ホーム>関係資料
強襲揚陸艦「エセックス」に対して行った
護衛活動等に関する質問主意書・答弁書
平成十五年九月二十六日提出
質問第五号
海上自衛隊の護衛艦が米国の空母「キティホーク」及び強襲揚陸艦「エセックス」に対して行った護衛活動等に関する質問主意書
提出者 赤嶺政賢 小沢和秋
海上自衛隊の護衛艦が米国の空母「キティホーク」及び強襲揚陸艦「エセックス」に対して行った護衛活動等に関する質問主意書
二〇〇一年九月十一日、アメリカの同時多発テロの直後に、米国はアフガンに対して報復攻撃しタリバン政権を転覆したが、現在も戦闘行為を継続している。同年九月二十一日、米空母「キティホーク」は、戦闘作戦行動でペルシャ湾等に展開するために横須賀基地を出港した。また、米強襲揚陸艦「エセックス」も佐世保基地から出港した。その際に海上自衛隊の護衛艦が随伴し、護衛活動にあたったことが集団自衛権にあたるのではないかとの指摘がなされた。当時の中谷防衛庁長官は、海上自衛隊の護衛艦の行動が警戒監視であると述べ、山崎自民党幹事長は、米空母の護衛であることを認める発言をしている。
さらに、横須賀基地に停泊中の米空母周辺の海上自衛隊艦艇による警備活動、佐世保基地湾内での米揚陸艦「エセックス」の米警備艇に乗艦しての海上自衛隊員の警戒任務、テロ特別措置法成立前のインド洋への護衛艦派遣問題についても、この際、政府の見解を求めたい。
従って、次の事項について質問する。
一 米国の空母「キティホーク」、強襲揚陸艦「エセックス」の護衛について
- 米空母「キティホーク」、米強襲揚陸艦「エセックス」に随伴した艦艇名及びその任務は何か。
- 海上自衛隊の護衛艦は、米空母、米強襲揚陸艦にどの海域まで随伴したのか、公海上にもおよんだのか。
- 海上自衛隊の行動は、政府が説明するような、海上自衛隊の通常の「警戒監視の一環」などというようなものではないと考える。米空母、米強襲揚陸艦に随伴し、「警戒監視」にあたることは、米艦艇の警備、護衛活動ではないのか。
- 政府は、その法的根拠を防衛庁設置法第五条第十八号「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと。」に基づくとしているが、防衛庁の権限を規定した同条を根拠としうる法的理由を説明されたい。
二 米海軍佐世保基地所属の米警備艇に海上自衛隊員を乗艦させ、米兵とともに停泊中の米国の強襲揚陸艦「エセックス」周辺の警戒任務に就かせていたことについて
- 二〇〇一年九月下旬、海上自衛隊は、米海軍佐世保基地の米警備艇に海上自衛隊員を乗艦させ、米兵とともに停泊中の米揚陸艦「エセックス」周辺の警戒任務に就かせていたことが判明しているが、
詳細な事実関係及び何故米警備艇に乗艦させ警戒任務にあたらせたのか。これが、米側の要請によるものとすればどのレベルからの要請か。
- 海上幕僚監部は「自主的に乗艦した」と言っているようだが、海上自衛隊員のどのレベルの判断によるものか、また、米海軍のどのレベルに申し入れたのか。
- 九月二十日から二十二日まで、延べ二十八人の海上自衛隊員を、ローテーションを組んで、米警備艇に乗艦させたと聞いているが、三日間、海上自衛隊員何名が何の目的で何をしたのか、その実態を明らかにされたい。
- 海上自衛隊員の活動について、海上幕僚監部は「トラブル防止で警戒任務ではない」と説明しているが、テロ直後、在日米軍は厳戒態勢に入っており、佐世保基地の米海軍と海上自衛隊が共同で警戒任務に就いたということではないのか。
- 海上自衛隊員が米軍警備艇に乗艦して行動を共にしたということは、米軍の指揮下、管理下での任務遂行ではないのか。
- 今回、佐世保基地で海上自衛隊員が任務を遂行した同時期の九月二十一日、横須賀基地では、海上自衛隊の艦艇が出港中の米空母「キティホーク」周辺の警備活動を行ったと聞いているが、その活動の実態を明らかにされたい。
- 佐世保基地での海上自衛隊員の活動と横須賀基地での海上自衛隊の艦艇による警備活動は、いずれも海上自衛隊が組織的に実施したものではないのか。
- 海上幕僚監部は、「佐世保湾内での海上自衛隊の艦艇の安全航行を確保するための連絡が目的」だとして、「防衛庁設置法第五条第十八号に基づく」と説明している。
米揚陸艦の警戒任務に就いている米警備艇に、海上自衛隊員が乗艦し米兵とともに活動することが、どうして、「自衛艦の安全航行の確保」になるのか、また、その活動が防衛庁設置法第五条第十八号を根拠とすることができるのか、その理由は何か。
三 海上自衛隊の護衛艦のインド洋等派遣について
- 政府は、テロ対策特別措置法の成立前の二〇〇一年十一月九日、海上自衛隊の護衛艦三隻を佐世保基地からインド洋に向け出航させた。艦艇名、目的・任務、海域、寄港地を明らかにされたい。
- 海外派遣の法的根拠は何か。もし海外への派遣についても防衛庁設置法第五条第十八号を根拠とすることができるというなら、その法的理由を明確にされたい。
- 防衛庁設置法第五条第十八号の「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと。」という規定は包括的で極めて抽象的である。この場合の「必要な調査」「研究」とは何か。
これまで政府は、同条第十八号について、自衛隊の日本の領土、領海、領空での「情報」「警戒監視」活動などの根拠として説明してきたと思うが、同条項の有権的解釈を具体的な活動を列挙しつつ示されたい。
右質問する。
平成十五年十月十日受領
答弁第五号
内閣衆質一五七第五号
平成十五年十月十日
内閣総理大臣 小泉純一郎
衆議院議長 綿貫民輔 殿
衆議院議員赤嶺政賢君外一名提出海上自衛隊の護衛艦が米国の空母「キティホーク」及び強襲揚陸艦「エセックス」に対して行った護衛活動等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員赤嶺政賢君外一名提出海上自衛隊の護衛艦が米国の空母「キティホーク」及び強襲揚陸艦「エセックス」に対して行った護衛活動等に関する質問に対する答弁書
- 一の1から3までについて
- 自衛隊においては、平素から、我が国の安全に影響を与える事態又はその兆候を早期に把握するとの観点から警戒監視活動を行っており、御指摘の空母「キティホーク」及び強襲揚陸艦「エセックス」の出港に際しても、当時の国際情勢を踏まえ、公海上を含む我が国周辺の海空域について、
所要の警戒監視活動を行ったものであり、アメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)海軍の空母等の「警備、護衛活動」を行ったとの御指摘は当たらない。
お尋ねの艦艇名については、今後の警戒監視活動に支障を来すおそれがあることから、答弁を差し控えたい。
- 一の4について
- 国民の権利義務にかかわらない事実行為であって、強制力の行使を伴うようなものではない行為については、自衛隊も、防衛庁設置法(昭和二十九年法律第百六十四号)を根拠にこれを行うことができると解しているところである。
- 二の1から5までについて
- 平成十三年九月二十日から二十二日までの間、海上自衛隊佐世保地方隊の自衛隊員七名が、二班に分かれて六時間交代で合計四十八時間、恵美須湾内を航行する合衆国海軍の警戒用ボート等に乗艇したことは事実である。これは、当時、合衆国海軍が同月十一日に合衆国において発生したテロリストによる攻撃に対応し、厳しい警戒態勢をとっていた状況下において、恵美須湾内における海上自衛隊艦艇の円滑な活動を確保するため、英語による意思疎通が可能な隊員を合衆国海軍の警戒用ボート等に乗艇させ、「エセックス」周辺を航行する海上自衛隊の艦艇を識別して、当該艦艇が海上自衛隊のものであることを当該ボート等の乗員に知らせるとともに、「エセックス」に向かって航行する民間の船舶に対し、進路前方の艦艇が警戒態勢中の合衆国海軍の艦艇である旨注意を喚起し、もって湾内において前記海上自衛隊艦艇に関連する無用の混乱が発生することを未然に防止することに努めていたものである。これは、海上自衛隊佐世保地方総監の判断により、同地方総監部の防衛部長が合衆国海軍の佐世保基地隊司令に申し入れて行ったものであって、合衆国側の要請を受けて行ったものではなく、また、当該自衛隊員は、合衆国軍隊の指揮下又は管理下で任務を遂行したものではない。
右に述べたところに照らすと、合衆国海軍との間で「共同で警戒任務に就いた」との御指摘は当たらないと考える。
- 二の6について
- 「キティホーク」が横須賀を出港した際に自衛隊が行った活動は、一の1から3までについてで述べたとおり、我が国周辺海空域の警戒監視活動であるが、その具体的態様等については、今後の警戒監視活動に支障を来すおそれがあることから、答弁を差し控えたい。
- 二の7について
- 二の1から5までについて及び二の6についてで述べた活動は、いずれも海上自衛隊として任務を遂行したものである。
- 二の8について
- 二の1から5までについてで述べた活動は、恵美須湾内において無用の混乱が発生することにより海上自衛隊艦艇の教育訓練、燃料の補給等の活動の円滑な実施に支障が生じることを未然に防止するため、「所掌事務の遂行に必要な教育訓練に関すること」、「所掌事務に係る装備品、船舶、航空機及び食糧その他の需品の調達、補給及び管理並びに役務の調達に関すること」等の事務の一環として行ったものである。
- 三の1について
- 平成十三年十一月九日に佐世保を出港したお尋ねの艦艇は、護衛艦「きりさめ」、「くらま」及び補給艦「はまな」である。これらは、同月二日に施行された平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成十三年法律第百十三号)第三条第一項に規定される協力支援活動等(以下「協力支援活動等」という。)を実施する場合に必要となる情報を収集するため、派遣されたものであり、我が国からインド洋に至るまでの海域において情報収集活動を実施した。お尋ねの「寄港地」については、公にすることにより、今後、協力支援活動等を実施する自衛隊の安全を害するおそれがあり、また、他国との信頼関係が損なわれるおそれがあることから、答弁を差し控えたい。
- 三の2について
- 御指摘の「海外派遣」とは、三の1についてで述べた護衛艦「きりさめ」等の派遣を指していると考えられるが、当該派遣は、協力支援活動等を実施する場合に予想される寄港地等の状況や、実施に係る海域の気象・海象又は船舶・航空機の航行状況の把握等を目的とするものであり、防衛庁設置法第五条第十八号に規定する「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと」に該当するものである。
- 三の3について
- 防衛庁においては、これまで、三の2についてで述べたもの以外にも、我が国周辺海域におけるレーダーサイト及び艦船・航空機による警戒監視活動や、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第百条の五に規定する国賓等の輸送及び同法第百条の八に規定する在外邦人等の輸送に先立って行う派遣予定地等への現地調査等について、防衛庁設置法第五条第十八号の規定を根拠として実施してきたところであり、同号に規定する「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと」は必ずしも我が国の領域内に限られるものではないと解している。