の建物で、天井は高く窓から森から抜ける風が清々しい空間。水出しコーヒーがお薦め。

 



 「アルテピアッツァ美唄」
   〒072-0831 北海道美唄市落合町栄町
   電話番号 0126-63-3137
   開館時間 AM9:00〜PM5:00
   休館日 火曜日 祝日の翌日(日曜日を除く) 12月31日〜1月5日