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長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地での対戦車ヘリコプター
AH−1S(コブラ)の墜落事故等に関する質問主意書・答弁書

平成十七年十月七日提出
質問第一一号

長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地での対戦車ヘリコプターAH−1S(コブラ)の墜落事故等に関する質問主意書

提出者 赤嶺政賢

長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地での対戦車ヘリコプターAH−1S(コブラ)の墜落事故等に関する質問主意書

 去る九月十八日、長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地の創立五十周年記念行事「西海ふれあいフェスタ2005」のイベントで、公開の「模擬戦闘訓練」に参加していた対戦車ヘリコプターAH−1S(コブラ)(以下「AH−1S」という。)一機が墜落した。

 この日は、一般市民約二二〇〇人の観客が見学しており、墜落現場から観客席まではわずか一〇〇メートル先で、破片が飛び散るなど、あわや大惨事の事故に現場にいた市民からは、恐怖と怒りの声があがった。

 十月三日には、仁比聡平参議院議員、山下千秋佐世保市議会議員ら一一名の調査団は、事故現場を視察し、同駐屯地の大塚敏郎司令から説明を受けた。

 調査団は、今回の事故について、単に偶発的なものではなく墜落の危険性を孕んだ戦技訓練であり、大惨事に繋がりかねないものであるとの認識を強くしたところである。

 そもそもAH−1Sの実戦を想定した戦技訓練は、極めて高度な技量を要すると聞いている。

 こうした戦技訓練が、市民に公開して行なわれること自体問題であるが、同駐屯地をはじめとする自衛隊基地やその周辺の九州の山間地域で、昼夜を問わず日常的に行なわれているということが明らかにされた。これらの事態は住民の生命と安全にとって重大な問題である。

 また九月十七日に、西部方面普通科連隊が、佐世保市内の商店街を戦闘服で小銃、機関銃を携行して行進したことは、市民感情を無視した威圧、異様な行動と断ぜざるを得ない。

 従って、以下の事項について質問したい

一 陸上自衛隊相浦駐屯地でのAH−1Sの墜落について

  1.  陸上自衛隊相浦駐屯地創立五十周年記念のイベントで、公開の「模擬戦闘訓練」中のAH−1Sが墜落した事故は観客の目前で起きた。燃料への引火による爆発、炎上という最悪の事態の可能性もあったのではないのか。
  2.  「模擬戦闘訓練」時に、AH−1Sは、地表から七メートル以下の超低空で飛行し、急旋回する際に地面にローターが接触墜落したというが、事故原因については、機器の不具合によるというよりも、人為的ミスによる可能性が高いという判断をしているのではないのか。
  3.  AH−1Sの飛行訓練については、各部隊長の判断で見合わせるとしているが、事故調査報告書が公表されるまでの間ということか、それとも事故報告書がでる前に、飛行を再開するということがありうるのか。
  4.  陸上幕僚監部に事故調査委員会が設置されたというが、どのようなメンバーで構成されているのか明らかにされたい。事故直後からこれまで、事故調査委員会としてどのような調査をしたのか、また事故調査報告書は、いつまでにまとめ公表されるのか。
  5.  陸上自衛隊にAH−1Sが導入されて以降、墜落事故等の発生件数及び事故の概要と原因について明らかにされたい。
  6.  相浦駐屯地で行なわれた「模擬戦闘訓練」は、どのような性格と内容の訓練なのか。また、いかなる想定のもとに行なわれたのか。レンジャー部隊、小銃小隊、戦車、榴弾砲、迫撃砲、ヘリコプター等が参加して実施したというが、参加部隊等の規模を含めて明らかにされたい。
     このような訓練を一般市民に公開して行なう目的はどこにあるのか。
  7.  相浦駐屯地においては、これまでも「模擬戦闘訓練」を公開して行なってきたとのことであるが、いつからどのような規模の訓練を行なってきたのか、その経緯と訓練の概要について伺いたい。その際、AH?1Sは常に参加したのか。
  8.  陸上自衛隊の駐屯地で、創立記念日に、このような公開の「模擬戦闘訓練」を行なっているところがあるのか、あれば明らかにされたい。
  9.  墜落したAH−1Sは、佐賀県の目達原駐屯地所属の第三対戦車ヘリコプター隊第二飛行隊所属である。AH−1Sは全国に八五機配備しているというが、この際、部隊名及び所在地と保有数を明らかにされたい。
  10.  AH−1Sの戦技訓練は、相浦駐屯地及びその周辺の山間部や他の自衛隊の駐屯地、九州の山間部で昼夜を問わず、日常的に行なっているというが、九州地方では、相浦駐屯地以外、どこの駐屯地で行なっているのか、また、それはどのような訓練なのか。
  11.  自衛隊は一部を除き航空法が適用されると考えるが、こうした訓練を行なう場合には、国土交通大臣の許可をどのように得て実施しているのか。

二 西部方面普通科連隊について

  1.  西部方面普通科連隊の二四〇名が、相浦駐屯地創立五十周年記念行事を名目として佐世保市内の商店街を武装して行進しているが、どこからの要請にもとづくものか、地方自治体等の了承をとったのか明らかにされたい。
  2.  商店街で戦闘服を着用し、武装して行進するなどというのは初めてのことではないのか、その目的と理由は何か。
     こうした行動が市民に対して威圧し誇示するものであり、異様な行動であるとの認識はないのか、今後は中止すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。
  3.  商店街を武装した部隊が行進するなどという例は全国的にあるのか、あるというならそれを明らかにすべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。
  4.  二〇〇二年三月に全国で初めて、相浦駐屯地に創設された西部方面普通科連隊(六六〇人)はレンジャー部隊を中心とする特殊作戦を行なう部隊であるといわれているが、この部隊の性格と任務等、その全容を明らかにされたい。
  5.  西部方面総監(熊本)の直轄部隊といわれ、我が国の島のあるところで他国に面している有人島の九〇パーセントが九州、沖縄地方に所在しており、これらの島嶼地域での事態に迅速に対処するためといわれているが、具体的に説明されたい。
  6.  「防衛力のあり方検討会議」(平成十六年十一月)によれば、「南西諸島の防衛体勢強化の観点から、第一混成団を旅団に改編する。同時に、軽装甲機動車を増強するなどして機動力の向上を図る。また、島嶼部への侵略等の際に機動的に展開する部隊として西部方面普通科連隊を保持するとともに、島嶼部の情報収集・処理能力を向上させる」としている。西部方面普通科連隊は、島嶼部への侵略等への対処とあるが、どのような侵略等の事態を想定しているのか。
  7.  来年度、防衛庁長官の直轄下に陸上自衛隊中央即応集団が新編され、中央即応集団の司令部の下に特殊作戦群が置かれることになるが、この特殊作戦群には、西部方面普通科連隊が傘下に入ることになるのか、また中央即応集団の組織の性格及び特殊作戦群の任務を明らかにされたい。

 右質問する。


 平成十七年十月十八日受領
答弁第一一号

  内閣衆質一六三第一一号
  平成十七年十月十八日

内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員赤嶺政賢君提出長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地での対戦車ヘリコプターAH−1S(コブラ)の墜落事故等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員赤嶺政賢君提出長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地での対戦車ヘリコプターAH−1S(コブラ)の墜落事故等に関する質問に対する答弁書

一の1について
対戦車ヘリコプターAH−1S(以下「AH−1S」という。)の燃料タンクは、耐衝撃性を有しており、御指摘の事故(以下「本件事故」という。)におけるような衝撃により、火災等を発生させる可能性は極めて小さいと考える。
一の2について
事故原因については、現在、陸上自衛隊の航空事故調査委員会(以下「委員会」という。)において調査中であり、その特定には至っていない。
一の3について
事故原因については、委員会において調査中であるが、これまでの調査において、機体及びエンジンに異常が見られなかったことから、飛行の安全確保のための処置を行った上で、本年十月十二日からAH−1Sの飛行を再開した。
一の4について
本件事故の調査に携わっている委員会の委員等の構成は、陸上幕僚副長を委員長とし、副委員長二名、陸幕委員八名、部隊等委員一名及び副委員二十四名である。
委員会においては、事故直後からこれまで、気象及び地形の調査、関係者からの事故状況等の聴取、関係資料の収集、航空機の破損状況の調査等を行っている。
航空事故調査報告書は、平成十八年一月十七日までに陸上幕僚長から防衛庁長官に提出される予定であり、その後、その概要について公表する予定である。
一の5について
本年十月十二日までの間に発生した陸上自衛隊のAH?1Sに係る事故(人員の死亡若しくは重傷又は機体の破壊若しくは大破を伴ったものに限る。)は、六件であり、その概要及び原因は、別表のとおりである。
一の6について
御指摘の模擬戦闘訓練は、軽易な敵陣地に対する攻撃の展示として、情報部隊の進入及び偵察、レンジャー隊の空路進入、対機甲戦闘、突撃支援射撃、普通科部隊の突撃等により目標を奪取する想定で実施されたものである。また、模擬戦実施部隊は、人員百四十八名の規模で、レンジャー隊、攻撃部隊、対戦車小隊、迫撃砲班、FH−70(りゅう弾砲)班、回転翼航空機から成る航空班、会場安全班等から構成されていた。
右模擬戦闘訓練は、地域住民に陸上自衛隊に対する認識と理解を深めてもらう目的で実施された。
一の7について
相浦駐屯地の駐屯地創立記念日における模擬戦闘訓練については、少なくとも平成十四年度以降、軽易な敵陣地に対する攻撃の展示として、今回と同程度の規模及び内容で実施されている。
平成十四年度以降の模擬戦闘訓練において、AH−1Sについては、常に参加しているわけではない。
一の8について
平成十六年度においては、模擬戦闘訓練が八十一の駐屯地で創立記念日の行事として実施された。
一の9について
AH−1Sは、北部方面航空隊第一対戦車ヘリコプター隊(北海道帯広市)、東北方面航空隊第二対戦車ヘリコプター隊(青森県八戸市)、東部方面航空隊第四対戦車ヘリコプター隊(千葉県木更津市)、中部方面航空隊第五対戦車ヘリコプター隊(三重県度会郡小俣町)及び西部方面航空隊第三対戦車ヘリコプター隊(佐賀県神埼郡三田川町)、陸上自衛隊航空学校(三重県度会郡小俣町)及び同分校(茨城県土浦市)並びに教育支援飛行隊(三重県度会郡小俣町)に合計八十五機配備している。
一の10について
九州では、目達原駐屯地において、AH?1Sの戦技操縦訓練として、超低空における操作及び緊急操作の訓練を実施している。
一の11について
AH−1Sが戦技操縦訓練を実施する際に、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第八十一条に規定する国土交通省令で定める高度以下の高度での飛行を行おうとする場合においては、夜間において当該飛行を行おうとするときは、陸上幕僚長が当該飛行を行おうとする場所を管轄区域とする地方航空局長から、昼間において当該飛行を行おうとするときは、当該AH−1Sを装備する陸上自衛隊の部隊等の長が当該飛行を行おうとする場所を管轄区域とする空港事務所長から、それぞれ許可を得ているところである。
二の1について
御指摘の商店街におけるパレードについては、佐世保自衛隊後援会長からの要望を受けて、相浦駐屯地において検討してその実施を決め、佐世保市、佐世保警察署及び地元商店街の了承等を得て実施した。
二の2について
西部方面普通科連隊が、相浦駐屯地創立記念日の行事の一環として、商店街において戦闘服を着用し、小銃及び機関拳銃を携行して行進したのは、今回が初めてである。
今回のパレードは、相浦駐屯地創立五十周年記念行事の一環として、佐世保市民の自衛隊に対する一層の理解と信頼を獲得することを目的に実施したものである。
今回のパレードについては、佐世保市等の理解と協力を得て実施しており、御指摘のような「市民に対して威圧し誇示するもの」ではないと考えており、今後とも地元関係者の理解と協力を得た上で実施してまいりたい。
二の3について
平成十六年九月及び本年九月に、陸上自衛隊第三十九普通科連隊が武器を携行し、青森県弘前市内の商店街を行進した例がある。
二の4から6までについて
西部方面普通科連隊は、平成十四年三月、ゲリラや特殊部隊によるものを含む島嶼部における侵略等に対して迅速かつ機動的に展開して対処する能力の充実及び強化を図るため、相浦駐屯地に西部方面総監の直轄部隊として新編された約六百四十名の部隊であり、ヘリコプターに搭載可能な装備品を保有し、同部隊の一部はレンジャー課程を修了した隊員から構成されている。
二の7について
中央即応集団は、ゲリラや特殊部隊による攻撃等の事態が発生した場合に事態の拡大防止等を図り、及び国際的な安全保障環境を改善するために国際社会が協力して行う活動に主体的かつ積極的に取り組むため、新編することとしている部隊である。特殊作戦群は、主としてゲリラや特殊部隊による攻撃等の事態に対処する部隊であり、新編する中央即応集団の隷下に置くこととしている。
西部方面普通科連隊を特殊作戦群の隷下に置くことは考えていない。