「暑い」 「……いちいち言わないでよ靖臣。再確認しているみたいで嫌だわ」 「あつは夏いんじゃないカナ」 「カナも壊れちゃってるし」 「わわっっ、壊れてないよ壊れてないよっ、ギャグじゃないカナギャグじゃないカナ !」 「確かにここまで連呼を繰り返されると、壊れているとしか思えんな」 「靖臣くんまで、ヒドイヒドイー」 「なら二回言うな」 「止めてよもう、ただでさえ暑いのに気分めげたら最悪よ」 「まったくだ、こう暑いと何もしたいと思えん」 「靖臣、そんなに暑いのなら部活に行けばいいんじゃないか?」 「そうよ、あんたは水泳部があるじゃない。行ってきなさいよ」 「俺は部員じゃねえ」 「ここにいるよりは涼しくなれるんじゃないカナ。いいないいな、プール気持ち良さ そう」 「……確かに水に入ればその場は気持ちいいが、後が余計に辛くなるんだ」 「でも帰る時には少しは過ごしやすくなっているんじゃないかな?それに目の保養に もなるだろう?」 「後輩と電波とつるペたで目の保養になるか」 「そうよね。あたしぐらいの胸がないと目の保養にはならないわね」 「ううっ、世の中不公平じゃないカナ……」 「初子の場合、目の保養というよりプロペラントタンクって感じがするな」 「プールの藻屑となってしまえっっ!」 「そんなわけでやってきたぞ」 「オミ先輩!いらっしゃい!」 「……新沢ちゃん、うえるかむー」「きゅきゅー」 「………………………」 「ううっ……」 「ど、どうしたんですかオミ先輩!いきなり泣き出すなんて……」 「いや、まさか部員全員からこんなに歓迎されるとは夢にも思わなくてなあ、俺は嬉 しいんだ」 「あたしは歓迎なんかしてないわよ」 「まさか晴ぴーがこんなに歓迎してくれるとは」 「してないわよ!……大体「こんなに歓迎」って何よ。あたし何もしてないでしょ」 「水着姿で」 「全員水着だっ!」 「しかもつるぺたなのに無理しちゃって」 「絶対殺す!」 [待て。ひとつだけ聞いておいてくれ] 「……何よ」 「走り回ってのオチだけは止めろ。正直この暑さでは身体が保たん」 「あんたが逃げなければ済む話でしょ」 「何を言っている。それでは俺が危険じゃないか」 「それが嫌なら余計なことは言わないことね、そしてとっとと帰りなさいよ」 「それは出来ん」 「どうしてよ」 「涼めないじゃないか」 「涼むために部活に来るなっっ!」 「だって……鞠音や野々宮みたいにそれとわかる胸ならともかく、つるぺたを見ても 目の保養にはならないじゃ」 「おねえちゃんぱんっっっっっっっっっっちっっっっっっっっ!!」 「ぐはあああああっっ!な、なんですずねえが………」 「オミくんっっっっっっ!お姉ちゃんは女の子が一番気にしていることを堂々と口に するなんて失礼なことをするような子に育てた覚えはないぞっっ!ちゃんと佐久間さ んに謝りなさい!胸の小さい女の子は、人が思っている以上に気にしているものなん だぞっっ!早く謝りなさいっっ!」 「……さ、桜橋先輩……さりげなくものすごーく突き刺さっているんですけど…… で、どうして水着姿なんですかっ」 「あはは「少し泳ぎたいけどいい?」ってボクが頼まれまして…あのー、すず先輩。 オミ先輩どんどん沈んでいってるんですけど!」 結局溺れてしまった俺は、水に浸かっていたというのに涼しむことが出来なかった。 それどころか目が覚めると同時にすずねえに抱きつかれて、余計に暑くなってしまっ た。 だが、気持ちよかったから、いいか。それに 夏は暑くて当たり前だからな。 おしまい
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