生活情報先進市=保谷をつくるための
HHIP(保谷こころのインターネットプロジェクト)



企 画 書
2000.3


特定非営利活動法人
西東京NPO推進センター〔セプロス〕

〒202‐0012
東京都西東京市東町2−16−24東荘101NPOセンター内






――目次――


はじめに
T.HHIP計画の背景

@ 時代の転換
1. 地方分権時代の到来
2. 成熟社会への変化

A 情報化社会
1. 情報化社会とは
2. 保谷市の現状

U.HHIP計画の実行

@ HHIPとは

1. HHIP
2. NPO法人セプロスとは

A HHIPの展開

1. HHIPの特徴
2. HHIPの展開



はじめに

2005年4月1日
「おはようございます。」のスクリーンからの呼びかけに、「おはようございます、お変わりないですか」と元気に応えかえす。
保谷市中町に1人でお住まいの青木さん(72歳)の一日はこうして始まります。
ひとり暮らしの青木さんが毎朝挨拶を交わすのは、HHIPに参加して知り合った20〜75歳の受講生たち。今日は3人の仲間と世間話をしてから朝食です。
朝食の素材は、すべてホームページで見つけて契約している産地直送の新鮮なものばかりです。(夕食は保谷市内のNPO個別宅配業者と契約。)
食事を終えて30〜40分すると、週2回の遠隔診療が始まります。お馴染の担当医佐藤先生と映像を見ながら血液データを調べたり問診をしながら健康状態をチェックします。
午後は、ふれあいセンターに出かけてハートタイム活動を行ないます。
HHIPの新受講生にキーボード操作を1時間教え、その後1時間は市役所に行って中町の新しいデータ入力作業のお手伝いです。
夜は、テレビでプロ野球を見たあとにアメリカに住む娘家族とEメールで近況を報告しあいます。
ついでに、ホームページでホワイトハウスを閲覧して世界の状況をチェック、続けて保谷市のページを開いてまちの情報を仕入れます。そのあとは、電子図書館で新着図書を予約したり、ネット仲間と情報交換や世間話をして楽しんだりします。青木さんの生活は、HHIPに参加してから一変しました。自分には無縁だと思っていたパソコンやインターネットにふれることによって、年齢を問わず多くの仲間ができたし、地域活動にも積極的に関わるようになりました。
そして、しみじみ思いました。独りぐらしだが孤独ではない、と。

2005年4月1日は、HHIPの関係者(市民/行政)には特別の日となりました。
「情報先進市・保谷のHHIP方式の成功を祝う会」が全国の地方自治体の担当者のみならず 国の関係省庁からも多数参加して開催され、そのニュースは各メディアを通じて広く全国に報道されました。
保谷方式=HHIPは、21世紀の情報化社会の理想的なまちづくり/コミュニティのモデルとして。また、地方分権社会での市民とNPOと行政とのあるべき協働関係を構築した自治体として。



T.HHIP計画の背景 
@ 時代の転換
1地方分権時代の到来
 戦後50年、日本の近代化・高度経済成長に大きく貢献した霞ヶ関を頂点とする中央集権型システムは、 国際的・国内的にも多発する事態や課題に迅速に対応できずにその役割を終えたことをはっきりと露呈しています。そして、
高齢社会/老人介護、少子化対策やゴミ問題への対応、また個性豊かな地域社会の形成には地域の諸条件に合った 地方分権型システムが適合するのは時代の流れです。
 1999年7月8日に成立し、7月16日の公布された地方分権推進一括法は、
2000年4月1日より施行されました。一方で機関委任事務の廃止、他方で税制の不完全など、それに対してはさまざまな 意見もありますが、地方分権を推進するためには地方自治体の責任と充実を柱にしていることは間違いありません。
しかしながら、自分たちの地域に合った施策を市町村が自主的にきめるということの最大のポイントは、各自治体の 長・議員・職員・市民の政策企画力や実行力といった自治能力が問われることです。これが、自治体格差が生まれる所以です。
地方分権時代にふさわしい魅力あるまちづくりは、市民主体の新しいしくみをどのように構築するかのビジョンが必要となります。

2成熟社会への変化
 1995年1月17日に発生した「阪神淡路大地震」は、その被害の大きさのみならず戦後日本の政治経済社会の 構造転換を象徴する出来事でした 
テレビに映し出された高速道路・ビル・家屋の倒壊と炎上は、敗戦から50年戦後日本が経済至上主義体制で築いてきたものが 一瞬にして崩壊した現実で した。しかし一方で、震災直後から復興を助
けようと全国各地から日本では初めてと言われるほど 多数のボランティアが駆け付けました。
このことは、私たちに<ものの豊かさから、心の豊かさ>へと、豊かさの質が変わり始めたことを語りかけました。
あれから5年、震災復興は未だ道なかばとニュースは伝えていますが、その中で私たちを逆に勇気づけてくれるのが新生神戸の まちづくり情報です。初期活動の中心となったボランティアが去った後で、地元市民が中心になりその活動を引継ぎながら 多種多様なNPOを発足させてまちづくりに積極的にしかも主体的に取組んでいること。同様に、壊滅状態のまちの再生運動は、国の再建計画よりも地域優先の住民相互で話合いながら計画を立てて進めている市民主体のまちづくりです。
このことは、<共同体から共有体に選び直す>という地域社会/コミュニティの質が変わり始めているといえるかもしれません。
豊かさの質が変わり、まちづくりに変化が起きているような事態は、期せずして日本全国のいたるところで起きておりますし(例えばNPOの出現)、私たちのまち保谷にも同様な動きが起きていることは確かです。

A 高度情報化社会
1高度情報化社会とは
 現在の株式市場が情報関連企業を中心に動き、それらの動向が世界の経済や政治に大きな影響をあたえているように、現在は情報産業社会であることはいうまでもありません。また、私たちの生活もテレビに代表される情報の飛躍的な発達で、阪神・淡路大震災のような国内の事件だけでなく世界中の出来事を知ることが可能になったり、雑誌や新聞でお得なショッピング情報も入手できるなど、情報を中心に営まれているといえます。しかし、現在その情報分野においても従来の情報のイメージや質を一変するのみならず、社会構造を変革してしまう大転換期が訪れております。それが、インターネットを中心とする高度情報化社会です。
インターネットは、自動車やテレビの出現が世界の産業構造を変え、それらは現代人の生活になくてはならぬものになったと同様のあるいはそれ以上の影響をあたえるといわれています。インターネットは、テレビやラジオなどの一方通行の情報(私たちはつねに傍受する客体です。)とは異なり双方向ネットワークによって情報の交流化を可能にしました。(私たちも情報を発信する主体になれる。)その画期的なシステムは、世界中の情報が瞬時に国境を簡単に越えて受信/発信できること、情報を蓄積できたり検索できたりして利用しやすいこと、文字・画像・音声などの情報を取り扱えるなど他のメディアにはない特徴を持ち、それ意外にも多くの可能性が有るといわれています。
あらゆる者が平等に情報の入手・処理・発信を行なうことが可能となる21世紀の高度情報化社会とは、国家の体制に変革を促し社会のしくみを変え私たちの、生活やくらしに大きな影響をあたえるのはまちがいありません。

2.保谷市の現状
2000年3月発刊した「保谷市 都市計画マスタープラン」のまちづくり
基本理念6項目
・誰もが安全で、安心して暮せる
・まちに、ゆとりとうるおいがある
・いきいきと交流できる
・まちに、活気があふれている
・まちが知的で、個性的である
・市民がまちづくりの主役になれる
将来都市像7項目
・安全で、安心して暮せるまち
・高齢者・障害者が安心してでかけられるまち
・若いひとが住み続けるまち
・身近に緑とふれあえ、健康にくらせるまち
・人々がふれあい、交流しているまち
・産業がいきいきしているまち
・ 知的で、個性的なまち

以上をふまえ、まちづくりの目標を「豊かな緑と共生できるまち 保谷」としています。私たちは20世紀を終えて21世紀という新しい時代・世紀を生きようとしているはずです。しかし、これではあまりにも時代認識・将来の展望が欠けているのではないでしょうか??
たとえば保谷を田無に変えても、あるいは東久留米に置き換えても、もっといえば日本全国どこの町名と書き変えても通用する(?)特徴のないスローガンと内容ではないでしょうか。
個人の発信する情報が国境を簡単に越えて世界中に送られるという事実の衝撃さは、国家の政治や経済のシステムを根底から変えようとしています。現在、世界中を巻きこんで起こっている金融機関に代表される大企業の合併や合従連衡は、高度情報化社会というまったく新しい時代に生き残るための防衛対策/企業戦略です。そして、この影響は間違いなく私たちの生活上にも訪れて生活システムを変えようとしているのです
21世紀に「保谷らしい、個性豊かなまちづくりを進める必要がある」と考えるならば、情報と高度情報化社会を機軸にした対策が早急に必要だと思います。


U.HHIP計画の実行 
@ HHIP
1.HHIPとは
 HHIP(保谷こころのインターネットプロジェクト)は、21世紀の高度情報化社会に、保谷でくらす市民のためのまちを市民によって「情報」を基軸に描いた生活情報先進市=保谷をつくるためのビジョンであり、
保谷高範市長が『21世紀の訪れを目の前にして、本市を取り巻く社会経済環境は、右肩上がりの経済成長が終わり、少子・高齢化の進展、地方分権の推進、価値観やライフスタイルの多様化などの変化が急速に進んでいます。
これらに適切に対応していくためには、将来に向けて、安全に安心して暮らせる、ゆとりとうるおいが感じられる、個性豊かな魅力あるまちづくりを推進していくことが求められています。』と語っていることを計画・実行するものです。
HHIPは、従来のような押し付けがちになりやすい官主導型や利益優先主義の企業型とはまったく異なった、市民+NPO+行政の協働による21世紀のまちづくりにふさわしいプロジェクトです。HHIPが描く情報化社会とは、高度情報化の著しい進展によって生じてきた新しい問題=情報格差を解消して、くらしを基軸にヒトと情報が交流する社会であり、市民一人ひとりが情報の受け手/客体だけではなく情報を主体的に選択、発信できる情報活用能力を身につけて、保谷でのくらしを豊かにするための文化/ 地域社会であり、世間話からホームページまでを共有するソフト優先の市民参画型のコミュニティであります。
「情報」が 機能/手段としてではなく、「情報」そのものが生きる歓びであるような社会です。
「豊かな緑のまちで共生」ことが幸せであるとするならば、豊かな情報のまちで生きることを歓びとするような社会です。

2.NPO法人セプロスとは
NPO(民間非営利組織)とは、日本が成熟社会に変わり、社会的にさまざまな問題が多発したり市民の意識が向上してニーズが多様になると、すべての人に、広く・公平に・公正に、の行政の大原則では当然対応できません。そこで、市民のニーズをキャッチして多種多様な課題を迅速に解決しようとするものであり、行政と共にしかも行政がしにくい公共的な課題にも積極的に関わり責任を持って活動しょうとするものです。

保谷NPO推進センター{セプロス}は、「幅広く地域や分野を超えたNPO
(民間非営利組織)活動の支援と基盤の強化を図り、新しい市民社会の形成に向けた、市民の自発的な事業の推進や市民・企業・行政とのパートナーシップの構築を促進する」目的のために設立され、2000年4月28日に東京都から法人格を認証されました。その活動の種類は、
1) 市民活動を行なう団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は活動の援助
2) 市民のための文化、芸術、又はスポーツの振興を図る活動
3) まちづくりの推進を図る活動
であり、今日まで保谷市の市民や市民団体と活発に交流を重ねてきました。
今回セプロスが企画したHHIPは、NPOのもっとも本質的な活動のひとつである行政とのパートナーシップによるコラボレーション(協働関係)であり、
21世紀の豊かな保谷のまちづくりにふさわしいものと考えたからです。

A HHIPの展望
1HHIPの特徴
(1) 情報弱者の解消
 保谷のまちに高度情報化社会の情報弱者が生まれないように、市民一人ひとりが必要な情報を入手・選択・発信できる情報活用能力を身に付けるような講座を行ないます。
受講対象者は、保谷市内の次世代を担う小学生からまちの文化や生活を伝える高齢者・障害者までの老若男女とし、講座内容は、まったくの初心者クラスから上級者クラスまでレベル別に開設します。

(2)NPOによる運営
 21世紀の地方分権社会/地方自治体のモデルにふさわしい運営組織です。
情報化(社会)への市民の多様なニーズを市民レベルで的確にキャッチして、市民が参加しやすい講座の企画・立案・講師派遣・運営までをNPO{セプロス}が担い、行政は会場の提供や費用の一部負担など支援活動を行ないます

(3) ハートタイム制度
 HHIPは、情報を媒介としたこころのまちづくり運動でもあります。
HHIP講座に参加した受講者全ては、受講時間分をハートタイム(こころの時間)で無料ボランティアとして公共的な仕事をすることを義務とします。

(4) ふれあいセンターの開設
 HHIPの会場は、空いている公共施設や学校を利用してムダな経費をかけません。センター機能の事務局は市役所か新設NPOセンターに(?)
会場は強いて「ふれあいセンター」と名づけます。
キーボードにふれる。マウスにふれる。こころにふれる。人々にふれる。地域にふれる。そしてくらしにふれる。

(5) アウト・ソーシング
 HHIPは、行政の経費や労働負担を極力減らして投資効果を高めます。
HHIPを円滑に運営するには、少なくとも4人の専任スタッフが必要です。
行政主導で行なえば、4名×500万円=2,000万円(1年間)かかりますが、
{セプロス}の場合は、その1名分で充分に運営ができます。
21世紀の自治体に求められている、民間型経営方式が実現できるのです。
(しかも、NPO{セプロス}は営利追求の企業ではありません。)

 *1名分の費用は職員の平均年収で計算。
2HHIPの展開
(1) 市民情報の構築と公開
 HHIPの講座受講者は、居住地域のふれあいセンターで、市民のくらしに欠かせない生活情報や行政情報のデータを入力したり、ホームページで各地域の講座受講者たちと情報収集・交換をして、それらを公開します。

(2) 情報化を担う人材の育成
 保谷市内の次世代を担う小学生からまちの文化や生活を伝える高齢者・障害者までのHHIP講座受講者は、受講生として学習した情報を主体的に活用できる情報発信能力を、次年度はハートタイムを有効利用して講師として新受講生にそれを教育します。HHIP講座は、継続的に幅広く、しかし急がず市民一人ひとりが高度情報化社会に対応できるようにいたします。
 
(3) 生活情報先進市=保谷のまちづくり
 21世紀の高度情報化社会と同時に私たちは高齢化社会を向かえます。
情報をもっとも必要とする人々がその要求を満たされない社会。そのような
国やまちで私たちはくらすのでしょうか??
 高度情報化社会とは、情報格差が生活格差を生み、それが自治体格差になり、私たちのくらしに影響を与える社会です。
生活情報先進市=保谷のまちづくりを{セプロス}が提案する所以です。

(4)HHIP講座の開始