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長崎県佐世保市で発生した米軍人による業務上過失傷害被疑事件に関する質問主意書・答弁書

平成十七年六月二十九日提出
質問第九三号

長崎県佐世保市で発生した米軍人による業務上過失傷害事件に関する質問主意書

提出者  照屋寛徳

長崎県佐世保市で発生した米軍人による業務上過失傷害事件に関する質問主意書

 政府は、私の平成十七年六月九日付の長崎県佐世保市で発生した米軍人による業務上過失傷害被疑事件に関する質問主意書(質問第七八号)に対し同年同月十七日付の答弁書を提出した。

 答弁書によると、事件の事実関係の詳細については、「捜査段階にある」との理由で具体的な答弁を差し控える等、私の質問主意書に対して十分な答弁になっていない。当該事件はすでに捜査が完了し略式裁判の請求によって公判そのものも終了したと報ぜられている。よって事件の真相を究明すべく再度質問主意書を提出する。

 よって以下、質問する。

一 当該事件の発生日時、被疑者名及び階級、被害者の負傷の部位程度、公務中か公務外かについては、すでに答弁書で明らかにされたが過失の内容、犯行態様については捜査中を理由に一切明らかにされていない。公判終了後の現段階においては具体的に明らかにすべきだと考えるが政府の見解を示されたい。

二 当該事件において現行犯逮捕をしたのは長崎県相浦警察署員か、米海軍の当局者か明らかにされたい。また米海軍当局者が現行犯逮捕したとする場合、具体的な逮捕執行者は誰か、その階級を含めて具体的に明らかにされたい。

三 答弁書記載の刑事裁判管轄権に関する事項についての日米合同委員会合意はいつ、合意に至ったのか、具体的に明らかにされたい。

四 過去において刑事裁判管轄権に関する事項についての日米合同委員会合意に基づいて「共同逮捕」した具体的な事例を明らかにし、各事例ごとに捜査がどのように実行され、裁判権が日米いずれの当局において、どのような根拠をもって行使されたのか明らかにされたい。

五 当該事件においては、被告米兵は呼気検査による飲酒検知を拒否し、事件後数日後に血液鑑定に応じたようだが、これら一連の被告人の行為は明らかに証拠隠滅行為にあたるのではないか政府の見解を示されたい。

 右質問する。


 平成十七年七月八日受領
答弁第九三号

  内閣衆質一六二第九三号
  平成十七年七月八日

内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 細田博之

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員照屋寛徳君提出長崎県佐世保市で発生した米軍人による業務上過失傷害事件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員照屋寛徳君提出長崎県佐世保市で発生した米軍人による業務上過失傷害事件に関する質問に対する答弁書

一について
 御指摘の事件については、平成十七年六月二十三日、佐世保簡易裁判所において、被告人を罰金刑に処するとの略式命令が発せられたと承知している。同裁判所において認定された事実の要旨は、被告人は、平成十七年六月三日午前零時三十分ころ、業務として普通乗用自動車を運転し、長崎県佐世保市内の道路を進行中、眠気を覚え、前方注視が困難な状態に陥ったのであるから、直ちに運転を中止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、漫然運転を継続した過失により、自車前方で信号待ちのため停止中の被害者運転の普通貨物自動車後部に自車前部を追突させて、同人に加療約一週間を要する傷害を負わせるとともに、同日時ころ、同市内の道路において、酒気を帯び、血液一ミリリットルにつき〇・三ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で、前記普通乗用自動車を運転したというものであると承知している。
二について
 御指摘の事件については、長崎県相浦警察署員が被疑者を現行犯逮捕したと承知している。
 また、長崎県に駐留するアメリカ合衆国海軍(以下「米海軍」という。)の法律執行員が日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)第十七条10(b)及び刑事裁判管轄権に関する事項についての日米合同委員会合意第8(1)により、同人を逮捕したと承知しているが、その法律執行員の氏名等については承知していない。
三について
 御指摘の日米合同委員会合意は、昭和二十八年十月二十二日に取りまとめられたものであり、日米地位協定第二十五条第一項に基づき設置される合同委員会において、日米地位協定の下でも効力を有することが確認されている。
四について
 御指摘の「共同逮捕」に係る事例を網羅的に把握しているものではないが、例えば、平成十三年六月二日に沖縄県国頭郡金武町で発生した住居侵入事件の被疑者である沖縄県に駐留するアメリカ合衆国海兵隊(以下「米海兵隊」という。)に所属する三等軍曹を、米海兵隊の法律執行員が日米地位協定第十七条10 (b)及び刑事裁判管轄権に関する事項についての日米合同委員会合意第8(1)により、逮捕した事例があると承知している。
 同事件については、沖縄県警察において、平成十三年六月二日、被疑者を現行犯逮捕した上、米海兵隊の当局の協力を得ながら、所要の捜査を遂げ、同月八日、那覇地方検察庁検察官に事件を送致し、那覇区検察庁検察官は、同月十八日、住居侵入の事実で那覇簡易裁判所に公訴を提起し、同日、同裁判所において、被告人を罰金刑に処するとの略式命令が発せられたと承知している。
 また、同事件については、日米地位協定第十七条の規定により、我が国の当局が裁判権を行使する第一次の権利を有しており、我が国の関係法令に基づき、裁判権を行使したと承知している。
五について
 御指摘の「証拠隠滅行為」の意義が必ずしも明らかではないが、御指摘の事件については、長崎県警察において、被疑者を現行犯逮捕するとともに、その後も米海軍の当局の協力を得ながら、所要の捜査を遂げ、一についてで述べたとおり、佐世保簡易裁判所において、酒気帯び運転の事実を含め略式命令が発せられており、被告人の行為により捜査に特段の支障は生じなかったものと承知している。