「靖臣ー。起きてるー?」 「うわ、何いきなり部屋に入ってきてんだよっ」 「桜橋先輩が開けてくれたんだから別にいいじゃない…って、何でまだハンモックの 中にいるのよあんたは」 「寝てたからに決まっているだろうが」 「起きなさいよ、もう朝よ?」 「すずねえが来てるって?」 「今おせち料理作ってるみたいよ」 「って、今日ってもう1日だろ?今からかよ!」 「いいじゃないの別に。それに作っているっていったって、料理を盛り付けているだ けなんだし」 「…それ「作っている」って言わないだろ…」 「細かい男ねえ」 「別にいいけどな」 「とにかく起きなさいよ」 「面倒臭い。正月ぐらい寝かせろよ」 「駄目よそんなの。折角あたしが来てやってんだから起きなさい」 「誰が来ようと起きねえよ。というか知り合いである以上尚更だ」 「ねえ起きなさいよー。あたしが正月に起こしに来るなんて、今後二度とないかもし れないのよ?」 「……あ、そう言われてみればそうだな。神社の方は平気なのか?」 「平気なわけないじゃない」 「ならどうしてこんなところに来てんだよ」 「靖臣と一緒に初詣に行きたいからに決まっているじゃない」 「俺はいいよ初詣。パス」 「駄目、行くの!」 「いいって」 「行きましょうよー!」 「俺はいいから、カナ坊とか忠介と行って来いよ」 「あたしは靖臣と行きたいのよ!」 「俺は誰とも行こうと思わん」 「そんなこと言わないで行きましょうよー!」 「そこまで俺に拘る理由でもあるのか?」 「…そんなもの、あるに決まってるじゃないの…」 「理由次第で行ってやろうじゃないか」 「言えないわよ…」 「じゃあ寝る」 「駄目ー!行くのー!」 「…理由を話せ」 「……あんたも強情ねえ」 「お前に言われたくないな」 「…じゃあ、後で話すから。それでいいでしょ?」 「……分かったよ」 「しかし、どうして自分のところに行かないでこんな遠くで初詣なんかするんだよ」 「自分のところなんか言ったら速攻家のことしなきゃならなくなるに決まっている じゃないの」 「なるほどな」 「ということで靖臣、今年もよろしくね」 「ああ、よろしくな初子。んで理由って何だったんだ?」 「それはね…これ」 「…おみくじ?」 「それ読めば分かるわよ」 「…なになに『一年ノ最初ニ想イ人ト結バレレバ子宝ニ恵マレル』…て」 「というわけで靖臣、さあ行くわよ、我が神社の跡取りのために!」 「ちょ、ちょっと待て!そんな無茶な話があるかっ!」 「こんな理由でもないとこの猫の手も借りたい時にあたしを手放すわけないでしょ! いいから早く済ませるわよ!あたしが確信するまで徹底的にやるからね!」 「すずねえ、俺10月に父親になるみたいだ…」 「コロヌ」
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