第一章 総則
(目的)
第1条 この法律は、武力攻撃事態等(武力攻撃事態および武力攻撃予測事態をいう。
以下同じ。)への対処について、基本理念、国、地方公共団体等の責務、国民の協力
その他の基本となる事項を定めることにより、武力攻撃事態等への対処のための態勢
を整備し、併せて武力攻撃事態等への対処に関して必要となる法制の整備に関する事
項を定め、もってわが国の平和と独立ならびに国および国民の安全の確保に資するこ
とを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定め
るところによる。
一 武力攻撃 わが国に対する外部からの武力攻撃をいう。
二 武力攻撃事態 武力攻撃が発生した事態または武力攻撃が発生する明白な危険が
切迫していると認められるに至った事態をいう。
三 武力攻撃予測事態 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃
が予測されるに至った事態をいう。
四 指定行政機関次に掲げる機関で政令で定めるものをいう。
イ 内閣府、宮内庁ならびに内閣府設置法第49条第一項および第二項に規定する
機関ならびに国家行政組織法第三条第二項に規定する機関
ロ 内閣府設置法第37条および第54条ならびに宮内庁法第16条第一項ならび
に国家行政組織法第八条に規定する機関
ハ 内閣府設置法第39条および第55条ならびに宮内庁法第16条第二項ならび
に国家行政組織法第8条の二に規定する機関
ニ 内閣府設置法第40条および第56条ならびに国家行政組織法第8条の三に規
定する機関
五 指定地方行政機関指定行政機関の地方支分部局(内閣府設置法第43条および第
57条【宮内庁法第一八条第一項において準用する場合を含む。】ならびに宮内庁
法第17条第一項ならびに国家行政組織法第9条の地方支分部局をいう。)その他
の国の地方行政機関で、政令で定めるものをいう。
六 指定公共機関独立行政法人(独立行政法人通則法第2条第一項に規定する独立行
政法人をいう。)、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会その他の公共的機関お
よび電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人で、政令で定めるもの
をいう。
七 対処措置第9条第一項の対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、
指定行政機関、地方公共団体または指定公共機関が法律の規定に基づいて実施する
次に掲げる措置をいう。
イ 武力攻撃事態等を終結させるためにその推移に応じて実施する次に掲げる措置
(1)武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展
開その他の行動
(2)(1)に掲げる自衛隊の行動およびアメリカ合衆国の軍隊が実施する日本国
とアメリカ合衆国との間の相互協力および安全保障条約(以下「日米安保条約」
という。)に従って武力攻撃を排除するために必要な行
動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設または役務の提供そ
の他の措置
(3)(1)および(2)に掲げるもののほか、外交上の措置その他の措置
ロ 武力攻撃から国民の生命、身体および財産を保護するため、または武力攻撃が
国民生活および国民経済に影響を及ぼす場合において当該影響が最小となるよう
にするために武力攻撃事態等の推移に応じて実施する次に掲げる措置
(1)警報の発令、避難の指示、被災者の救助、施設および設備の応急の復旧その
他の措置
(2)生活関連物資等の価格安定、配分その他の措置
(武力攻撃事態等への対処に関する基本理念)
第3条 武力攻撃事態等への対処においては、国、地方公共団体および指定公共機関が、
国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならない。
2 武力攻撃予測事態においては、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければなら
ない。
3 武力攻撃事態においては、武力攻撃の発生に備えるとともに、武力攻撃が発生した
場合には、これを排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。ただし武
力攻撃が発生した場合においてこれを排除するに当たっては、武力の行使は、事態に
応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。
4 武力攻撃事態等への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊
重されなければならず、これに制限が加えられる場合にあっても、その制限は当該武
力攻撃事態等に対処するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続
きの下に行われなければならない。この場合において、日本国憲法第14条、第18
条、第19条、第21条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなけ
ればならない。
5 武力攻撃事態等においては、当該武力攻撃事態等およびこれへの対処に関する状況
について、適時に、かつ、適切な方法で国民に明らかにされるようにしなければなら
ない。
6 武力攻撃事態等への対処においては、日米安保条約に基づいてアメリカ合衆国と緊
密に協力しつつ、国際連合をはじめとする国際社会の理解および協調的行動が得られ
るようにしなければならない。
(国の責務)
第4条 国は、わが国の平和と独立を守り、国および国民の安全を保つため、武力攻撃
事態等において、わが国を防衛し、国土ならびに国民の生命、身体および財産を保護
する固有の使命を有することから、前条の基本理念にのっとり、組織および機能のす
べてを挙げて、武力攻撃事態等に対処するとともに、国全体として万全の措置が講じ
られるようにする責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第5条 地方公共団体は、当該地方公共団体の地域ならびに当該地方公共団体の住民の
生命、身体および財産を保護する使命を有することにかんがみ、国および他の地方公
共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態等への対処に関し、必要な措置を
実施する責務を有する。
(指定公共機関の責務)
第6条 指定公共機関は、国および地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻
撃事態等への対処に関し、その業務について、必要な措置を実施する責務を有する。
(国と地方公共団体との役割分担)
第7条 武力攻撃事態等への対処の性格にかんがみ、国においては武力攻撃事態等への
対処に関する主要な役割を担い、地方公共団体においては武力攻撃事態等における当
該地方公共団体の住民の生命、身体および財産の保護に関して、国の方針に基づく措
置の実施その他適切な役割を担うことを基本とするものとする。
(国民の協力)
第8条 国民は、国および国民の安全を確保することの重要性にかんがみ、指定行政機
関、地方公共団体または指定公共機関が対処措置を実施する際は、必要な協力をする
よう努めるものとする。
(対処基本方針)
第9条 政府は、武力攻撃事態等に至ったときは、武力攻撃事態等への対処に関する基
本的な方針(以下「対処基本方針」という。)を定めるものとする。
2 対処基本方針に定める事項は、次のとおりとする。
一 武力攻撃事態であることまたは武力攻撃予測事態であることの認定および当該認
定の前提となった事実
二 当該武力攻撃事態等への対処に関する全般的な方針
三 対処措置に関する重要事項
3 武力攻撃事態においては、対処基本方針には、前項第三号に定める事項として、次
に掲げる内閣総理大臣の承認を行う場合はその旨を記載しなければならない。
一 防衛庁長官が自衛隊法第70条第一項または第八項の規定に基づき発する同条第
一項第一号に定める防衛招集命令書による防衛招集命令に関して同項または同条第
八項の規定により内閣総理大臣が行う承認
二 防衛庁長官が自衛隊法第75条の4第一項または第六項の規定に基づき発する同
条第一項第一号に定める防衛招集命令書による防衛招集命令に関して同項または同
条第六項の規定により内閣総理大臣が行う承認
三 防衛庁長官が自衛隊法第77条の規定に基づき発する防衛出動待機命令に関して
同条の規定により内閣総理大臣が行う承認
四 防衛庁長官が自衛隊法第77条の2の規定に基づき命ずる防御施設構築の措置に
関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認
4 武力攻撃事態においては、対処基本方針には、前項に定めるもののほか、第二項第
三号に定める事項として、第一号に掲げる内閣総理大臣が行う国会の承認(衆議院が
解散されているときは、日本国憲法第54条に規定する緊急集会による参議院の承認。
以下この条において同じ。)の求めを行う場合にあってはその旨を、内閣総理大臣が
第二号に掲げる防衛出動を命ずる場合にあってはその旨を記載しなければならない。
ただし、同号に掲げる防衛出動を命ずる旨の記載は、特に緊急の必要があり事前に国
会の承認を得るいとまがない場合でなければ、することができない。
一 内閣総理大臣が防衛出動を命ずることについての自衛隊法第76条第一項の規定
に基づく国会の承認の求め
二 自衛隊法第76条第一項の規定に基づき内閣総理大臣が命ずる防衛出動
5 武力攻撃予測事態においては、対処基本方針には、第二項第三号に定める事項とし
て、次に掲げる内閣総理大臣の承認を行う場合はその旨を記載しなければならない。
一 防衛庁長官が自衛隊法第70条第一項または第八項の規定に基づき発する同条第
一項第一号に定める防衛招集命令書による防衛招集命令(事態が緊迫し、同法第7
6条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合に係るも
のに限る。)に関して同法第70条第一項または第八項の規定により内閣総理大臣
が行う承認
二 防衛庁長官が自衛隊法第75条の四第一項または第六項の規定に基づき発する同
条第一項第一号に定める防衛招集命令書による防衛招集命令(事態が緊迫し、同法
第76条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合に係
るものに限る。)に関して同法第75条の四第一項または第六項の規定により内閣
総理大臣が行う承認
三 防衛庁長官が自衛隊法第77条の規定に基づき発する防衛出動待機命令に関して
同条の規定により内閣総理大臣が行う承認
四 防衛庁長官が自衛隊法第77条の2の規定に基づき命ずる防御施設構築の措置に
関して同条の規定により内閣総理大臣が行う承認
6 内閣総理大臣は、対処基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
7 内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、直ちに、対処基本方針(第四
項第一号に規定する国会の承認の求めに関する部分を除く。)につき、国会の承認を
求めなければならない。
8 内閣総理大臣は、第六項の閣議の決定があったときは、直ちに、対処基本方針を公
示してその周知を図らなければならない。
9 内閣総理大臣は、第七項の規定に基づく対処基本方針の承認があったときは、直ち
に、その旨を公示しなければならない。
10 第四項第一号に規定する防衛出動を命ずることについての承認の求めに係る国会
の承認が得られたときは、対処基本方針を変更して、これに当該承認に係る防衛出動
を命ずる旨を記載するものとする。
11 第七項の規定に基づく対処基本方針の承認の求めに対し、不承認の議決があった
ときは、当該議決に係る対処措置は、速やかに、終了されなければならない。この場
合において、内閣総理大臣は、第四項第二号に規定する防衛出動を命じた自衛隊につ
いては、直ちに撤収を命じなければならない。
12 内閣総理大臣は、対処措置を実施するに当たり、対処基本方針に基づいて、内閣
を代表して行政各部を指揮監督する。
13 第6項から第9項までおよび第11項の規定は、対処基本方針の変更について準
用する。ただし、第10項の規定に基づく変更および対処措置を構成する措置の終了
を内容とする変更については、第7項、第9項および第11項の規定は、この限りで
ない。
14 内閣総理大臣は、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるときまたは国会
が対処措置を終了すべきことを議決したときは、対処基本方針の廃止につき、閣議の
決定を求めなければならない。
15 内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、速やかに、対処基本方針が
廃止された旨および対処基本方針に定める対処措置の結果を国会に報告するとともに、
これを公示しなければならない。
(対策本部の設置)
第10条 内閣総理大臣は、対処基本方針が定められたときは、当該対処基本方針に係
る対処措置の実施を推進するため、内閣法第12条第四項の規定にかかわらず、閣議
にかけて、臨時に内閣に武力攻撃事態等対策本部(以下「対策本部」という。)を設
置するものとする。
2 内閣総理大臣は、対策本部を置いたときは、当該対策本部の名称ならびに設置の場
所および期間を国会に報告するとともに、これを公示しなければならない。
(対策本部の組織)
第11条 対策本部の長は、武力攻撃事態等対策本部長(以下「対策本部長」という。)
とし、内閣総理大臣(内閣総理大臣に事故があるときは、そのあらかじめ指名する国
務大臣)をもって充てる。
2 対策本部長は、対策本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
3 対策本部に、武力攻撃事態等対策副本部長(以下「対策副本部長」という。)、武
力攻撃事態等対策本部員(以下「対策本部員」という。)その他の職員を置く。
4 対策副本部長は、国務大臣をもって充てる。
5 対策副本部長は、対策本部長を助け、対策本部長に事故があるときは、その職務を
代理する。対策副本部長が2人以上置かれている場合にあっては、あらかじめ対策本
部長が定めた順序で、その職務を代理する。
6 対策本部員は、対策本部長および対策副本部長以外のすべての国務大臣をもって充
てる。この場合において、国務大臣が不在のときは、そのあらかじめ指名する副大臣
(内閣官房副長官または法律で国務大臣をもってその長に充てることと定められてい
る各庁の副長官を含む。)がその職務を代行することができる。
7 対策副本部長および対策本部員以外の対策本部の職員は、内閣官房の職員、指定行
政機関の長(国務大臣を除く。)その他の職員または関係する指定地方行政機関の長
その他の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
(対策本部の所掌事務)
第12条 対策本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 指定行政機関、地方公共団体および指定公共機関が実施する対処措置に関する対
処基本方針に基づく総合的な推進に関すること。
二 前号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属する事務
(指定行政機関の長の権限の委任)
第13条 指定行政機関の長(当該指定行政機関が内閣府設置法第49条第一項もしく
は第二項もしくは国家行政組織法第3条第二項の委員会もしくは第2条第四号ロに掲
げる機関または同号ニに掲げる機関のうち合議制のものである場合にあっては、当該
指定行政機関。次項において同じ。)は、対策本部が設置されたときは、対処措置を
実施するため必要な権限の全部または一部を当該対策本部の職員である当該指定行政
機関の職員または当該指定地方行政機関の長もしくはその職員に委任することができ
る。
2 指定行政機関の長は、前項の規定による委任をしたときは、直ちに、その旨を公示
しなければならない。
(対策本部長の権限)
第14条 対策本部長は、対処措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認める
ときは、対処基本方針に基づき、指定行政機関の長および関係する指定地方行政機関
の長ならびに前条の規定により権限を委任された当該指定行政機関の職員および当該
指定地方行政機関の職員、関係する地方公共団体の長その他の執行機関ならびに関係
する指定公共機関に対し、指定行政機関、関係する地方公共団体および関係する指定
公共機関が実施する対処措置に関する総合調整を行うことができる。
2 前項の場合において、当該地方公共団体の長その他の執行機関および指定公共機関
(次条および第16条において「地方公共団体の長等」という。)は、当該地方公共
団体または指定公共機関が実施する対処措置に関して対策本部長が行う総合調整に関
し、対策本部長に対して意見を申し出ることができる。
(内閣総理大臣の権限)
第15条 内閣総理大臣は、国民の生命、身体もしくは財産の保護または武力攻撃の排
除に支障があり、特に必要があると認める場合であって、前条第一項の総合調整に基
づく所要の対処措置が実施されないときは、対策本部長の求めに応じ、別に法律で定
めるところにより、関係する地方公共団体の長等に対し、当該対処措置を実施すべき
ことを指示することができる。
2 内閣総理大臣は、次に掲げる場合において、対策本部長の求めに応じ、別に法律で
定めるところにより、関係する地方公共団体の長等に通知した上で、自らまたは当該
対処措置に係る事務を所掌する大臣を指揮し、当該地方公共団体または指定公共機関
が実施すべき当該対処措置を実施し、または実施させることができる。
一 前項の指示に基づく所要の対処措置が実施されないとき。
二 国民の生命、身体もしくは財産の保護または武力攻撃の排除に支障があり、特に
必要があると認める場合であって、事態に照らし緊急を要すると認めるとき。
(損失に関する財政上の措置)
第16条 政府は、第14条第一項または前条第一項の規定により、対処措置の実施に
関し、関係する地方公共団体の長等に対する総合調整または指示が行われた場合にお
いて、その総合調整または指示に基づく措置の実施により当該地方公共団体または指
定公共機関が損失を受けたときは、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずるも
のとする。
(安全の確保)
第17条 政府は、地方公共団体および指定公共機関が実施する対処措置について、そ
の内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない。
(国際連合安全保障理事会への報告)
第18条 政府は、国際連合憲章第51条および日米安保条約第五条第二項の規定に従っ
て、武力攻撃の排除に当たってわが国が講じた措置について、直ちに国際連合安全保
障理事会に報告しなければならない。
(対策本部の廃止)
第19条 対策本部は、対処基本方針が廃止されたときに、廃止されるものとする。
2 内閣総理大臣は、対策本部が廃止されたときは、直ちに、その旨を公示しなければ
ならない。
(主任の大臣)
第20条 対策本部に係る事項については、内閣法にいう主任の大臣は、内閣総理大臣
とする。
(事態対処法制の整備に関する基本方針)
第21条 政府は、第3条の基本理念にのっとり、武力攻撃事態等への対処に関して必
要となる法制(以下「事態対処法制」という。)の整備について、次条に定める措置
を講ずるものとする。
2 事態対処法制は、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施が
確保されたものでなければならない。
3 政府は、事態対処法制の整備に当たっては、対処措置について、その内容に応じ、
安全の確保のために必要な措置を講ずるものとする。
4 政府は、事態対処法制の整備に当たっては、対処措置および被害の復旧に関する措
置が的確に実施されるよう必要な財政上の措置を講ずるものとする。
5 政府は、事態対処法制の整備に当たっては、武力攻撃事態等への対処において国民
の協力が得られるよう必要な措置を講ずるものとする。この場合においては、国民が
協力をしたことにより受けた損失に関し、必要な財政上の措置を併せて講ずるものと
する。
6 政府は、事態対処法制について国民の理解を得るために適切な措置を講ずるものと
する。
(事態対処法制の整備)
第22条 政府は、事態対処法制の整備に当たっては、次に掲げる措置が適切かつ効果
的に実施されるようにするものとする。
一 次に掲げる措置その他の武力攻撃から国民の生命、身体および財産を保護するた
め、または武力攻撃が国民生活および国民経済に影響を及ぼす場合に
おいて当該影響が最小となるようにするための措置
イ 警報の発令、避難の指示、被災者の救助、消防等に関する措置
ロ 施設および設備の応急の復旧に関する措置
ハ 保健衛生の確保および社会秩序の維持に関する措置
ニ 輸送および通信に関する措置
ホ 国民の生活の安定に関する措置
へ 被害の復旧に関する措置
二 武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する行動が円滑かつ効果的に実施
されるための次に掲げる措置その他の武力攻撃事態等を終結させるための措置(次
号に掲げるものを除く。)
イ 捕虜の取り扱いに関する措置
ロ 電波の利用その他通信に関する措置
ハ 船舶および航空機の航行に関する措置
三 アメリカ合衆国の軍隊が実施する日米安保条約に従って武力攻撃を排除するため
に必要な行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置
(事態対処法制の計画的整備)
第23条 政府は、事態対処法制の整備を総合的、計画的かつ速やかに実施しなければ
ならない。
(国民保護法制整備本部)
第24条 事態対処法制のうち第22条第一号に規定する措置に係る法制(次項におい
て「国民の保護のための法制」という。)に関し広く国民の意見を求め、その整備を
迅速かつ集中的に推進するため、内閣に、国民保護法制整備本部(以下この条におい
て「整備本部」という。)を置く。
2 整備本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 国民の保護のための法制の整備に関する総合調整に関すること。
二 国民の保護のための法制の整備のために必要な法律案および政令案の立案に関す
ること。
三 国民の保護のための法制の整備に関する地方公共団体その他の関係団体および関
係機関との連絡調整に関すること。
3 整備本部は、国民保護法制整備本部長および国民保護法制整備本部員をもって組織
する。
4 整備本部の長は、国民保護法制整備本部長(次項および第七項において「整備本部
長」という。)とし、内閣官房長官をもって充てる。
5 整備本部長は、整備本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
6 整備本部に、国民保護法制整備本部員(次項において「整備本部員」という。)を
置く。
7 整備本部員は、整備本部長以外のすべての国務大臣(内閣総理大臣を除く。)をもっ
て充てる。
8 整備本部に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房副長官補
が掌理する。
9 整備本部に係る事項については、内閣法にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
10 この法律に定めるもののほか、整備本部に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 補則
(その他の緊急事態対処のための措置)
第25条 政府は、わが国の平和と独立ならびに国および国民の安全の確保を図るため、
武力攻撃事態等以外の国および国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態に迅速かつ
的確に対処するものとする。
2 政府は、前項の目的を達成するため、武装した不審船の出現、大規模なテロリズム
の発生等のわが国を取り巻く諸情勢の変化を踏まえ、次に掲げる措置その他の必要な
施策を速やかに講ずるものとする。
一 情報の集約ならびに事態の分析および評価を行うための態勢の充実
二 各種の事態に応じた対処方針の策定の準備
三 警察、海上保安庁等と自衛隊の連携の強化
付則
1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第14条から第16条までの規定は、
別に法律で定める日から施行する。
2 政府は、国および国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態へのより迅速かつ的確
な対処に資する組織の在り方について検討を行うものとする。