核攻撃能力の認証を与えられた
攻撃型原子力潜水艦の寄港状況

 太平洋配備の米攻撃型原潜のうち10隻が核攻撃能力の認証を与えられていることが明らかとなりました。うち9隻は佐世保港に寄港しています。米軍は2001年9月21日以降原潜の出入日時や関連情報の非公表を外務省に要請し、寄港地の自治体もそれに応じています(首長は解除を要請)。米軍有事体制のもとで攻撃型原潜への核トマホーク配備が濃厚なだけに、核持ち込みの疑惑は強まるばかりです。(下記表の勝連は沖縄県勝連町のホワイトビーチをさす)


2002年11月30日 新原昭治

1.太平洋地域に配備された20隻を超えるアメリカ海軍の攻撃型原子力潜水艦(SSN)のうち、「半数以下」の艦が、1990年代後半以降、米海軍によって公式に「核攻撃能力の認証」(nuclear certification)を与えられている事実が、従来、ストックホルム国際平和研究所の年鑑によって指摘されてきた(2001年版と2002年版)。
 1994年当時の「核態勢見直し」でも、また今年(2002年)8月のブッシュ政権下初の「国防報告」でも、有事に攻撃型原子力潜水艦に核弾頭付きの地上攻撃用巡航ミサイル「トマホーク」を再配備する方針を明記しており、これとの関係で太平洋地域の攻撃型原潜の核攻撃能力の認証の事実は各方面から注目されていた。

2.同年鑑の当該部分執筆者である米ノーチラス研究所ハンス・クリステンセン研究員に問い合わせた結果、次の10隻の太平洋地域配備の攻撃型原子力潜水艦(いずれもロサンゼルス級)が、1998年1月から2000年5月までの間に米海軍により核攻撃能力の認証を与えられたという事実が判明した。
 このデータは、クリステンセン氏が「情報公開法」にもとづき米海軍から入手したもので、主要な根拠になったのは、原潜に対する核攻撃能力認証について報告した米海軍内部文書である。

原潜名(番号)
寄港期間
寄港地
ブレマートン(SSN-698) 99.10.04〜10.15 横須賀
99.11.19 勝連
99.12.06 勝連
01.09.20〜10.02 佐世保
01.10.04 佐世保
01.11.04〜11.05 勝連
01.11.11〜11.17 横須賀
ラ・ホーヤ(SSN-701) 98.01.08〜01.17 佐世保
02.04.16〜04.19 佐世保
02.04.20〜04.25 佐世保
02.05.01〜05.05 佐世保
02.05.08 勝連
02.05.27 勝連
02.06.05〜06.09 勝連
02.06.12〜07.05 横須賀
ポーツマス(SSN-707) 99.09.14〜09.15 横須賀
99.09.15〜09.30 横須賀
99.10.18〜10.25 佐世保
01.11.20〜11.27 横須賀
01.11.29 佐世保
01.12.02〜12.05 佐世保
02.02.15〜02.27 横須賀
サンフランシスコ(SSN-711) 98.04.16〜04.18 横須賀
98.05.04〜05.08 佐世保
98.06.23〜07.02 横須賀
ヒューストン(SSN-713) 98.05.13 横須賀
98.05.15 勝連
98.06.15〜06.19 佐世保
98.06.27 佐世保
98.08.25〜08.31 横須賀
98.10.14〜10.17 横須賀
00.05.06〜05.11 横須賀
00.05.29〜06.03 横須賀
00.07.28 勝連
00.07.31〜08.11 横須賀
00.08.16〜08.17 勝連
バッファロー(SSN-715) 99.05.11〜05.12 横須賀
99.05.13〜05.19 横須賀
99.06.23〜07.10 横須賀
99.07.13 横須賀
99.08.27〜08.30 勝連
99.09.10〜09.15 勝連
01.07.23〜07.24 勝連
01.08.01 勝連
01.08.04〜08.13 横須賀
01.12.21〜12.29 横須賀
ソルトレイクシティ(SSN-716) 98.09.18〜09.19 横須賀
98.09.21 勝連
00.03.16〜03.17 横須賀
00.03.17〜03.18 横須賀
00.04.05〜04.10 佐世保
00.05.08 佐世保
00.08.14〜08.28 横須賀
01.12.24〜12.28 横須賀
オリンピア(SSN-717) 99.07.08〜07.10 横須賀
99.08.16〜08.26 横須賀
01.08.13〜08.18 勝連
01.09.01 佐世保
ホノルル(SSN-718) 99.01.13〜01.22 横須賀
99.04.21〜04.24 勝連
99.05.15〜05.17 佐世保
99.06.07〜06.11 横須賀
99.06.11〜06.21 横須賀
00.09.18〜09.21 横須賀
00.11.03〜11.07 佐世保
00.11.18〜11.21 横須賀
00.12.24〜01.02 横須賀
01.01.26 勝連
01.02.19 勝連
02.08.28〜08.30 横須賀
キーウェスト(SSN-722) 98.11.13〜11.14 横須賀
98.11.25〜11.30 佐世保

3.核攻撃能力の認証は、通常、専門チームが艦を訪れ、検査を実施した上で決定することになっている。ただ米ソ対決時代と違い、いったん核攻撃能力の認証を与えられたあとその認証は取り消されるが、重視されるのは、必要に応じごく短期間内に資格は再付与されること、核弾頭付き巡航ミサイル「トマホーク」は「わずか30日以内に」原潜に積載されるようになっていることである。
(注。太平洋地域向け核弾頭付き巡航ミサイル「トマホーク」は、米西海岸ワシントン州バンゴールの海軍弾薬庫に貯蔵中。)

4.以上の事実は、わが国の横須賀、佐世保、ホワイトビーチ(沖縄)に頻繁に寄港をくりかえしている攻撃型原子力潜水艦に、随時ひそかに核弾頭付き巡航ミサイル「トマホーク」が装備される(または、装備されている)現実的危険性を、リアルに裏付けている。現にこれら10隻の核攻撃能力の認証を与えられた原子力潜水艦のすべてが、1998年以降にわが国に寄港している。このことは、日米核密約にもとづく秘密裏の核持ち込みへの新たな重大な疑惑を投げかけずにはおかない。
 アメリカ政府は、現在の海外への「有事」核配備政策のもとで、核兵器を再持ち込みするさいにそれを知られずにおこなう目的で、ひきつづき「核兵器の所在を否定も肯定もしない」政策を維持している。1991年9月に海外からの戦術核兵器引き揚げを発表した当時、現ウォルフォウィッツ国防副長官(当時・国防次官)は「将来の危機においては核兵器を再配備する必要に迫られる可能性がある」ので、核の所在を「否定も肯定もしない政策」(NCND)を継続するむね公式に言明した。