10月4日、米空母艦載機の陸上模擬着艦訓練(FCLP)場と陸海空自衛隊の統合訓練場の建設が狙われている馬毛島と、米軍基地としても利用された旧種子島空港を訪れました。
鹿児島南埠頭から高速船で種子島港までおよそ90分。出迎えてくれた種子島平和委員会の方の車で近くの漁港へ。馬毛島基地化に反対する漁師の漁船で20分、馬毛島唯一の葉山港に到着しました。
馬毛島は種子島の玄関口である西之表市の西約12kmにある、長さ4km余り(面積約8.2km2)の平坦な「無人」島。土地の99.6%は東京に本社を置く立石建設工業の子会社タストン・エアポート社(旧・馬毛島開発)が買い占めました。砕石事業や「貨物専用のバブ空港」建設の測量名目で森林伐採を行いました。しかし重機を持ち込んで“ 滑走路” 建設に着手。150億円以上を投資したといわれています。2016年に国の公害等調整委員会が、「森林法の許可申請、届け出の範囲を超える開発、伐採」と認定しています。
防衛省はFCLP実施のために同社の土地を地価の数倍の約160 億円で買収しました。未買収の土地は、市道馬毛島1〜3号線と旧小中学校地、漁師の共有地などだけとなりました。しかも同社は農地法によって得た土地の所有権を盾に関係者以外の立ち入りを禁じています。今回も市道を歩き始めると、行動を監視していた立石建設の駐在員が「敷地は国のもので、通行は禁止されている。話は本社としてくれ」と立ちはだかりました。
馬毛島は固有亜種のマゲシカの生息地です。今回は出会えませんでしたが糞を見つけました。他にも絶滅危惧種がたくさんいますが、基地建設は本当に絶滅を引き起こすものになります。
◆敵基地攻撃訓練基地
8月7日に西之表市に示された施設整備計画は馬毛島を日米統合基地に改造するものでした。2本の滑走路の他、火薬庫、訓練施設、桟橋や揚陸施設も設置されます。
防衛省は米軍のFCLPは年間20日程度と主張しますが日本側が制限することはできません。また敵基地攻撃を念頭に置いた陸海空自衛隊の訓練拠点ともなります。
今後、長距離ミサイルを搭載して敵基地攻撃能力を持つF35AやF16戦闘機などの連続離着陸訓練。水陸機動団の強襲揚陸支援を行うために、改造した「いずも型護衛艦」に搭載予定のF35B戦闘機の模擬艦艇発着艦訓練。敵国の荒れ地に兵員・物資・武器を輸送するC-130輸送機の不整地着陸訓練。敵基地攻撃能力を備えた戦闘機と空中給油機、大型輸送機による遠隔地への機動展開訓練。水陸機動団の水陸両用作戦訓練や輸送機からの空挺団の降投下訓練といった海と空からの「殴り込み」訓練等々。
◆広がる市民の運動が自治体を後押し
このような動きの中で「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」が米軍基地反対の一点で結集して運動を展開しています。人口約15,000人の西之表市で反対署名は5,500筆を超えています。八板俊輔市長も、馬毛島の米軍・自衛隊基地建設計画について、「同意できない」との立場を明確に表明しました。
◆格好の訓練地とされる旧種子島空港の跡地
西之表市から車で南下。エメラルドグリーンの海岸、サトウキビやバナナの畑を眺めながら約40 分で中種子町の旧種子島空港跡地に着きます。
18年10月には水陸機動団と米海兵隊による「離島奪還」の共同訓練が行われました。演習場や駐屯地以外の場所を初めて日米共同利用施設として戦闘訓練を行ったのです。水陸機動団は近くの長浜海岸から上陸、また海兵隊とともに輸送ヘリで旧空港へ降下し、構築された敵陣地を奪還する訓練を行いました。
一方で、馬毛島基地に所属する自衛隊員の宿舎をこの空港跡地へ誘致する動きもあるそうです。
(2020年10月5日)