これが機密電報

ムーラー第七艦隊司令官の電報の全訳(新原昭治訳)
【一九六三年三月二九日発、トマス・ムーラー司令官からジョン・サイズ太平洋艦隊司令官、ならびに(参考情報として)C・D・グリフイン海軍作戦部長代理にあてて送られた電報。秘密区分は機密(トップシークレット)】

  1. 関連文書Aで論じられている問題を、私は見守ってきているし、すべての側面に関して在日米軍司令官や在日米海軍司令官と密接な連携をとっている。新聞の論評や衆参両院での委員会審議、大使館が作成した一連の表明についての概観にもとづく私の観察からすると、私は現在展開中の状況についていくらかもっとら区間的な見方をとる方にかけたい。
  2. 何よりもまず、政府を代表するトップレベルの人間、とくに軍の指導者が、それなりの事情通の人間ならそれから事実を導き出すことになりそうな『ジエーン海軍年鑑』や『USニューズ・アンド・ワールド・レポート』誌、その他の刊行物に載っている事実や情報を知らないなどとは、ほとんど信じられない。そのことは、衆参両院の委員会で質問にたった野党議員たちが、かなりポイントを突いた質問をおこなっていることからも、きわめて明白だ。
    おそらく日本政府の指導者らも、野党と同様、情報に通じているのだ。たいへん目立つことは、三月初めの質問が真相をつく性格のものであったにもかかわらず、新聞がこれまでのところ、この問題(核兵器の持ち込み)に焦点をあてる集中的な扱いをやっていないことである。
  3. さらにこの期間、新聞の論評は、攻撃型原潜(SSN)それ自体やその本質的な面についての論議から、事故のさいの法的義務という特定の論議へと論点を移した。この強調点の変化は、世間の注目を原爆恐怖症から他に移し変えさせた。それに付け加えて、新聞記事のなかには、核時代のバスに乗り遅れると日本人をたしなめるものもでている。概して、新聞の論評は、われわれの誰もが六ヶ月前に想定したほど敵対的ではなくなった。
  4. 国会は、五月半ばあたりに閉会するとみられている。昨日、中山提督が私に個人的に、池田は七月に新内閣を組閣するとの情報を伝えてくれた。志賀は、新内閣には入閣しないものと予想される。彼は、国会でおこなった言明に対する詰問をうけて、もはや公的な役割を果たし得ないだろう。
  5. 最初の原子力潜水艦が寄港したらすぐに、当初の騒乱が収まった後、原潜寄港は現実として受け入れられるだろうし、この問題全体が次第に背景に退くだろうと私は考える。私は、日本人の気性や政治的雰囲気について、大使ほどうまく推し量れる資格があるとは思っていないが、われわれは、関連文書Aの第一案を堅持すべきであり、第二案でほのめかされているような直接の接触をとることによってボートを揺り動かすようなことはすべきでないというのが、私の意見だ。日本人はリアリストである。私は、日本の指導者たちは現実を知っており、この問題を彼らの問題として見なしていると確信する。この想定が正しければ、われわれは接触するすることによって得るべきものは何もなく、恐らくわれわれ自身にとって余計なごたごたを引き起こすだけだろう。しかし、もしほんとうに情勢が激発した場合に、日本寄港の否認によっておこりうるかもしれない諸問題について、われわれは検討中である。私のさしあたっての考えは、若干の大型艦船の寄港や航海中の修理のためにはグアムをもっと多く活用するとともに、若干の上陸作戦用艦船を佐世保と横須賀に移動させ他の艦船がスービックの工業的能力をもっと利用できるようにしなければならないだろうというものである。沖縄はもちろん、兵站支援が弱体で欠けているために、支援を必要としない短期の整備作業や休息のための寄港は別として、あまり役に立たない。グアムとスービックは、熟練要員のすみやかな補強が必要となろう。
  6. 核を積んだ空母やその他の艦船は、長期本格補修や大規模緊急修理の目的のための佐世保と横須賀への寄港だけが計画されることになろう。これには荷下ろしがもちろん必要になるだろうし、われわれはこの問題を検討中である。
  7. とりあえずの大まかな見積もりでは、弾薬補給艦(AE)一隻を含む支援を受けたもう一隻の空母を第七艦隊に配備することによって、数ヶ月間は、戦略核攻撃計画(SIOP)の最低限を、つまりその格下げなしでうまくやれるだろう。長期的にみれば、兵站構造の完全な再編ならびに戦力水準の増強が必要となろう。研究が完成次第、より決定的な措置を届けるつもりである。
  8. サイズ提督へ。フエルト提督に上げるよう勧告したい。