開花のしくみ

このはなさくや図鑑 開花のしくみ

(開花のしくみについて)
 春に咲くサクラの花芽は、前年の夏に形成されます。しかし、それ以上、生成されることなく、その後、「休眠」という状態になります。休眠した花芽は、一定期間、低温にさらされることで、眠りからさめ、開花の準備を始めます。これを「休眠打破」といいます。休眠打破は、この秋から冬にかけて一定期間、低温さらされることが重要なポイントです。
 そして、春をむかえ、気温が上昇するにともなって、花芽は成長「生成」します。気温が高くなるスピードにあわせて、花芽の生成も加速します。生成のピークをむかえると「開花」することになります。
 このように、サクラの花芽の「休眠」・「休眠打破」・「生成」・「開花」は、秋から冬にかけての気温と春先の気温に、大きく関係していることがわかります。
 冬のない常夏の国には、日本のサクラは、美しく咲かないということです。サクラは、四季のある美しい日本の国で進化した植物なのです。

★開花のプロセス
(開花予想)
 気象庁では、起算日から「温度変換日数」を積算して、サクラの開花予想を行っています。
 温度変換日数とは、「標準温度」15度での1日分の成長量と、その前後の温度と比較して、花芽の成長速度を日数で計算したものです。1日の平均温度が5度の時は、温度変換日数は、約0.3日となっています。また、平均温度が15度以上の場合は、温度変換日数は、約3.3日となります。つまり3.3日分成長するということです。温度変換日数は、予想式で求めていますがこれは、1961〜1990年の開花日と気温のデータを利用しているとのことです。積算を開始する起算日は、観測点によってことなり、過去のデーターより、平均開花日の15日前から、最適な起算日が選ばれます。
 このように、起算日から温度変換日数を積算して、開花予想日が求められます。気温が急激に高くなると、花芽は何日分も成長することになり開花が早まるということになります。

 ※現在、気象庁では開花予想を行っていません。上記の予想方法はかつて行われていた方法のひとつで現在この方法が使用されているかどうかは不明です。
(都市部のサクラとヒートアイランド現象)
◎ヒートアイランド現象とは・・・
@ビルのコンクリート、舗装のアスフェルトなど、いったん暖められてしまうと、熱が拡散しにくい材料に都市が覆われている。
A冷暖房など人工熱が多く放出されている。
B多くの汚染物質による温室効果等
 ヒートアイランド現象とは、以上のような原因から、都市部の気温が上昇し、温度分布を図に描くと「熱の島」に見える気象現象のことです。
 今、このヒートアイランド現象が様々な面で、都市生活に支障をきたしつつあります。
 全国の至る所に、植栽されているソメイヨシノは、桜前線の指標木にもなっていますが、いいかえれば、このソメイヨシノこそ、最大の生物気象観測レーダーといえます。平成16年3月、サクラ前線の北上を待たずに、大阪の都市部でサクラが開花しました。また、関東地方においても同様の現象が確認されています。私が住む西宮でも平成14年は3月20日に夙川公園の一部で開花が始まりました。このようにして、昨今、サクラの開花に異常がでてきているのです。ヒートアイランド現象、そして地球温暖化現象などによって、サクラも近い将来、4月に開花することがなくなるのではと心配している今日この頃です。
 私たちは、サクラという身近な植物を通じて、環境問題に真剣に向き合わなければならない時期に来ているのではないかと思います。
※ちなみに観測史上、一番開花が遅れたのは、昭和59(1984)年で平均開花日は、4月15日という記録があります。
(狂い咲きのプロセス)
 サクラの花芽は、7月頃、そのもとが作られます。花芽をつくることを「花芽分化」といいます。サクラの狂い咲き(ボケ)現象とは、花芽分化以降、なんらかの原因で、葉がなくなってしまい、しばしば、秋の夜間の低温に、休眠打破がおこり、日中の小春日和の日に、春と間違って開花してしまう現象です。葉がなくなってしまうと、通常、葉から出ている開花抑制物質がなくなり、開花を制限するものがなくなります。サクラは、条件さえ整えば、開花を始めてしまうのです。
 新聞をにぎわす、狂い咲きは、夏場の異常乾燥による急激な落葉作用(自身の樹体を守るための生理現象)、極端な虫害によるもの、まれに台風の塩害などで、9〜10月頃、葉がまったくなくなってしまったことが原因と考えられます。
(積算温度算定法による開花日のデータと考え方)
 ※問い合わせが多い内容でしたのでデータを追加いたしました。兵庫県西宮市夙川公園の例
(夙川公園、過去の開花日)
 私の記録によるもので、公的機関によって発表される開花日とは若干異なります(夙川公園の浜夙川橋周辺と苦楽園口橋周辺の標準的立地に成育する、6本のソメイヨシノを対象とし、平均標準木は設けておりません)
開花年 開花日 開花日までの積算温度
(最高気温の累積)
2月1日から 3月1日から
1992年(平成4年)  3月31日 - -
1993年(平成5年)  4月2日 - -
1994年(平成6年)  4月1日 - -
1995年(平成7年)  4月1日 - -
1996年(平成8年)  4月2日 - -
1997年(平成9年)  3月26日 603.9℃ 351.0℃
1998年(平成10年)  3月27日 703.2℃ 366.9℃
1999年(平成11年)  3月27日 630.7℃ 375.7℃
2000年(平成12年)  3月31日 590.0℃ 369.2℃
2001年(平成13年)  3月26日 604.1℃ 341.7℃
2002年(平成14年)  3月20日(過去最速の開花) 563.2℃ 283.3℃
2003年(平成15年)  3月30日 604.2℃ 335.7℃
2004年(平成16年)  3月27日 661.8℃ 339.0℃
2005年(平成17年)  4月4日 681.6℃ 438.3℃
2006年(平成18年)  3月28日 605.0℃ 336.0℃
2007年(平成19年)  3月29日 697.9℃ 381.7℃
 学術的な参考資料とする場合、標準木からの定点観測データーからとなりますので、気象庁の神戸市での観測データを参考にされるとよいと思います。
(開花までの積算温度について) ※西宮市六湛寺町におけるデータ
  ソメイヨシノは、一律に積算温度が一定に達したからといって開花するわけではありません。
 例えば過去最速の開花年であった2002年の積算温度をみると累積温度は前後10年間からの最低値にもかかわらず開花しました。
 また、積算温度の最高値である1998年は、3月27日の開花となっています。では、開花促進の原因について次のデータから説明します。
2002年 1998年 2000年 2005年
最速開花 累積(高い 累積(低い 近年参考
1月平均気温 6.64 6.33 6.69 5.64
2月平均気温 6.71 8.39 4.45 5.71
3月平均気温 11.00 10.80 8.31 8.71
3ヶ月間の平均気温 8.16 8.51 6.53 6.72
夙川・開花日 3月20日 3月27日 3月31日 4月4日
早期の開花となった2002年は、2月の気温が低く、休眠打破から花芽の成長がスムーズにすすみ、3月の気温上昇から早期の開花に至ったものと考えられます。一方、積算温度の高い年(1988年)の開花が何故、早期開花に至らなかったのこという点ですが、2月の気温が高く、休眠打破がおこりにくい環境にあったと考えられます。積算温度の低い年(2000年)は、1月から3月までの気温が低いことが考えられます。
○要点整理 (西宮南部市域)
A・・・2月の平均気温が6度以下でかつ2月下旬から3月の気温が高く順調に推移した場合で積算温度560度以上 → 早期開花
B・・・2月の気温が高く(暖冬)、その後の温度の累積650〜680度以上となった段階 → 3月の場合は早期開花・4月の場合は通常の開花
※Bは、結果として積算温度の高い年ということがいえますが、積算温度(累積気温)が高いだけで開花しないことがわかります。

その他、気温だけでは推し量れない要因に、3月中の寒のもどりのタイミングなどによって、花芽形成の生育が左右されることがあります。
先にも記述しております、かつて気象庁で行われていた起算日から加算し、補正を加え、計算していくという方法が一番正確なような気がします。
民間の気象予報会社が行う開花予想の方法は様々ではっきりした方法については、未公開のためわかりません。