第7缶 缶収集で失敗



 今から5年程前のことです。職場で伊勢方面へ旅行に行きました。夕方、松坂駅につき、その日はワシントンホテルに泊まる予定になっていました。電車を降り、幹事をしていた私は、ホテルの宿泊クーポンをすぐに取り出せるようにとポケットに入れていました。
 ホームの階段を下り、改札口に近づいたその時、見慣れない自販機が目に入りました。JR東日本の自販機です。当時、お茶缶を集め始めたばかりの私にとって、めったにないチャンスでした。しかし今は団体旅行中。しかも、まだ下っ端で先輩方に待ってもらう勇気もなく、あきらめようかと思いましたが、やっぱりあきらめきれず、大急ぎでお茶を買うことにしました。今でこそ、職場全体に私のお茶缶収集は知れ渡ってしまっていますが、当時はまだ誰にも告げていない時代でした。
 ポケットから財布を取り出し、急いで小銭を出し、お茶を買い何食わぬ顔でみんなと合流しました。松坂ワシントンホテルは駅の目の前にあり、すぐ、チェックインの手続きをしにカウンターへ。ところが・・・。ない。ポケットにあるはずのクーポン券がない。財布の中にもかばんの中にもない。「しょうがないから、みんなでもう一度お金を出して泊まろうか?」という先輩たちの声を聞きながら、ただ呆然と立ち尽くしてしまいました。その時はっとあることに気が付きました。そういえば駅でお茶を買ったときポケットから財布を出したぞ、もしかしたら・・・。一縷の望みにかけて駅に連絡をしたところ、落し物として届いているとのこと。心優しい人が拾って駅員さんに届けてくれたのでした。この事件をきっかけに私のお茶缶収集がみんなに知れ渡ったのでした。その夜、松坂牛のステーキがおいしかったことは言うまでもありません。(9月30日)


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