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多機能護衛艦の建造始まる

三菱重工を建造の主事業者に計22隻

 三菱長崎造船所の第2船台では4月中旬から新型の多機能護衛艦「FFM」の1番艦の建造が始まっている。

「FFM」は年2隻ずつ、計22隻を建造する計画で、建造の主事業者は公募によって三菱重工に決まり、三井E&Sホールディングスが下請負業者となった。

 2018年11月1日、三菱重工業は防衛省と2隻の「FFM」の建造契約を締結し、同日、三井E&S造船(岡山県玉野市)はその2番艦の建造契約を三菱重工業と締結。2隻は同時期に建造が始まり、今年11月に進水、22年3月に就役予定。海自艦艇で、主事業者の設計図面に基づいて主事業者の造船所と下請負者の造船所が同時期に建造するのは初めてのことだという。

 さらに今年1月28日、三菱重工は3・4番艦の建造を契約を防衛省と締結した。当面、長崎造船所が8隻中6隻を手がける。

 FFMは全長133メートル、基準排水量(船体重量)が3,900トンで、最新の「あさひ型」(全長151メートル、5,100トン)に比べて小型。乗員は約100人で、あさひ型の半分以下。建造費も1隻あたり約500億円(あさひ型は約730億円)に抑えられている。

 「FFM」とは「護衛艦部隊を54隻体制へと増勢するために、従来は掃海艦艇が担っていた対機雷戦機能も備える等、多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた護衛艦」(概算要求書)。通常、護衛艦の艦記号は駆逐艦を表す「DD」。諸外国では同程度のサイズの艦艇はフリゲート(FF)と呼ばれるため、機雷対処・多機能の意味の「M」と組み合わせている。

 従来艦よりも特にマスト上部のレーダー反射率を抑えている。ミサイルの垂直発射装置は従来の半数の16筒に。機雷戦用のソナーや水中を航走して機雷を探知したり、爆破するロボットが搭載される。

 新防衛大綱ではこのFFMについて、掃海艦艇と「あらたな水上艦艇部隊」(2グループ)を構成するとされ、従来のイージス艦やヘリ空母などの護衛艦部隊とは異なる任務が与えられることになる。

 また複数クルーでの交替勤務が導入される。護衛艦ごとに乗員を固定するのではなく、一定期間ごとにヘリコプターなどを使って入れ替えて洋上任務期間を短縮する。同時に検査・修理期間以外の艦の停泊期間を短縮し、運用効率を上げる。3隻のFFMに対して4組のクルーを配置し、常に1組が陸上での休養となる。海自隊員の募集環境が厳しくなっていることも背景にあるようだ。部隊の中核を担う一般曹候補生の応募倍率が18年度は陸自(5.7倍)や空自(11.8倍)を大きく下回る2.5倍(毎日新聞2019年3月19日付)。

 防衛装備庁の資料によると総建造費は1兆3,340億円、40年間の運用・維持総経費は1兆9,125億円を見込んでいる。

(2020年5月25日)