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Landing Craft, Air Cushoned


崎辺仮駐機場のLCAC

 佐世保基地のLCACは06年4月に揚陸艦トーテュガの交代配備に伴い6隻から7隻へと増強されました。補修スタッフも含めて約70人が勤務。乗組員には高度な技術が求められ、航空機を操縦するような感じで常に訓練が必要といいます。

1 LCACの生い立ち
 1977年秋、米海軍は揚陸艇の高速化、行動範囲の拡大、機動性の強化を求めてフロリダ州のパナマ市に強襲揚陸艇実験部隊を設立して二社のエア・クッション艇のテストを行いました。そのうち米テキストロン社のものが採用されて81年に製造開始、84年12月にバージニア州ノーフォークにある、大西洋艦隊リトル・クリーク揚陸戦基地のACU4(第4強襲揚陸部隊)に引き渡されました。つづいて87年3月にカリフォルニア州キャンプ・ペンドルトンにある太平洋艦隊の海兵隊基地ACU5に引き渡されたのです。最初のLCAC分遣隊はACU5からの3隻で構成され、87年6月、かつては佐世保に配備されていたドック型揚陸艦ジャーマンタウンに配備されたのです。

 米テキストロン社は米海軍に91隻を製造し、うち7隻は分解され、10隻は使用できない状態にあり、2隻は研究開発に回されています。
 米海軍は現在、ACU4とACU5に各36隻を実戦配備しています。現在佐世保基地に配備されている6隻は、このACU5の分遣隊であるウエストパック・アルファに所属するものです。

 米国防報告には、LCACの新規建造計画はないものの、2005会計年度までの5年間に13隻の近代化(延命)計画が掲載されています。それによると本来のLCACの寿命は20年ですが、それを30年に引き上げるというものです。

 いずれにせよ、LCACの海外基地は長崎だけです。もし西海町に12隻が配備されるとすれば、太平洋配備分の1/3を占めることになり、ますます前進基地としての機能が増していくことになります。

 現在、佐世保配備艦船のLCAC搭載可能数は、エセックス3,トーテュガ4,ハーパーズ・フェリー2,ジュノー1の計10隻。本格的な整備工場ができるとすれば2隻の予備を含めて12隻の駐機スペースというのは、LCACの「フル稼働」を見越したきわめて理にかなったものといえるでしょう。

 一方、海上自衛隊もすでに米テキストロン社からLCACを6隻購入しています(1隻66億円)。米揚陸艦に酷似した3隻の「おおすみ型」大型輸送艦に2隻ずつ搭載し、上陸訓練を行なっている。日米共同訓練ではLCACの相互発進・収容訓練も行なうなどブッシュ・ドクトリンのもと、海上自衛隊をも巻き込んだ、新たな殴り込み部隊の拠点づくりが進められています。

2 LCACの機能とその役割
 ○公表されているLCACの性能は次のとおりです。

満載排水量 200トン
積載容量 60〜75トン
全長 26.8メートル
14.3メートル
出力 15,820馬力
  浮上用ファン4基
  推進用プロペラ2基
消費燃料 3,785リットル/時
行動範囲 時速74キロで320キロメートル
時速65キロで480キロメートル
兵装 12.7ミリ単装機銃2基
乗員 5名

(1)高速性・機動性
 LCACは60トンもの物資を運ぶことができ、その全重量は200トン、車200台分にも相当します。それが船体を浮かせながら時速74キロものスピードで、水面、または陸地を疾走するわけです。その結果、騒音、潮しぶきはすさまじいものとなります。1時間に使用するガソリンは1000ガロン(3,785リットル=車3年分?)で5000ガロンを積載でき、行動範囲は数百キロにも及びます。

(2)完全な水陸両用
 LCACは従来の上陸用舟艇などと違って、完全な水陸両用です。従来型では、世界の海岸線の17%でしか、上陸作戦ができませんでしたが、LCACは70%以上になるといいます。
 浮上距離は約1.4メートルで海の深さ、海面下の障害物、浅瀬、逆流に関係なく走行できます。また陸上も1.2メートル以下の障害物であれば、沼地、砂漠、溝、土手などの地形に関係なく走行できるわけです。

(3)LCACの役割
 LCACの典型的な任務には、機器、部隊、補給物資の積み込み、上陸用艦船からの発進、急襲下における海岸への高速輸送、荷物を降ろすため適切な場所を求めて内陸まで進攻、迅速な荷おろし、再び積み有するため、上陸用艦船への帰艦、及び出撃の続行などです。
 紛争地への強襲揚陸作戦は、相手国の反撃を受けないようにできるだけ沖合いから行われます。海兵隊員は揚陸艦搭載の輸送ヘリコプターで空中から送り込まれます。戦車、車両、火砲はLCACを使って海岸に陸揚げされるわけで、揚陸作戦が成功するか否かは、LCACが戦車などを迅速かつ安全に輸送できるかにかかっています。