○ながさき平和委員会 情報開示請求文書第64号
 開示までの経過


長崎空港(A地区)
航空機騒音実態調査結果
概要

1.調査目的

 本調査は、長崎県による航空機騒音測定において環境基準(75WECPNL:地域類型II)を超える騒音が測定された長崎空港A滑走路周辺地域について、空港の設置管理者として、航空騒音の実態把握を目的に測定及び解析を実施したものである。

2.調査の概要

 2-1 調査の概要

 本調査は、航空機騒音に係る県境基準に照らして、A滑走路周辺地域における騒音暴露量の評価及び影響範囲の把握を行うため、長崎空港A滑走路に離着陸する全ての航空機の騒音を測定し、各測定地点毎(16ヶ所)の機種別、飛行形態別にデータを集計・整理し、各機材のパワー平均を求め、調査期間中におけるWECPNLを算出するとともに同空港(滑走路)の年間の運行状況に即したWENPNL(以後、年間平均WECPNLという。)を算出した。

 2-2 調査日程

 現地調査は、各季節毎に連続7日間ないし連続3日間の測定を行った。その日程は以下のとおりである。
各回の現地測定時間
現地調査 測定準備 騒音測定
1回目 平成13年11月05日 平成13年11月06日(火)00:00〜12日(月)24:00
2回目 平成14年02月18日 平成14年02月19日(火)00:00〜25日(月)24:00
3回目 平成14年06月03日 平成14年06月04日(火)00:00〜10日(月)24:00
4回目 平成14年09月24日 平成14年09月25日(火)00:00〜27日(金)24:00
測定準備‥‥測定点の確認、測定手順の打ち合わせ、測定機器の点検及び校正を行い、測定地点に機器を設置。

 2-3 測定地点

 測定地点は、長崎空港A滑走路東側(滑走路から約100mから300m、滑走路の南端より北へ約300mから1,000mの範囲)の16ヶ所(うち1ヶ所(測定地点3)は、防衛庁測定データを利用)である。
 それらの測定地点の所在と滑走路36端を基準とする位置関係を表1に、滑走路及び測定地点の配置を図1に示す。

 2-4 調査項目

 長崎空港A滑走路に離着陸する全ての航空機の騒音を全16ヶ所(うち1ヶ所(測定点3)は防衛施設庁が測定)の調査地点で、有人または無人測定により終日の騒音データが得られる体制で、1回から3回目の実測調査は連続7日間、4回目の実測調査は連続3日間の測定を行い、(1)〜(5)の項目について観測・整理を行った。
(1) 運行状況
 1.年間の運航状況
 平成13年1月1日〜同年12月31日の1年間におけるA滑走路使用の各運航機材について使用滑走路別、運航形態(離陸、着陸および訓練等)別及び時間帯別における運航回数を整理した。
 2.実測調査期間の運航状況
 各回の測定期間中の運航状況については、防衛庁提供情報を含む運航情報を基に、測定日毎の機種別、使用滑走路別、運航形態(離陸、着陸および訓練等)別及び時間帯別における運航回数を整理した。
(2) 暗騒音
 各回毎に測定地点毎、測定日毎に、航空機の運航のない任意の時間の平均的な騒音レベルを朝、昼、夜に分けて読み取り整理した。
(3) 航空機騒音
 航空機騒音は、1回の飛行毎に最大騒音レベルを読み取り、測定地点毎、測定日毎に下記の項目を算出するとともに全測定日期間のデータについても算出した。
 1.全測定データについての最大騒音レベルのパワー平均値及び測定データ数
 2.機種別、飛行方向別、離着陸別に整理したデータについての最大騒音レベルのパワー平均値
(4) WECPNL値
 1.実測WECPNL
 上記(3)1.より、実測調査期間における実測WECPNLを算出した。
2.年間平均WECPNL
 平成13年の年間運航状況、上記(3)2.より得られた機種別運航形態別騒音レベル(実測期間に運航がなかったものは類似機種のものを代用)等により、年間平均のWECPNLを算出した。日平均運航回数は、平成13年の一年間におけるA滑走路使用の運航回数を年日数(365日)で除したものを用いた。
(5) 航空機騒音の影響及び範囲
 実測WECPNL及び年間平均WECPNLを基にコンター図を描いた。
表1 測定地点一覧表
測定
地点
測定場所 R/W36端からの距離
X(m) Y(m)
1 大村入国管理センター 331 -100
2 濱崎宅裏畑 497 -103
3 (防衛庁データ) 675 -85
4 阿部宅北畑 913 -90
5 西久保運送(株)跡地フェンス沿い 960 -160
6 高尾宅西ビニールハウス横畑 793 -172
7 柴田神社前畑 552 -102
8 松本宅横畑 470 -210
9 川村宅横畑 678 -198
10 中嶋宅横畑 913 -215
11 航空局用地(テニスコート横) 1,020 -247
12 高尾宅東畑 826 -260
13 田添宅西畑 735 -278
14 田崎宅東畑横路上 570 -246
15 ガソリンスタンド裏畑 452 -278
16 トヨタレンタリース駐車場横畑 395 -247
X(m):滑走路36端を起点とし、北側方向を“+”とした距離     
Y(m):滑走路36端を起点とし、西側(B滑走路)方向を“+”とした距離

3.調査結果

 3-1 実測WECPNL

 表2は、全実測調査期間中における実測WECPNLの算出結果を示したものである。表中には、WECPNLの他、最大騒音レベルのパワー平均値及び時間帯別の騒音発生回数が示されている。
 図2は、全実測調査期間における各測定地点の実測WECPNL値を地図上に示したものである。
 滑走路横方向105m以内の地点(地点1,2,3,4及び7)でWECPNL75を超えており、最もWECPNLの大きかった地点は滑走路中央付近の地点3でWECPNL79.2であった。
 また、滑走路横方向215m以内の地点(地点5,6,8,9,10)及び地点11(滑走路北側で滑走路横方向247m)でWECPNL70を超えていた。
 図3は、全実測調査期間における実測WECPNLの騒音コンターを示したものである。
表2 調査期間のWECPNL(実測)
測定
地点
WECPNL [dB(A)] 測定回数
N2 N3 N1+4
1 78.0 83.9 99.2 6.8 0.8 106.8
2 76.6 82.6 98.6 6.8 0.9 106.2
3 79.2 86.1 79.3 5.2 0.8 85.3
4 77.2 82.3 120.5 8.1 0.9 129.5
5 73.8 79.6 101.0 7.3 0.9 109.2
6 72.0 78.2 95.8 6.5 0.8 103.1
7 76.8 82.6 102.6 7.4 0.8 110.8
8 70.9 77.3 90.1 6.4 0.7 97.2
9 70.5 76.8 94.1 6.2 0.8 101.1
10 71.1 77.3 95.5 6.5 0.7 102.6
11 70.5 74.1 119.0 14.0 0.0 133.0
12 69.1 75.8 85.2 6.1 0.8 92.0
13 66.6 74.2 70.6 4.1 0.4 75.1
14 69.5 76.1 86.1 6.3 0.7 93.1
15 67.8 74.6 83.4 5.8 0.5 89.6
16 68.7 75.6 80.4 5.9 0.5 86.9
33 79.4 85.2 106.8 7.3 0.6 114.7

図2は省略

 3-2 年間平均WECPNL

 表3は、年間平均WECPNLの算出結果を示したものである。
 図4は、同結果を地図上に示したものである。
 実測WECPNLと同様に、滑走路横方向105m以内の地点(地点1,2,3,4及び7)でWECPNL75を超えており、最もWECPNLの大きかった地点は滑走路中央地点の地点3でWECPNL78.9となり、実測WECPNLと同様の結果であった。
 また、滑走路横方向215m以内の地点(地点5,6,8,9,10)及び地点11(滑走路北側で滑走路横方向247m)でWECPNL70を超えており、実測WECPNLと同様の結果であった。
 図5は、年間平均WECPNLの結果から求めた騒音コンターを示したものである。年間平均WECPNLと全長期間における実測WECPNLの騒音コンターに大きな違いは見られなかった。
表3 年間平均WECPNLの結果
測定
地点
WECPNL パワー平均
[dB(A)]
測定回数
N2 N3 N1+4
1 77.5 83.9 97.4 4.0 0.4 101.8
2 76.3 82.6 99.7 4.4 0.4 104.6
3 78.9 86.3 78.8 3.3 0.3 82.5
4 77.0 82.5 121.9 5.2 0.5 127.7
5 73.6 79.9 101.1 4.0 0.4 105.5
6 71.9 78.3 97.8 4.0 0.4 102.2
7 76.5 82.6 103.0 4.6 0.5 108.0
8 70.4 77.2 91.1 3.9 0.4 95.4
9 70.3 76.8 95.1 4.0 0.4 99.6
10 71.0 77.5 96.5 3.9 0.4 100.8
11 70.3 77.6 81.5 2.8 0.3 84.6
12 69.0 75.9 87.7 3.7 0.4 91.7
13 66.5 74.3 71.9 2.7 0.3 74.9
14 68.5 76.0 75.4 3.5 0.3 79.2
15 67.4 74.6 83.9 3.3 0.3 87.6
16 68.4 75.6 81.2 3.4 0.3 84.9
33 78.8 85.3 94.8 4.3 0.4 99.6

図4は省略

 3-3 運航状況

3-3-1 年間の運航状況
 平成13年1月1日〜同年12月31日の一年間におけるA滑走路使用の各運航機材を運航形態(離陸、着陸及び訓練等)別に整理し、表4に防衛機材と民間機材の運航回数および運航比率を示した。
・防衛庁機の離着陸の運航比率は71%、訓練は97%で、訓練を含めた運航比率は84%であった。
・一日の運航回数は、年日数(365日)で除した日平均で、防衛庁機が57.5回、民間機11.3回の68.8回であった。

表4 長崎空港A滑走路の防衛機材と民間機材の運航回数と運航比率
項 目 防衛/民間 離陸 着陸 T/G(訓練) 合計
運航回数
上段:年間運航機数
下段:日平均運航機数
防衛 4507 4622 11851 20980
12.3 12.7 32.5 57.5
民間 1839 1844 423 4106
5.0 5.1 1.2 11.3
運航比率(%) 防衛 71.0 71.5 96.6 83.6
民間 29.0 28.5 3.4 16.4
 日平均運航機数は365日で除した。 平成13年1月1日〜12月31日
3-3-2 年間の運航状況と実測期間中の運航状況
 表5に、平成13年実績の運航回数と測定期間中の運航状況を示した。
 日平均運航回数・形態別運航比率(表5(a))について、全測定期間の平均と年間実績を比べると両者に大きな差は無かった。
 また、滑走路使用状況(表5(b))についても、全測定期間の平均は、年間実績と大きな差は無かった。
表5 測定期間中及び平成13年実績の運航状況
(a) 日平均運航回数・形態別運航比率
   項目
期間
日平均運航回数 形態別運航比率(%)
離陸 着陸 訓練 離陸 着陸 訓練
平成13年実績 17.4 17.7 33.6 68.8 25.3 25.8 48.9
全測定期間 17.6 18.5 32.8 68.9 25.5 26.8 47.6
第1回測定期間 15.4 15.6 17.3 48.3 32.0 32.2 35.8
第2回測定期間 14.4 14.3 18.9 47.6 30.3 30.0 39.6
第3回測定期間 21.0 23.4 49.1 93.5 22.4 25.0 52.5
第4回測定期間 22.0 23.7 63.7 109.4 20.1 21.6 58.2

(b) 滑走路使用割合 (%)
   項目
期間
離陸 着陸 訓練
18 36 18 36 18 36 18 36
平成13年実績 29.1 70.9 26.3 73.7 26.6 73.4 27.2 72.8
全測定期間 28.2 71.8 18.9 81.1 17.6 82.4 21.1 78.9
第1回測定期間 22.2 77.8 15.6 84.4 10.7 89.3 16.3 83.7
第2回測定期間 34.7 65.3 25.0 75.0 26.5 73.5 28.0 72.0
第3回測定期間 25.9 74.1 18.9 81.1 15.7 84.3 19.3 80.7
第4回測定期間 33.3 66.7 15.5 84.5 19.4 80.6 21.3 78.7

 3-4 まとめ

 平成13年11月から14年9月にかけて長崎空港A滑走路東側地域の計16ヶ所の地点で騒音レベル等の現地測定を実施した。実測期間および年間の運航状況等の調査及びデータ解析を行い、測定地点毎に全実測調査期間の実測WECPNL及び年間平均WECPNLを算出し、これを基にコンター図を作成した。
 全実測調査期間における実測WECPNLは、滑走路横方向105m以内の測定地点(地点1,2,3,4及び7)でWECPNL75を超えており、最もWECPNLの大きかった地点は滑走路中央付近の地点3でWECPNL79.2であった。
 また平成13年の運航実績および全実測期間における機種別運航形態別騒音レベル等の測定結果から求めた年間平均のWECPNLは、調査期間の実測WECPNLと同様に、滑走路横方向105m以内の測定地点(地点1,2,3,4及び7)でWECPNL75を超えており、最もWECPNLの大きかった地点は滑走路中央付近の地点3でWECPNL78.9であった。また、実測調査期間のWECPNLとの差は-0.1〜-1.0(平均-0.3)であり、大きな差は見られなかった。
 なお、実測調査期間中の日平均運航回数は、平成13年実績運航の年日数(365日)で除した日平均運航回数と大きな違いがなく、滑走路使用割合についても、平成13年実績と実測期間中との差が9%以内と大きな違いがなかった。

WECPNL(加重等価平均感覚騒音レベル)の算出方法

WECPNL(W値)は日本の航空機騒音の評価方法であり、
          一日あたりの騒音の総量を指数化したもの

WECPNL=dB(A)+10logNー27
     N=N2+3N3+10(N1+N4

dB(A) 一日の間の航空機の離陸又は着陸に伴う騒音の
それぞれの最大値をパワー平均して得た値
(A)は騒音計のA特性を使用することを表す
N1  0− 7時の騒音の発生回数
N2  7−19時の騒音の発生回数
N3 19−22時の騒音の発生回数
N4 22−24時の騒音の発生回数

騒音コンター 同じ騒音レベル(W値70、W値75など)の地点を結んで地上に示したもの
平和委員会注:
 航空機騒音の環境基準では、測定結果を WECPNL で評価することになっている。
 WECPNL = Weighted Equivalent Continuous Perceived Noise Level )とは、長期間連続して航空機による騒音にさらされたときの騒音レベルの評価指標。
 同じ大きさの音でも、人が感じる「うるささ」は時間帯によって異なる。発生した航空機の発着回数に、3つの時間帯別に定めた重みづけ係数(日中は1、夕方は3、夜間は10)をかけることにより、人への影響が大きい夜間の騒音が日中よりも大きく評価されるように補正したもの。
 航空機騒音の環境基準は、主として住居地域の場合は、70 WECPNLだが、長崎空港A滑走路周辺は地域類型IIに指定され、75 WECPNLとなっている。