福岡高等裁判所は、本日、長崎原爆松谷訴訟について、控訴提起以来四年半の審理を経て、厚生省の控訴を棄却する判決を言い渡しました。
原爆によってもたらされた松谷英子さんの右半身不全麻痺という障害について、厚生省はこれまで一貫して原爆症でないと言いつづけ、松谷さんと同様の条件下で被爆し、原爆症で苦しんでいる多数の被爆者を切り捨ててきました。本日の判決はこのような厚生省の態度を厳しく断罪し、厚生省のこれまでの被爆者行政の根本的な見直しをせまると同時に、核兵器の使用を違法とし、核廃絶を求める国際世論の高まりに答えるものであると考えます。
原爆の被害を直視し、公正なる判決を下された福岡高等裁判所に対し、私たちは深甚なる敬意を表するとともに、本日の判決を高く評価するものです。
長崎地方裁判所の判決に続く本日の判決により、被爆者の救済は国の責務であり、原爆症認定のための被爆者の立証責任は軽減されなければならないこと、DS八六という原爆の放射線量評価システムにもとづく被爆者切り捨ては間違いであることが、今や明白になりました。
私たちは、厚生省がこの二つの判決を厳粛に受けとめ、上告を断念し、ただちに松谷英子さんの障害を原爆症として認定するよう、ここに強く要求します。そして、厚生省が、ふたたび被爆者をつくらない国の決意の証として、原爆被害への国家補償制度の確立へ向け、ただちに着手するよう、併せて強く要求するものです。
一九九七年一一月七日
長崎原爆松谷訴訟弁護団
長崎原爆松谷訴訟を支援する会