個性派揃いの山桜
このはなさくや図鑑 個性派揃いの山桜
個性派揃いのヤマザクラについて紹介しましょう。
とにかく、様々な種類、組み合わせがあり、1本々々がすべて別品種といえるぐらい、観察していると面白いものです。
兵庫県の六甲山山系周辺で見つけたヤマザクラのラインナップです。
(ヤマザクラ歴史的・生活史からの観点)
 今日のように暦がない昔、農耕民族である日本人は、農事を始める頃、野山に咲き始める山桜を穀霊の宿る花と信じてきました。また、満開になる桜の様を見て、秋の実りの豊かさを告げる、前兆現象とも考えられてきました。
 このような意味から昔の人々は、山桜を農事の目安とし、地方では今でも山桜のことを「種まき桜」「田植え桜」などと呼ぶところがあります。
(ヤマザクラの形態)
 山桜(Cerasus jamasakura)は本州の宮城県、新潟県以南、四国、九州、朝鮮半島南部にも分布しています。
 各部に毛がなく、成葉の裏面は白みを帯び、開花と同時に展開する若芽は色等、変異が多く、黄芽、赤芽、茶芽、青芽など呼ばれ分類されます。若干の差異によって品種分けされているものとして、小花柄や花柄、葉などに微毛があるウスゲヤマザクラ(forma pubecens)や葉が長く、鋸葉がより細かい品種のナガマヤマザクラ(forma superflua)などがあります。また、八重咲きや菊咲きに近い栽培品種も多数あります。
 自然界にも多弁化した山桜も多く存在するのも特徴です。皆さんも吉野の山の桜を見たとき、様々な山桜があるのを見かけたことがあるはずです。
(山桜の様々な組み合わせ)
花 色  ※花弁の形では、丸いものや尖ったもの等があります。
白花 大半がこのタイプです。
淡紅色 若芽が赤芽のタイプに多い山桜です。
花弁の外側が淡紅色 花弁の縁だけが淡紅色のタイプです。花弁が尖ったタイプに多い山桜です。
始めは淡紅色のち白色に変化 白花のタイプの次に多いパターンです。
白色のち化粧咲き現象が強い 散り際、花の中心が紅色に染まる現象です。
◎化粧咲き現象 散り際、花の中心が紅色に染まる。
 化粧咲きとは、白花の桜などが散り際、花の中心が化粧をしたように紅色に染まる現象です。通常多少は変化するものですが、別の桜に見えてしまうほど強くこの現象がでる桜があります。


 花には大輪のタイプから、小輪で多花のタイプもあり、花弁も旗弁が生じたタイプから、重弁化した山桜もあります。
若芽のタイプ  ※どのタイプにも属さない中間的なものもあります。
赤芽 赤褐色(紅紫色を帯びた褐色)のタイプです。樹形も箒状になるものが多いです。
黄芽 褐色を帯びた黄緑色のタイプ、
茶芽 褐色のタイプ、もっとも六甲山周辺には多いタイプです。
青芽 緑色のタイプ、六甲山周辺には少なく、むしろ九州方面より持ち込まれた中に多いタイプです。
◎六甲山系にもっとも多いタイプの山桜 ◎幹の色、非常に美しいものもある。
幹の色も様々です。黒色を帯びたものや灰色のものもあります。縦列するタイプは、江戸彼岸との交雑の可能性があります。
開花時の若芽展開の有無  ※個体差があり厳密には分けられない。
花と同時に展開 大半を占めるタイプです。
葉がやや早く展開 花が目立たないタイプの一つです。観賞価値が低い。
花が先に開花後、若芽が展開 他の種類の桜の影響が考えられるタイプです。
※若芽の展開については、その年によって多少の変異はあります。花が先行するタイプは他の種類の影響が考えられます。
開花期の差異 ※ほとんどは中間的なものです。
開花が早いもの 開花が極端に早いものがあります。同一場所でもかなりの差異があります。
開花が遅いもの 霞桜の開花する直前に開花するタイプ。他の桜の影響を受けている可能性があります。
(六甲山系の山桜、栽培されている山桜)
 市街地に残った林に自生する山桜、公園、街路樹などに植栽されている山桜をあわせると様々な山桜があります。 
左写真:赤芽(左)と黄芽(右)の山桜

 共に植栽された山桜です。おそろく産地が違うのでしょう。
右写真:大輪の山桜です。

写真の山桜は比較的大輪ですが、花径が写真のものの半分ほどしかない小輪のタイプもあり、大きさも様々です。
左写真:花がやや先行するタイプです。

 このタイプは花が満開に近くなると若芽が出てきます。紅く見える部分は苞です。また、花の中に若芽が見えます。
右写真:花より葉が先行するタイプです。

 蕾がありますがまだ咲きません。葉だけが目立ち、観賞価値としては低いです。
 土壌環境、生育環境によって普通の桜もこのようになる場合がありますが、写真のタイプの山桜は毎年観察していますが、花が少ないようです。(今年は特に少なかった・・・) 写真の若芽は茶芽です。
左写真:紅色のタイプの山桜

 蕾のときは特に濃紅で、開花時は紅色、最大展開時には、写真のように淡紅白色となります。赤芽の山桜に多く、紅色色素が多いからだと考えられます。

(若芽のタイプ別)
黄芽・赤芽・
左写真:黄芽のタイプ

 花が大きいものが多いのも特徴です。
右写真:赤芽のタイプ
 花が小さいものが多いです。写真のタイプは大きい方です。咲いている様はかよわく見え可憐です。私は個人的に赤芽の山桜が一番好きです。
 山の中で咲く姿は、凛と品があり、桜の王女の風格すら感じます。
左写真:茶芽のタイプ

 比較的多いタイプの山桜です。
 化粧咲きするタイプが多いのも特徴のひとつです。
右写真:青芽のタイプ
 一見、オオシマサクラに見えてしまいますが違います。関西では少ないタイプですが、植栽されたものに多いようで、特に九州産にこの種が混じっています。九州地方海岸部に多い、ツクシザクラの交雑という可能性もあります。
 また、公園などに植栽されているサクラの中には、オオシマサクラとヤマザクラの交雑種もあり、一概に両種に分類するのは無理がある場合があります。 
上記のパターンの組み合わせを考えるとヤマザクラの顔は、人と同様、千差万別です。
皆さんも個性的なこれはと思う山桜を見つけてみてください。


(交雑種と生育環境)
小花柄などに毛があるタイプ(山桜) 海と山桜(天橋立にて)
 写真のタイプは、比較的多く存在します。
ウスゲヤマザクラとまでは言い切れず、何かの交雑と考えるべきでしょう。
 ヤマザクラは、カスミザクラとは開花期が10日程違うため、隔離環境が成立し、交雑しにくいと考えています。
 関西では、公園などの植栽している桜の種類を見てみると、山の手では多いヤマザクラが海岸部では、オオシマサクラに代わっています。これは、海の塩害を考慮したものと推察されますが、ヤマザクラの自生地が山間部から海岸部に広く分布していることを考えると一概に塩に弱いとは考えられません。
 山桜の中にはとても塩に強いものもあるようです。環境に適用する山桜の多様性には驚かされるばかりです。
 上の写真は、海沿いに自生する山桜です。