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安全性の担保が全く見えない!

九州沖縄民医連の川内原発視察リポート

 7月15日、九州沖縄の民医連は、原発再稼働の一番手として狙われている川内原発を視察しました。九電と規制委員会がグルになって「再稼働のための新たな安全神話」をつくろうとしているというのが実感です。

■川内原発展示館へ

 私たち9名は、「原発ゼロをめざす鹿児島県民の会」の井上森雄さんと川内駅前から車で15分ぐらいかかる川内原発に向かいました。原発展示館は原子炉が間近に見える東側の丘の上にありました。「原子炉からこの展示館までの距離はどのくらいですか?」と聞くと、「どれくらいかなあ・・・あとで・・・」と九電職員。

■「川内原発は安全です」と強調

 まず、スライドでの説明を受けました。「福島と違って川内は安全」として、(1)原発の敷地は津波の影響を受けない海抜13メートル、(2)原子炉が地下にあり万一の注水がスムース、(3)格納容器が格段に大きく「水素爆発」の危険が低い、(4)制御棒が自動落下するなどを強調。

■眉唾ものの「事故対策」

 「安全対策」では、(1)地震の加速度上限を620ガルに引き上げた、(2)竜巻対策で鳥かごのような鉄の網を施設にかぶせたと強調。620ガル以上の地震が起こる日本で「えいやぁーと想定した」だけ。九電は川内原発設置申請時に地層のコアをすり替えていたし、地震学者は「断層評価がでたらめ」と指摘しており眉唾ものです。メルトダウン時の核燃料の受け皿がない、航空機墜落事故への防備がないなどの「規制基準」ですが、九電は自慢げに「厳しい規制に沿って万全を期した」と言うのには驚きです。「想定外では許されないんだよ!」と叫びたいのを我慢しました。

 使用済み核燃料は「保管場所に4割ぐらい余裕があり、六ヶ所村の処分場に運びます」と言い、再処理が難航していることは語りません。

■マイクロバスで原発構内を巡る

 発電所構内は専用マイクロバスからの視察。あちらこちらで工事中で作業員は2,700人。過酷事故の対応拠点は100人収容の仮設で、居住性がないので「重要免震棟」を2016年までに作ると言い、敷地はまだ更地。「行政側の対応拠点(オフサイトセンター)の位置と体制、連携は?」と聞くも、「行政側のことですので」と何も答えません。

■本当に避難できるのか?

 「避難」については全く語らず、避難での自治体との連携は危ういと感じました。国際的な安全基準では避難対策は不可欠になっていますが、原子力規制委員会の「規制基準」は、それを度外視して「再稼働にお墨付きを与えるための基準」だと指摘されています。しかし「原子力ムラ」の住人たちは、福島の事故の教訓を全く理解していません。

 東電職員は「過酷事故は起きないでしょうが・・・」と何回も口にしながら、工事中の冷却用ポンプを津波から保護するフェンス、緊急冷却用の車両などを説明しました。排水口からは大量の海水がゴーゴーと流れ出ていて、「ものすごい量ですね」と聞くと、「今は少ないですよ。稼働中は毎秒133トン。取水から排水まで6分間」と言いました。

■交付金がもたらした「ひずみ」

 視察後、川内市内に会場を借りて、井上さんから、川内原発の問題点と電源三法に基づく交付金の話を伺いました。自治体と地域におおきな「ひずみ」をつくっている交付金をはじめ、原発依存のからくりは重大な問題です。お話を聞きながら、地域経済を守りながら廃炉に進むために、この交付金制度を廃炉の原資に切り替えさせたいと思いました。政府が「廃炉を決断する」ことが決定的に必要ですが。

■声を上げる「周辺自治体」

 薩摩川内市の南に位置する「いちき串木野市」では6月24日、川内原発再稼働反対署名が、市の人口の半分を超える15,464人分に達しました。また、原発から30キロ圏の9市町のうち、鹿児島県市議会が7月11日、川内原発再稼働に反対し、廃炉も求めた決議をあげたことを知りました。7月19日付日経新聞は「川内原発再稼働『反乱』の真相 姶良市議会議長に聞く、原子力規制委は安全審査に『合格』は出しても、『事故がゼロになる』とはいっていない」と報道。湯之原一郎・姶良市議会議長は「たとえ原発の新しい安全神話を語られても、東京電力福島第1原発事故の状況を見た後では信じられない」と述べています。川内原発視察で感じた思いは、まさにこれでした。

 原発依存の政府・規制委員会・九電・鹿児島県知事・薩摩川内市長に、再稼働断念を迫る暑い夏にしていきましょう。長崎民医連は、川内原発を“合格”とした規制委員会に対するパブリックコメント(8月15日まで)に、怒りの声を届ける活動を開始しました。

(2014年7月18日)